物理 / 平面内の運動

崖の上から最も遠くへ投げる角

最難関編斜方投射最大値

問題

高さ の崖の上から、初速の大きさ でボールを投げる。崖の下は水平な地面である。 とする。

h = 14.7 m初速 9.8 m/sここまでの距離を最大にしたい
高さ 14.7 m の崖の上から投げる。

(1) 投射角を とし、地面に落ちるまでの時間を で表せ。

(2) 着地の速さは によらないことを、エネルギーの考え方で示せ。値も求めよ。

(3) 水平到達距離を最大にする角は で与えられる。値を求めよ。 とする。

(4) そのときの水平到達距離を求め、 で投げた場合()と比べよ。

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地面が投げた高さと同じなら が最適だった。低い場所に落ちるとき、時間を稼ぐのと水平の速さを稼ぐの、どちらが得か。

解答・解説

方針

落下点が投げた高さより低いので、 の対称性が崩れる。滞空時間は 次方程式の正の解になる。着地の速さは力学的エネルギー保存から、向きによらず決まる。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 水平な地面で が最適なのは、投げた高さと落下点の高さが同じだからである。この対称性が崖では崩れる。

崖の上からは、そもそも落ちるまでに時間がある。だから上に投げて時間を稼ぐ必要が薄れ、水平の速さを大きくするほうが得になる。したがって最適角は より小さいはずである。

見通しが立ったところで、式で確かめていく。

① 滞空時間。 鉛直方向を上向きに正とすると、落下点は である。

についての 次方程式を解き、正の解をとる。

② 着地の速さ。 力学的エネルギー保存を使う。投げた瞬間と着地の瞬間で

がどこにも出てこない。どの向きに投げても、着地の速さは同じである(向きは違う)。

重要エネルギーは速さしか見ない。だから着地の速さは投げる向きによらない

③ 最適な角。 与えられた式に代入する。

のとき なので である。

予想どおり より小さい。

19.6 m26.6°(赤)のほうが遠い45°(灰)
最適な角と 45° の比較。低い角のほうが遠くまで届く。

④ 水平到達距離。 を ① に入れる。

一般式で書くと

より 遠い。差は約 である。

の式の は、② の着地の速さそのものである。つまり

という覚えやすい形になっている。

まとめ 落下点が低いと、対称性が崩れて最適角は より小さくなる。 とすれば 、つまり に戻る。

発展 — 一歩先へ。 砲丸投げの最適角が より小さい( 前後)のは、この崖の効果である。砲丸は肩の高さ(約 )から投げられ、地面に落ちるので、 の状況になっている。

さらに人間の身体の構造上、高い角では初速が出しにくい。 に依存するので、最適角はもっと小さくなる。実際の記録では 前後が多い。

理想化した物理の答え()、条件を足した答え()、現実の答え()と、モデルを精密にするたびに答えが動く。どのモデルで何を問われているのかを見極めることが、応用では欠かせない。

、着地の速さは で角によらない、()、 より 遠い

別解

着地の速さを先に決めてしまうルート。 ② で着地の速さが角によらないと分かったので、それを出発点にすると計算が軽くなる。

着地の速度の水平成分を 、鉛直成分を (下向きを正)とすると

いっぽう、水平成分は投げたときから変わらないので である。また鉛直方向は

水平到達距離は、水平方向が等速なので である。 は鉛直の速度変化から

代入すると

ここで である。 だけの関数になったので、 を動かして最大を探せばよい。

実際に を入れると ✓ である。

このルートの見どころは、 が一定という円の関係が現れることである。着地の速度ベクトルの先端は、半径 の円の上を動く。投射角を変えることは、この円上で点を動かすことにあたる。

「保存量が円を描く」という見方は、運動量の問題(重心系で速度の先端が円を描く)でも出てくる。円が出たら、接線や垂線で最大最小が読めることが多い。

ポイント

  • 落下点が低いと 45° の対称性が崩れる
  • 着地の速さはエネルギー保存で決まり、角によらない
  • 最適角は 45° より小さい(tanθ=0.5 → 26.6°)
  • R_max=v₀×(着地の速さ)/g

よくある間違い

  • 崖でも 45° が最適だと思い込む
  • 滞空時間の 2 次方程式で負の解を選ぶ
  • 着地の速さが角によって変わると考える