物理 / 光
ロイドの鏡 — 明暗が入れかわる干渉
問題
水平な平面鏡の面から だけ上に、波長 の単色光を出す細い光源 S を置く。鏡から 離れた位置に、鏡面に垂直なスクリーンを立てる。
スクリーンには、S から直接届く光と、鏡で反射して届く光が重なって干渉縞ができる。屈折率の大きい媒質(鏡)で反射するとき、光の位相は だけ変わる。
(1) 反射光は、鏡について S と対称な位置にある点 S′ から出た光と同じとみなせる。S と S′ の間隔を求めよ。
(2) 縞の間隔を求めよ。
(3) スクリーン上で、鏡面をそのまま延長した位置(S′ と S の中点の高さ)は明線になるか暗線になるか。理由とともに答えよ。
(4) その位置から数えて 本目の明線は、鏡面の延長からどれだけ離れた位置にできるか。
ヒントを見る
反射した光は、どこから出た光と同じに見えるか。ヤングの実験と違うのは 点だけである。
解答・解説
方針
反射光を「鏡の向こう側の光源から出た光」と読みかえると、ヤングの実験とまったく同じ形になる。違うのは反射での位相の反転だけで、そのぶん明暗が入れかわる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 光源が つしかないのに干渉が起きる。これは、鏡が「もう つの光源」をつくり出しているからである。
鏡に映った像 S′ を光源とみなせば、S と S′ の 光源によるヤングの実験に翻訳できる。式はそのまま使える。
ただし か所だけ違う。反射のときに位相が ずれるので、行路差が同じでも明暗が逆になる。この 点を見落とすと、答えがすべて入れかわってしまう。
① 光源の間隔。 S′ は鏡について S と対称な位置にあるので、鏡面から だけ下にある。
② 縞の間隔。 ヤングの実験と同じ式が使える。
③ 鏡面の延長の位置。 そこは S と S′ から等距離なので、行路差は である。
ヤングの実験なら、行路差 は明線の中心になる。しかしここでは反射光の位相が ずれている。位相の のずれは、行路差 に相当する。
これは暗線の条件である。よって暗線になる。
④ 本目の明線。 明線の条件は、幾何的な行路差が の奇数倍になることである。
鏡面の延長から の位置である。以後、明線は おきに並ぶ。
まとめ 鏡が第 の光源をつくるので、計算はヤングの実験に帰着する。違いは位相の反転だけで、そのぶん縞全体が半周期ずれる。
発展 — 一歩先へ。 この配置はロイドの鏡とよばれ、 年に行われた。 つのスリットを用意しなくても干渉が起こせるだけでなく、「反射で位相が反転する」ことの直接の証拠にもなっている。
もし位相が反転しないなら、鏡面の延長は明線になるはずだからである。実験は暗線を示し、反射の位相反転が確かめられた。
同じ位相反転は、薄膜の干渉でシャボン玉の膜がごく薄いときに黒く見える理由でもある。 つの事実が、まったく違う場面で顔を出す。
、縞の間隔 、鏡面の延長は暗線(行路差 でも位相が ずれるため)、 本目の明線は
別解
縞全体が半分ずれると読むルート。 ③ と ④ は、条件式を書き直さずに済ませられる。
ヤングの実験の縞は、中心(行路差 )を明線として おきに並ぶ。ロイドの鏡では、そこに位相の反転が加わるだけである。
位相の反転は行路差 に相当し、 が 本ぶんの間隔にあたるのだから、 は縞の半分にあたる。
つまり縞のパターン全体が、 だけずれる。明線があった場所に暗線が、暗線があった場所に明線が来る。
この見方なら、③ は「中心の明線が暗線に変わる」、④ は「もとの 本目の暗線の位置()が明線になる」と即答できる。
干渉の問題では、条件式を立て直すより「パターンがどれだけずれるか」で考えたほうが速いことが多い。ガラス板を片方の経路に入れる問題も、同じ発想で処理できる。
ポイント
- 鏡は「対称な位置にある第 2 の光源」をつくる(間隔は 2h)
- 縞の間隔はヤングの実験と同じ Lλ/d
- 反射の位相反転は行路差 λ/2 に相当し、明暗が入れかわる
- 鏡面の延長は行路差 0 でも暗線になる
よくある間違い
- 2 光源の間隔を h としてしまう(鏡像までは 2h)
- 位相の反転を忘れて、鏡面の延長を明線としてしまう
- 位相の反転で縞の間隔まで変わると考える(変わるのは位置だけ)