物理 / 光
虹はなぜ決まった角度に見えるか
問題
球形の水滴に太陽光が入射し、水滴の内側で 回反射してから出ていく。入射角を 、屈折角を とすると、光が向きを変える角(偏角)は
で与えられる。水の屈折率を とする。
太陽光は水滴のいろいろな場所に当たるので、 はさまざまな値をとる。虹が特定の方向に明るく見えるのは、 が最小になる付近に光が集中するからである。
(1) の両辺を で微分して、 を で表せ。
(2) が最小になる条件から、 を導け。
(3) のときの入射角と、そのときの偏角 を求めよ。、、、 を用いよ。
(4) 太陽を背にして立ったとき、虹は太陽と反対の方向から何度の角度に見えるか。また紫の光は屈折率が少し大きい()。赤と紫では、どちらが虹の外側に見えるか。
ヒントを見る
が最小になるのは、 を変えても がほとんど変わらないところである。 は に連動することに注意して微分する。
解答・解説
方針
偏角 を の関数とみて、最小値を探す。 も で決まるので、屈折の法則を微分して を求めておく。最小の条件を整理すると、 が屈折率だけで決まる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 水滴に当たる光の入射角はばらばらである。それなのに虹が決まった角度に見えるのはなぜか。
答えは「偏角 が最小になる付近では、 を少し変えても がほとんど変わらない」からである。だから多くの光線が同じ方向に重なり、そこだけ明るくなる。
つまり求めるのは の最小値である。 も に連動して変わるので、屈折の法則を微分して連動の仕方をつかむのが第一歩になる。
① 屈折の法則を微分する。 の両辺を で微分する。右辺は を通して に依存する。
② 最小の条件。 を で微分する。
① と合わせると
両辺を 乗し、 を使う。
③ 数値。 だから 、
④ 見える角度と色の順。 偏角 は「光が向きを変えた角」である。太陽を背にした観測者から見ると、太陽と反対の方向(対日点)からの角度は
紫では と少し大きく、同じ計算をすると角度は約 と小さくなる。したがって赤が外側、紫が内側に見える。
夕立のあとの虹で、外側が赤いのはこのためである。
まとめ 虹の角度は、偏角が最小になる条件から決まる。「最小の付近では変化が鈍い」という微分の性質が、そのまま「そこに光が集中する」という物理につながっている。
発展 — 一歩先へ。 水滴の中で 回反射する光もある。同じ計算をすると偏角の最小値が変わり、約 の方向に別の虹ができる。これが副虹(二重の虹の外側の弱いほう)である。
回反射のぶん光の順序が逆転するので、副虹は色の並びが主虹と逆になる(外側が紫)。実際に二重の虹を見ると、色の順が逆になっていることが確かめられる。
さらに、主虹と副虹のあいだの空は暗く見える。そこへ向かう光は、どちらの最小偏角の条件も満たさないからである。この暗い帯はアレキサンダーの暗帯とよばれる。
、、 で 、虹は に見え、赤が外側
別解
グラフで「集まる」ことを見るルート。 微分の計算をする前に、 のグラフを描いてみると、なぜ特定の角度が明るくなるのかが見える。
を から まで動かすと、 ははじめ減っていき、 付近で最小になり、その後また増える。
大事なのは最小の付近の形である。谷底はなだらかなので、 が から まで も変わっても、 は ほどしか変わらない。
水滴に当たる光は について一様に分布しているから、 の値ごとに数えると、谷底付近の に対応する光線が圧倒的に多くなる。これが「光が集中する」の意味である。
逆に が小さいところ( の変化が急なところ)では、光は広い角度範囲にばらけてしまい、明るさは生じない。
「最小値の付近では変化が鈍い」という性質は、干渉の明線でも、力学のつり合いでも顔を出す。グラフの谷底の形を見る習慣は、いろいろな場面で効いてくる。
ポイント
- 虹の角度は偏角 D が最小になる条件で決まる
- r も i に連動するので、屈折の法則を微分して dr/di を求める
- cos i=√((n²−1)/3) から i=59.4°、D=138.0°
- 見える角度は 180°−D=42°。屈折率の大きい紫が内側、赤が外側
よくある間違い
- r を定数とみて微分してしまう(i と連動する)
- 偏角 D をそのまま虹の見える角度としてしまう(180°−D)
- 屈折率が大きい紫のほうが大きく曲がるから外側、と考える(角度は小さくなり内側)