物理 / 平面内の運動
横向きの力がはたらく中での投射
問題
水平な地面の上で、強い風によってボールに水平方向の一定の加速度 (風下向き)が加わるとする。重力加速度は である。初速の大きさは とする。
(1) つの加速度を合成した「見かけの重力」の大きさと、鉛直からの傾きを求めよ。 とする。
(2) で風下に投げたときと、風上に投げたときの落下点を求めよ(地面は水平)。
(3) 風下への飛距離が最大になる投射角を求めよ。ヒント: 「見かけの上向き」と「地面の向き」を二等分する向きである。
(4) そのときの飛距離を求め、風がないときの最大射程と比べよ。
ヒントを見る
つの加速度をベクトルとして足すとどうなるか。それを新しい重力だと思うと、地面はどう見えるか。
解答・解説
方針
重力と風の加速度をベクトルとして合成すると、傾いた「見かけの重力」になる。すると問題は「傾いた重力のもとで、傾いた地面へ投げる」形になり、二等分の規則がそのまま使える。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 加速度が つあるように見えるが、ベクトルとして足せば つである。
これを「傾いた重力」だと思えば、あとはふつうの投射の問題である。
ただし地面は水平のままなので、見かけの重力から見ると地面は傾いた斜面になる。斜面への投射で使った「二等分の規則」がそのまま使える。
「新しい重力を作り、そこから見た地面の傾きを読む」という 段構えが要点である。
① 見かけの重力。
になっている。
鉛直からの傾きは
風下側へ 傾いている。
② で投げたとき。 鉛直方向は風の影響を受けないので、滞空時間はふつうどおりである。
水平方向は初速 に加速度 が加わる等加速度運動である。風下向きに投げると
風上向きに投げると、水平の初速が逆向きになる。
負なので、いったん風上へ飛んだあと押し戻され、投げた地点より 風下に落ちる。
③ 最大になる角。 見かけの上向きは、鉛直から風上側へ 傾いた向きである。水平から測ると
地面(風下向き)は である。この つを二等分する向きは
より高く投げるのがよい。風に長く押してもらうため、滞空時間を稼ぐほうが得だからである。 である。
④ 最大の飛距離。 で計算する。、 だから
風がないときの最大射程は だから、ちょうど 倍である。
斜面の公式でも確かめられる。見かけの重力から見ると地面は の下り斜面()なので
まとめ 一定の力が加わるなら、重力と合成して「傾いた重力」を作る。すると水平な地面が斜面に変わり、既知の結果がそのまま使える。
発展 — 一歩先へ。 「一様な力を重力に繰りこむ」という手は、荷電粒子の運動でも使う。一様な電場の中に置かれた粒子は、 と を合成した力を受けるので、傾いた重力のもとでの放物運動をする。
加速する電車の中の振り子が傾いた向きでつり合うのも、同じ見方である。慣性力と重力を合成した「見かけの重力」の向きに、振り子がぶら下がる。
ただし注意がある。この手が使えるのは力が一定のときだけである。空気抵抗のように速度によって変わる力は合成できない。実際の野球やゴルフでは抵抗と揚力が効くので、この計算どおりにはならない。「どこまで理想化してよいか」を意識しておくことが大切である。
で鉛直から 、風下へ ・風上は 戻って背後に落ちる、、 で風がないときの 倍
別解
成分ごとに計算して微分するルート。 二等分の規則を知らなくても、飛距離を の関数として書いて最大を探せる。
の式にまとまった。 と の 次結合なので、合成できる。
最大は 、すなわち
最大値は
この形は、斜面の問題で出た とまったく同じである。 が斜面の角の役割を果たしている。
計算だけを追っても答えは出るが、最後にこの一致に気づくと「見かけの重力で斜面に帰着していたのだ」と分かる。式が先に真実を教えてくれることもある。
ポイント
- 2 つの加速度をベクトルとして合成し、傾いた重力を作る
- 見かけの重力から見ると、水平な地面は斜面になる
- 最大の向きは「見かけの上向き」と「地面」の二等分
- 風下へは 40 m で、風がないときの 2 倍
よくある間違い
- 風があると滞空時間が変わると考える(鉛直方向は無関係)
- 45° が最大だと思い込む
- 速度に依存する空気抵抗にもこの方法を使おうとする