物理 / 平面内の運動
走るトラックの荷台から真上に投げる
問題
まっすぐな水平の道を、トラックが一定の速さ で走っている。荷台に立った人が、ボールを 荷台から見て真上 に速さ で投げ上げた。空気の抵抗は無視し、重力加速度の大きさを とする。
(1) ボールが投げた高さに戻るまでの時間と、上がった高さを求めよ。
(2) 地上に立って見ている人には、ボールはどんな速さ・どんな向きに投げ出されたように見えるか。また、そのあいだにボールは水平にどれだけ進むか。
(3) ボールは投げた人の手に戻るか。理由とともに答えよ。
(4) 同じことを、トラックが一定の加速度 で加速しながら走っているときに行った。ボールは投げた人からどれだけ離れた場所に落ちるか。また、手に戻すには荷台から見てどの向きに投げればよいか。
ヒントを見る
ボールに水平方向の力ははたらいているか。トラックとボールの水平の速さを、それぞれ時間の関数として書いて比べてみる。
解答・解説
方針
水平方向にはボールに力がはたらかない。等速で走るトラックの上では、ボールもトラックも同じ水平速度を保つので、真上に上がって手に戻る。地上から見ると、水平成分がトラックの速さになった斜方投射である。加速するときは、トラックだけが速さを増すので差がつく。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 この問題の核心は1つだけである。ボールが手を離れたあと、水平方向には何の力もはたらかない。
だから、ボールの水平の速さは投げた瞬間の値のまま変わらない。等速で走るトラックの水平の速さも変わらない。同じ速さのまま並んで進む ので、ボールは真上に上がって手に戻る。
地上から見ると、ボールは水平にも動いているから放物線を描く。同じ運動が、見る立場によって「まっすぐ上下」にも「放物線」にも見える。どちらも正しい。
加速するトラックでは、この一致が崩れる。トラックだけが速くなる ので、その差が着地点のずれになる。
① 荷台から見た運動。 鉛直方向は、どちらの立場でも同じ運動である。
② 地上から見た運動。 ボールは、手を離れる瞬間にトラックと同じ水平の速さをもっている。したがって地上から見た初速は、水平 、鉛直 の合成である。
になっている。向きは
水平に進む距離は、水平の速さが変わらないので
③ 手に戻るか。 戻る。同じ のあいだに、トラックも 進む。ボールとトラックの水平の進みが等しい から、ボールは常に手の真上にあり、そのまま手に落ちてくる。
地上から見れば放物線、荷台から見れば上下の直線。同じ運動の2つの見え方である。
④ 加速しているとき。 ボールには相変わらず水平方向の力がないので、水平の速さは のままである。 の進みは
トラックのほうは加速する。
差は
ボールは手より 後ろ に落ちる。
手に戻すには、その差ぶんだけ前へ余分な速度を与えればよい。滞空時間 のあいだに を稼ぐには
鉛直成分は のままだから、傾けるべき角は
進行方向へ約 傾けて投げればよい。
まとめ 立場を乗り換えても運動そのものは変わらない。変わるのは見え方だけ である。等速で動く立場では見え方が単純になり、加速する立場ではずれが生まれる。どちらで考えてもよいが、力がはたらいていない向きを探す ことがいつでも出発点になる。
発展 — 一歩先へ。 ④で出た という角は、加速する乗り物の中でつるした糸のおもりが傾く角と同じである。加速する立場に乗ると、重力と慣性力を合わせた「見かけの重力」が、鉛直から だけ後ろへ傾く。
つまり答えは「見かけの鉛直の向きに投げればよい」と言いかえられる。加速する乗り物の中では、その向きが「真上」の役をする。地上から追いかけても、乗って考えても、同じ角にたどり着く。
(1) 、 (2) 速さ 、水平とのなす角は (約 )。水平に 進む (3) 戻る。水平方向に力がはたらかず、ボールもトラックも同じ で進み続けるから (4) 手より 後ろ。進行方向へ (約 )傾けて投げればよい
別解
トラックに乗った立場だけで通すルート。 ④を、地上から見ずに荷台の上で考えることもできる。
加速するトラックに乗った人から見ると、ボールには重力のほかに 後ろ向きの慣性力 がはたらいて見える。ボールの加速度は、下向きに 、後ろ向きに である。
真上に投げた場合、後ろ向きの加速度 だけが水平方向に効く。 で
だけ後ろへずれる。地上から見て計算した差と、同じ である。
手に戻したければ、見かけの重力と正反対の向き に投げればよい。見かけの重力は下向き と後ろ向き の合成だから、その反対は上向き と前向き の合成で、鉛直から前へ
傾いた向きである。本文の答えと一致する。
慣性力を使うと計算は短くなるが、「なぜ後ろへずれるのか」を素朴に語るなら、地上から見て トラックだけが加速していく と言うほうが分かりやすい。2つの立場を行き来できるようにしておくとよい。
ポイント
- 手を離れたボールに水平方向の力はない。水平の速さは投げた瞬間のまま
- 等速の乗り物の上では、ボールと乗り物の水平の進みが等しいので手に戻る
- 加速する乗り物では乗り物だけが速くなり、その差 だけ後ろに落ちる
よくある間違い
- ボールは手を離れたら空気に対して止まると考え、トラックの進んだぶんだけ後ろに落ちるとしてしまう。空気の抵抗を無視する以上、水平の速さは保たれる
- 地上から見た初速を、鉛直成分の のままにしてしまう。水平成分と合成して になる
- 加速する場合に、ボールの水平の速さも増えると考えてしまう。加速しているのはトラックであって、空中のボールではない