物理 / 光

虫めがねで太陽の像をつくる

最難関編レンズ視角集光

問題

焦点距離 、直径 の凸レンズを太陽に向け、焦点の位置に紙を置く。

太陽は非常に遠いので、太陽から来る光は平行光線とみなせる。ただし太陽には大きさがあり、地上から見た太陽の視角(見かけの直径)は である。

地表で太陽光が運ぶエネルギーは、光に垂直な面 につき毎秒 とする。

レンズ(直径 D)f
太陽からの光を凸レンズで集め、焦点の位置に置いた紙に像をつくる。

(1) 焦点の位置にできる太陽の像の直径を求めよ。

(2) その像の直径は、レンズの直径を大きくすると変わるか。理由とともに答えよ。

(3) 像の位置での光の強さ(単位面積あたりの毎秒のエネルギー)は、もとの太陽光の何倍か。

(4) 焦点距離が 倍のレンズに変えると、像の大きさと光の強さはそれぞれどうなるか。

ヒントを見る

太陽の中心から来る光と、端から来る光は、レンズにどんな角度で入ってくるか。焦点面のどこに集まるか。

解答・解説

方針

太陽の端から来る光は、中心から来る光と だけ傾いている。傾いた平行光線は焦点面の中心からずれた点に集まるので、像の大きさは で決まる。集光の比は面積の比で求める。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「平行光線は焦点に集まる」と覚えていると、像は点になりそうに思える。しかし実際に紙に映る太陽の像には大きさがある。

理由は、太陽が点ではないからである。太陽の中心から来る光と端から来る光は、 だけ傾いた別々の平行光線の束である。

傾いた平行光線は、焦点面の中心からずれた点に集まる。このずれが像の大きさになる。

① 像の直径。 光軸に対して角 傾いた平行光線は、焦点面上で光軸から ずれた点に集まる。

太陽の端から来る光は ずつ両側に傾いているので、像の直径は

である。

重要遠くの物体の像の大きさは (焦点距離 × 視角)で決まる

② レンズの直径との関係。 ① の式に は現れない。像の大きさは焦点距離と視角だけで決まる。

大きなレンズにすると、集める光の量は増えるが、像は同じ大きさのまま明るくなるだけである。

像の直径 fθ
太陽の中心から来る光(青)と端から来る光(赤)は、傾きが違うので焦点面の別の点に集まる。そのずれが像の大きさになる。

③ 集光の比。 レンズが受ける光は、直径 の円を通る分すべてである。それが直径 の円に集まる。

もとの強さを掛けると

紙が焦げるのも当然の強さである。

④ 焦点距離を 倍にすると。 像の直径は に比例するので 倍になる。

集める光の量(レンズの面積)は変わらないので、同じエネルギーが 倍の面積に広がることになる。

焦げやすいのは、焦点距離の短いレンズである。

まとめ 像の大きさは 、集光の比は つの式で、「大きいレンズは明るく、短い焦点距離は熱い」という性質が説明できる。

発展 — 一歩先へ。 ① の は、望遠鏡の設計でそのまま使われる。焦点距離が長いほど、天体の像は大きくなる。

一方 ③ から、同じ天体を大きく写すほど像は暗くなることも分かる。だから望遠鏡では、口径 を大きくして光の量を稼ぐ。(F 値の逆数)が明るさを決める、という写真の常識も同じ式から出ている。

「大きく写す」と「明るく写す」は本質的に両立しにくい。この緊張関係が、望遠鏡もカメラも大口径を目指す理由になっている。

像の直径 、レンズの直径にはよらない、 倍()、 倍なら像は 倍・強さは

別解

写像公式の極限として見るルート。 ① は「非常に遠い物体」という条件を、写像公式の極限として扱っても出せる。

物体までの距離を 、像までの距離を とすると

が非常に大きいと なので 、つまり像は焦点面にできる。

倍率は である。太陽の実際の直径を とすると、像の直径は

ここで は「実際の直径 ÷ 距離」、つまり視角 そのものである。

同じ式に到達した。太陽の直径()も距離()も知らなくてよく、比である視角だけで決まるのがこの式の便利なところである。実際 で、与えられた視角と一致する。

ポイント

  • 遠方の物体の像の大きさは fθ(焦点距離 × 視角)
  • レンズの直径は像の大きさに影響しない(明るさに効く)
  • 集光の比は (D/d)²。ここでは約 2900 倍
  • f を大きくすると像は大きく、そのぶん暗くなる

よくある間違い

  • 平行光線だから像は点になると考える(太陽に大きさがある)
  • 像の大きさがレンズの直径で決まると思う
  • 集光の比を D/d としてしまう(面積なので 2 乗)