物理 / 平面内の運動
届く場所と届かない場所の境目
問題
原点から初速の大きさ で、鉛直面内のあらゆる向きにボールを投げられるとする。、空気抵抗は無視する。
投射角を とすると、軌道は
と書ける。
(1) を使い、上の式を についての 次方程式に整理せよ。
(2) 点 に届く投射角が存在する条件を、判別式から求めよ。
(3) (2) の等号が成り立つ点の集合(境界)は放物線になる。その式を求め、真上に投げたときの最高点と、水平な地面での最大射程が境界上にあることを確かめよ。
(4) 点 と点 は、それぞれ届くか届かないか。
ヒントを見る
求めたいのは そのものではなく「そんな があるかどうか」である。何についての方程式とみると扱いやすいか。
解答・解説
方針
「届く角があるか」を「 の 次方程式が実数解をもつか」に翻訳する。判別式が 以上という条件が、そのまま届く範囲を表す。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「どこまで届くか」を角度ごとに調べていくと、無限に多くの放物線を相手にすることになる。
発想を変える。点 を先に決めて、「そこを通る が存在するか」を問う。すると軌道の式は、 についての方程式になる。
しかも を使えば、 の 次方程式になる。存在の判定は判別式でできる。
「解を求める」のではなく「解の存在条件を書く」ことが、この問題の急所である。
① 次方程式に整理する。 とおく。
移項して整理する。
② 存在条件。 の実数解があればよい。判別式を計算する。
なので、 は角カッコの中が 以上ということである。両辺に を掛けて整理する。
③ 境界の放物線。 等号のときを について解く。
上に凸の放物線である。値を入れる。
頂点は で、これは真上に投げたときの最高点 に一致する。
とおくと 、 で、これは で投げたときの最大射程 に一致する。
④ 点の判定。 境界の式に を入れると
は なので届く。 は なので届かない。
まとめ 「存在するか」を問われたら、方程式の解の存在条件に翻訳する。判別式が領域の境界を描き出す。
発展 — 一歩先へ。 ③ の放物線を安全放物線という。砲弾の届かない安全な場所を示す、という物騒な由来である。
境界の内側の点には、判別式が正なので つの角で届く。高く投げるルートと低く投げるルートである。境界の上の点にはちょうど つの角でしか届かない(重解)。外側の点には届かない。
この境界は、すべての軌道の包絡線でもある。無限に多くの放物線が、 本の放物線に外側から接している。
同じ発想は数学の「通過領域」の問題でそのまま使える。パラメータを含む曲線の族が覆う範囲を求めるとき、「そのパラメータが存在する条件」を書けばよい。物理の問題が、実は数学の定番の問題と同じ構造をしている。
、条件は 、境界は (頂点 ・ 切片 )、 は届き は届かない
別解
エネルギーの制約から出すルート。 判別式を使わずに、エネルギー保存と水平方向の速度から同じ境界が出せる。
点 を通過する瞬間の速さを とすると、エネルギー保存から
いっぽう、水平方向の速度 は一定である。 に到達する時間を とすると で、鉛直方向は
ここから先も計算になるので、もう少し賢い評価をする。
到達点までの時間 が決まると、水平距離 である。この を大きくするには水平寄りに投げたいが、そうすると高さが稼げない。
実は「 を最大にする」問題は、 を固定したうえでの最適化になる。上の 式から を消去すると、結局 ② と同じ不等式に行き着く。
より見通しがよいのは、時間 をパラメータにとる方法である。、、 から を消すと
これを の 次方程式とみて、正の解をもつ条件を考えても同じ境界が出る。
どの変数で「存在条件」を書くかは自由である。 が最も計算が軽いが、 を選ぶと「いつ届くか」まで見えるという利点がある。
ポイント
- 「届く角があるか」を tanθ の 2 次方程式の解の存在に翻訳する
- 1/cos²θ=1+tan²θ が翻訳の鍵
- 判別式 = 0 が境界(安全放物線)
- 境界の頂点は真上に投げた最高点、x 切片は最大射程
よくある間違い
- 角度を 1 つずつ調べようとして無限の場合分けに入る
- 判別式を θ ではなく x について書いてしまう
- 境界の内側の点に届く角が 1 つだと考える(2 つある)