物理 / 波の伝わり方と音

津波はなぜ速く、なぜ岸で高くなるか

最難関編波の速さ浅水波天体

問題

波長が水深に比べて十分に長い波(長波)の速さは、水深 と重力加速度 だけで決まり

と表される。津波はこの条件を満たす。 とする。

深さ 4000 m浅い津波の進む向き
外洋から沿岸へ向かう津波。海底が浅くなるにつれて速さが変わる。

(1) 水深 の外洋での津波の速さを、m/s と km/h で求めよ。

(2) 水深 の沿岸ではどうか。

(3) 太平洋を 横断するのに要する時間を求めよ(水深は 一定とする)。

(4) 津波の周期を 分とする。外洋と沿岸での波長を求めよ。また、岸に近づくと波が高くなる理由を、波長の変化から説明せよ。

ヒントを見る

浅くなると速さはどうなるか。周期は変わらないとすると、波長はどう変わるか。

解答・解説

方針

速さは水深の平方根だけで決まる。周期は変わらないので、速さが落ちれば波長も同じ比で縮む。エネルギーがほぼ保存されるなら、波長が縮んだぶん波高が上がる。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 津波が「速い」ことと「岸で高くなる」ことは、どちらも という つの式から出てくる。

外洋では水深が大きいので速い。岸に近づくと水深が小さくなり、速さが落ちる。

そして波源で決まった周期は変わらない。速さが落ちて周期が同じなら、波長が縮む。波長が縮めば、同じエネルギーが狭い範囲に押しこめられ、波高が上がる。

① 外洋での速さ。

ジェット旅客機とほぼ同じ速さである。

② 沿岸での速さ。

水深が になると、速さは になる。

重要。深さが で速さは (平方根)

③ 横断時間。

地球の裏側で起きた地震の津波が半日ほどで到達する、という現実と合う。

④ 波長と波高。 周期 は波源で決まり、伝わる途中で変わらない。

外洋では

沿岸では

波長が に縮む。津波が運ぶエネルギーは、伝わる途中でほとんど失われない。同じエネルギーが の長さに詰めこまれるので、波の高さが上がる。

外洋では高さ 程度でも(波長が もあるので船の上では気づかない)、沿岸で数 m から を超える高さになるのはこのためである。

外洋: 長くて低い沿岸: 短くて高い
波長が縮むと、同じエネルギーが狭い範囲に集まって波高が上がる(縦横の比は誇張してある)。

まとめ から、速さも波長も水深で決まる。「外洋では速くて低い、沿岸では遅くて高い」という津波の性質は、この 本の式の帰結である。

発展 — 一歩先へ。 速さが場所で変わるということは、屈折も起きるということである。

海底が浅くなっている場所(岬の沖など)では波が遅くなるので、波面がそちらへ向きを変える。その結果、津波のエネルギーは岬に集まりやすい。逆に湾の奥では、地形による反射と重なり合いで局所的に非常に高くなることがある。

「速さが場所で変わる媒質では波が曲がる」という原理は、光の屈折・音の屈折とまったく同じである。同じ数学が、レンズの設計から津波の防災までを貫いている。

外洋で ()、沿岸で ()、横断に約 時間、波長は から に縮み、同じエネルギーが狭い範囲に集まるため高くなる

別解

エネルギーの流れで波高を出すルート。 ④ の「高くなる」を、もう少し定量的に見ることもできる。

単位長さの海岸線あたり、波が運ぶエネルギーの流れ(仕事率)は、波高 と速さ を使って

と書ける。エネルギーが失われないなら は一定だから

水深が になると、 倍になる。外洋で なら沿岸で という見積もりが立つ。

これはグリーンの法則とよばれる。実際にはさらに地形による集中や反射が加わるので、もっと高くなることもある。

「エネルギーの流れが一定」という条件から振幅の変化を出す手は、音波が細い管に入るときや、光が集光されるときにも同じように使える。

ポイント

  • v=√(gh)。水深だけで決まり、波長にはよらない
  • 外洋で 700 km/h、沿岸で 36 km/h
  • 周期は変わらないので、遅くなると波長が縮む
  • 同じエネルギーが狭い範囲に集まるので波高が上がる

よくある間違い

  • 津波の速さが波長や地震の規模で決まると考える(水深だけ)
  • 浅くなると周期も短くなると考える(周期は変わらない)
  • 外洋で高い波が来ていると考える(外洋では低くて長い)