物理 / 平面内の運動
天井のある部屋で最も遠くへ投げる
問題
天井の高さが の体育館の中で、床の高さから速さ でボールを投げる。投げ出しの角は自由に選べる。空気の抵抗は無視し、ボールは点とみなす。重力加速度の大きさを とする。
(1) 天井がないとき、最も遠くへ届く投げ出しの角と、そのときの水平到達距離を求めよ。
(2) その投げ方をすると、ボールは天井に当たってしまうか。最高点の高さを求めて判断せよ。
(3) 天井に当たらない範囲で最も遠くへ投げるとき、投げ出しの角の と水平到達距離を求めよ。
(4) 天井の高さがいくら以上あれば、(1) の投げ方をそのまま使えるか。
ヒントを見る
制約が無いときに最大になる投げ方は決まっている。まずその投げ方が使えるかどうかを確かめる。使えないとき、答えはどこにあるか。
解答・解説
方針
制約が無ければ で最大になる。天井があると最高点に上限がつき、使える角に上限がつく。水平到達距離は までは角とともに増えるので、許される中でいちばん大きい角、つまり天井にぎりぎり触れる角が答えになる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「最も遠くへ」と聞いて と答えたくなる。しかしそれは 空が開いているとき の話である。
天井があると、ボールは高く上がりすぎてはいけない。つまり 最高点の高さに上限がつく 。最高点は角が大きいほど高いので、これは「使える角の上限」に翻訳できる。
一方、水平到達距離は に近づくほど大きい。そこで、許される角のうちいちばん に近いもの、つまり天井にぎりぎり触れる投げ方が答えになる。制約つきの最大は、こうして「境界」に現れることが多い。
① 天井がないときの最大。 投げ出しの角を とすると、次の2本がすべての出発点になる。
まず である。この がこの問題の基準になる長さで、以下ずっと顔を出す。
が最大になるのは 、つまり のときだから
② その投げ方は天井に当たるか。 のとき だから
天井は しかない。 なので 当たってしまう 。つまり という答えはこの体育館では使えない。
③ 天井の下での最大。 条件は「最高点が天井以下」である。
ここで は、 が から まで増えるあいだ ずっと増え続ける 。したがって許される中で最大の角、すなわち が最適である。
このとき だから
角は約 である。天井に届かない範囲でめいっぱい高く投げるのが、いちばん遠くへ飛ばす方法になる。
④ 制約が効かなくなる高さ。 の最高点は だった。天井がこれ以上あれば、ボールは天井に届かないまま最も遠くへ飛べる。
まとめ 最大を聞かれたら、まず制約のない答えを出す。次にそれが許されるかを確かめる。許されなければ、境界まで戻って答える。この3手順は、物理でも数学でも同じ形で使える。
発展 — 一歩先へ。 天井の高さ を変えたときの到達距離を1本の式にまとめておくと、全体が見える。最高点をちょうど にする投げ方では、鉛直成分が 、水平成分が 、滞空時間が だから
を入れると で本文と一致する。この式を の関数として見ると、根号の中は の2次式で、 で最大になる。天井を高くしていくと で に達し、そこから先はいくら高くしても伸びない。①で出した答えと、ちゃんとつながっている。
(1) 、 (2) 最高点は で天井より高いので当たる (3) (約 )、 (4) 以上
別解
縦を先に決めて、残りを横に回すルート。 角度の式を使わず、速度を縦と横に分けたまま考えても解ける。こちらのほうが「なぜ境界が最大か」が見えやすい。
最高点の高さを と決めてしまう。すると縦の運動だけで滞空時間が決まる。
なら 、 である。
速さ のうち を縦に使ったので、残りが横に回る 。
この見方だと、 を大きくすると滞空時間は伸びるが水平の速さは減る、というせめぎ合いがそのまま見える。 という速さでは、つり合いが取れる高さが である。天井がそれより低い なら、まだ「もっと高く上げたい」側にいるので、天井いっぱいまで使うのが得 という結論になる。
数値も比もきれいに出るので、検算にも使える。 になっていることに気づけば、 もその場で読める。
ポイント
- 制約つきの最大は「自由な最大が使えるか」をまず確かめる。使えなければ境界が答え
- は まで単調に増える。だから許される最大の角が最適
- 最高点の高さを決めると滞空時間が決まり、速さの残りが水平成分に回る
よくある間違い
- 天井があっても が最適だと決めてかかる。制約が最適点を外へ追い出していないかを確かめる
- を出したあと としてしまう。式に入るのは のほう
- 天井に当たってから跳ね返って飛び続けると考えてしまう。ここで問われているのは、当たらずに飛ぶ範囲での最大