物理 / 光
回折格子に斜めから当てる
問題
あたり 本の筋が刻まれた回折格子に、波長 の単色光を当てる。
はじめは格子面に垂直に当て、次に、格子面の法線から 傾けて当てる。回折光の向きは法線から の角とする( と は法線をはさんで反対側にとる)。
(1) 格子定数 を求めよ。
(2) 垂直に当てたとき、観測できる明線は何本か(中央を含む)。
(3) 斜めに当てたとき、強め合う条件が となることを、隣り合うすき間を通る光の行路差から説明せよ。
(4) のとき、観測できる最大の次数と、そのときの回折角を求めよ。 とする。
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隣り合うすき間に届くまでに、光はすでにずれているのではないか。格子に入る前と出た後の か所で行路差を数える。
解答・解説
方針
斜め入射では、格子に届くまでにすでに行路差がついている。到達側の行路差と合わせると になる。次数の上限は から決まり、垂直入射のときとは違う範囲になる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 垂直入射では、格子に届くまではどのすき間でも同じ距離である。だから行路差は出ていく側だけを数えればよい。
斜めに当てると、そこが変わる。隣り合うすき間に届く時点で、すでに行路差がついている。
だから行路差は「入る前」と「出た後」の つを足す。この 点さえ押さえれば、あとは垂直入射と同じ計算である。
① 格子定数。 に 本だから
② 垂直入射の本数。 条件は である。
より だから の 本である。
③ 斜め入射の条件。 隣り合う つのすき間 A、B を考える。
入ってくる側では、格子面に対して斜めに進むので、B に届く光は A に届く光より だけ余分に進む。
出ていく側では、 の向きへ進む光について、A から出る光のほうが だけ余分に進む(法線をはさんで反対側にとったので、こちらは足し算になる)。
合わせた行路差が波長の整数倍のとき強め合う。
④ 最大の次数。
より
では ちょうどで、回折光は格子面に沿ってしまい観測できない。よって最大は である。
垂直入射では 次までだったのが、斜めに当てると 次まで見えるようになる。
まとめ 斜め入射で変わるのは、入る側の行路差が加わる点だけである。そのぶん条件式に が入り、見える次数の範囲がずれる。
発展 — 一歩先へ。 高い次数が使えることには実用上の意味がある。回折格子の分解能(近い波長を見分ける能力)は次数 に比例するので、斜めに当てるほど細かい波長の違いが見分けられる。
分光器で回折格子を斜めに使うのはこのためである。さらに、すき間の断面をのこぎり状に加工して特定の次数に光を集める工夫(ブレーズド格子)もあり、天体分光などで広く使われている。
本の式に が加わるだけの違いが、装置の性能を大きく変えている。
、垂直では 本( 〜 )、斜めでは が最大で回折角
別解
「 の和」を つの変数にまとめるルート。 ④ は、 とおくと見通しがよくなる。
条件は 、すなわち
そして のとりうる範囲は、 と から
がこの範囲に入る を数えるだけで、 の 本と分かる。
この形にすると、垂直入射との違いもはっきりする。垂直入射では の範囲が で原点について対称だったのが、斜め入射では のぶん全体がずれる。窓の幅()は同じで、位置だけがずれるのである。
だから「本数はあまり変わらないが、片側の次数だけ高くなる」という結果が、計算する前に読み取れる。変数をまとめて範囲で考えると、場合分けが減る。
ポイント
- 斜め入射では入る側にも行路差 d sinα がつく
- 条件は d(sinθ+sinα)=mλ
- 次数の範囲は |sinθ|<1 から決まり、垂直入射とはずれる
- 斜めに当てると高い次数まで使える(分解能が上がる)
よくある間違い
- 斜め入射でも d sinθ=mλ を使ってしまう
- 入射側と回折側の行路差の符号を取り違える(法線の同じ側なら差、反対側なら和)
- sinθ=1 ちょうどを観測できる次数に数えてしまう