物理 / 光

光は最短時間の道を選ぶ

最難関編屈折の法則フェルマーの原理最小値

問題

屈折率 の媒質中の点 A から、屈折率 の媒質中の点 B へ光が進む。境界は平面で、A は境界から 、B は境界から の距離にあり、A と B の境界に沿った距離は である。

境界上の点 P を通る経路を考え、A から境界に沿って測った P の位置を とする。真空中の光の速さを とすると、媒質中の速さは である。

ABPabxn2 の媒質n1 の媒質
境界上の点 P を通る経路。P の位置 x を変えると、かかる時間が変わる。

(1) A から B まで進むのに要する時間 を、 で表せ。

(2) が最小になる条件から、屈折の法則 を導け( は入射角、 は屈折角)。

(3) 空気()から水()へ、 で入射するときの を求めよ。

(4) 空気の屈折率が地面に近いほど小さい(暑い日の路面付近)とき、光の道すじがどうなるかを、この原理から説明せよ。

ヒントを見る

つの区間の距離を三平方の定理で書き、それぞれの速さで割る。微分して出てくる分数の形を、図の中の角と見比べたい。

解答・解説

方針

光路の時間を の関数として書き、微分して とおく。出てくる つの分数が、それぞれ入射角と屈折角の正弦になっている。屈折の法則が「最短時間」から導かれることが要点である。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 屈折の法則は実験から見つかった規則だが、もっと上位の原理から導ける。「光は 点を結ぶ経路のうち、要する時間が最小になる道を通る」というものである。

やることは単純で、時間を の関数として書き、微分して とおくだけである。

面白いのは、その計算の途中で現れる分数が、そのまま になっていることである。式が図形の意味を勝手に教えてくれる。

① 時間の式。 三平方の定理で 区間の距離を書く。

速さはそれぞれ だから

分子は光路長(距離 × 屈折率)の和である。つまり「時間が最小」は「光路長が最小」と同じことである。

② 屈折の法則の導出。 で微分する。

ここで図を見ると、 は入射角 の正弦、 は屈折角 の正弦である(どちらも「対辺 ÷ 斜辺」)。

最小の条件 より

屈折の法則が出た。

irsin i = x/APsin r = (ℓ−x)/PB
微分して現れた 2 つの分数は、そのまま入射角と屈折角の正弦になっている。
重要屈折の法則は「時間(= 光路長)が最小になる」という条件そのもの

③ 数値。

入射角 、屈折角 である。

④ 屈折率が連続的に変わる場合。 暑い日には地面に近いほど空気が熱く、密度が小さいので屈折率も小さい。屈折率が小さい = 光が速く進める、ということである。

光は最短時間の道を選ぶので、「速く進める下のほう」を回り道してでも通ろうとする。その結果、光の道すじは下に凸に曲がる。

遠くの地面すれすれを通ってきた光が、下に凸に曲がって観測者の目に届くと、空の光が地面から来たように見える。これが路面が濡れて見える蜃気楼(逃げ水)である。

まとめ 屈折の法則は、より一般的な「最小の原理」から導かれる。しかもその導出の途中で、 が自然に現れる。原理から出発すると、屈折率が連続的に変わる場合まで同じ考え方で扱える。

発展 — 一歩先へ。 「時間が最小」という言い方は、正確には「時間が停留値をとる」である。凹面鏡での反射のように、最大になる経路が実現することもある。

この原理は光だけのものではない。粒子の運動にも同じ形の原理(最小作用の原理)があり、そこからニュートンの運動方程式が導かれる。

高校で習う法則の多くは、「何かが最小(または停留)になる」という形に書き直せる。物理の見晴らしが一段変わる考え方である。

から 、光は下に凸に曲がって地面すれすれを通り、蜃気楼が見える

別解

ライフガードの問題として考えるルート。 式を立てる前に、直感で答えの形をつかむ方法がある。

浜辺にいるライフガードが、沖でおぼれている人のところへ行く。走る速さは泳ぐ速さより大きい。まっすぐ向かうのが最短距離だが、最短時間ではない。

速く動ける浜をなるべく長く使い、遅い水中の距離を減らすように、水際で「折れ曲がった」道を選ぶのが最速である。

光もこれと同じである。速く進める媒質(屈折率が小さい)のほうを長めに、遅い媒質を短めに通る。だから屈折率の大きい媒質に入ると、光は法線に近づく向きに折れる。

この見方をもっていると、 の比の向きを間違えなくなる。 が大きければ は小さく、つまり法線に近づく。「遅い媒質では短く進む」と一致している。

公式の形を忘れても、「速いほうを長く使う」という一言から再構成できる。

ポイント

  • 光路長(距離 × 屈折率)が時間に比例する
  • T(x) を微分すると、分数がそのまま sin i と sin r になる
  • 屈折の法則は「最短時間」の条件そのもの
  • 屈折率が連続的に変わると光は曲がる(蜃気楼)

よくある間違い

  • 速さを c のままにしてしまう(媒質中は c/n)
  • 微分して出てきた分数を角度に読みかえられずに止まる
  • 屈折率が小さいほうへ曲がると考える(速く進める側を長く通るように曲がる)