物理 / 平面内の運動
流れが速い川を渡る(最小の流され距離)
問題
川幅 、流れの速さ の川を、静水上で で泳げる人が渡る。流れの速さが泳ぐ速さより大きいため、流されずに渡ることはできない。(1) 上流に向けて角度をつけても垂直に渡れないことを、速度の成分を用いて説明せよ。(2) 下流に流される距離を最小にするように泳ぐとき、その最小距離を求めよ。ただし、泳ぐ向きを上流方向から測った角 とすると、流され距離が最小になるのは のときであることを用いてよい。
ヒントを見る
(2) は与えられた条件 cosα=0.6 から始める。sinα は 3:4:5 の比で出る。対岸向き成分(渡る時間を決める)と、下流向きの正味の速度(流され距離を決める)を別々に計算しよう。
解答・解説
方針
cosα=1.5/2.5=0.60 のとき最小。このとき対岸向き成分は 1.5sinα=1.5×0.8=1.2、下流への正味速度は 2.5−1.5×0.6=1.6。渡る時間 50 秒で流され 80 m。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 流れ に対し泳ぎは しかない。上流向き成分は全力でも で、 を打ち消せない——これが (1) の答えの骨格である。それでも泳ぐ向きの工夫で「どれだけ流されるか」は変えられる。与えられた最適条件 を使って数値を詰める。
① 垂直に渡れない理由。 泳ぎの上流向き成分は 。流速 より必ず小さいので、下流向きの正味速度
が常に残る。よってどの向きに泳いでも必ず流される。
② 最適角での各成分。 より ()。
- 対岸向き成分:
- 下流の正味速度:
③ 流され距離。 渡る時間は 秒。その間に流される距離は
まとめ 泳ぎが遅い側の最適戦略は「流れに一部だけ逆らい、残りで渡り切る」。最小流下距離は一般に (: 川幅、: 流速、: 泳速)となり、本問は でも確かめられる。
(1) 上流向き成分は最大でも で、流れを打ち消せないから (2)
別解
幾何(速度図)で見るルート(得意な人向け)。 岸から見た速度は、「流速ベクトル (下流向き)の先端に、長さ の泳ぎベクトルを好きな向きに付けた」合成で決まる。つまり合成速度の先端は、半径 の円周上を動く。
流され距離が最小になるのは、出発点から見た合成速度の向きが最も上流寄りに傾くとき=合成速度がこの円に接するときである。接線条件から が導かれる(問題で与えた条件の由来)。接するときの直角三角形は で、以降の数値は本解と同じになる。
ポイント
- 泳速<流速なら必ず流される
- cosα=vs/vf で流され最小(速度円の接線)
- 対岸成分で時間、下流の正味速度で距離
よくある間違い
- s08 と同じく sinθ=流速/泳速 とおいて sin>1 で破綻する
- 下流の正味速度から泳ぎの上流成分を引き忘れて 2.5 のまま使う
- 渡る時間に泳ぎの速さ 1.5 をそのまま使う(対岸成分は 1.2)