物理 / 波の伝わり方と音

どこをはじくかで音色が変わる

最難関編弦の振動倍音定常波

問題

長さ の弦の両端を固定し、弦を伝わる波の速さを とする。

弦をはじくと、いくつもの振動(基本振動と倍振動)が同時に励起され、その組み合わせが音色を決める。ただし、はじいた点が節になるような振動は励起されない。その点は動かないはずなのに、はじいて動かしてしまうと矛盾するからである。

基本2 倍3 倍中央
弦の振動の形。中央(赤い破線)は、2 倍振動では節になっている。

(1) 基本振動数と、 倍振動・ 倍振動の振動数を求めよ。

(2) 弦のちょうど中央をはじいた。 倍振動までのうち、励起されないのはどれか。理由とともに答えよ。

(3) 端から の位置をはじいた場合はどうか。

(4) ギターやピアノでは、弦の端に近いところをはじく(打つ)と硬い音になり、中央に近いほど柔らかい音になる。その理由を述べよ。

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倍振動では、節はどこにできるか。はじいた点がそこに一致すると何が起こるか。

解答・解説

方針

倍振動の節は弦を 等分する位置にある。はじいた点がその節にあたる振動は励起されない。だから「はじいた点が何を 等分するか」を数えれば、消える倍音が決まる。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 弦の音は つの振動数ではなく、基本振動と倍振動が混ざったものである。その混ざり方が音色になる。

はじくという操作は、弦に「その点が大きく動く」という初期の形を与えることである。もしある倍振動にとってその点が節なら、その振動は初期の形に含まれない。

だから「はじいた点が節になる倍音は出ない」。あとは節の位置を数えるだけの問題になる。

① 振動数。

公式両端を固定した弦の 倍振動

② 中央をはじく場合。 倍振動の節は、両端を含めて弦を 等分する位置にある。中央 が節になるのは、 を満たす整数 があるとき、つまり が偶数のときである。

したがって 倍振動は励起されない。残るのは 倍振動、つまり奇数倍音だけである。

はじいた形基本振動 + 3 倍 + 5 倍 …(偶数は無し)
中央をはじいた形(赤)は左右対称。左右で符号が逆になる偶数倍振動は含まれない。

をはじく場合。 となるのは の倍数のときである。

よって 倍振動が消え、 が残る。

④ 音色の違い。 弦の端に近いところをはじくと、そこが節になる倍音は「 が非常に大きいもの」に限られる。低い次数の倍音はどれも節にならないので、高い倍音まで幅広く含まれる。高い成分が多い音は、硬く明るく聞こえる。

逆に中央付近をはじくと、偶数倍音がごっそり抜け、含まれる倍音の種類が減る。低い成分が中心の、柔らかくまるい音になる。

ギターで弾く位置を変えると音色が変わるのは、まさにこの理由による。

まとめ 「はじいた点が節になる倍音は出ない」という つの規則から、音色の違いが説明できる。節の位置は弦を 等分する点なので、はじく位置と の約数関係で決まる。

発展 — 一歩先へ。 ピアノでは、ハンマーが弦を打つ位置が弦の端から から ほどのところに設計されている。

これは 倍音・ 倍音あたりを抑えるためである。 倍音は基本音に対して音楽的に濁って聞こえる音程(自然七度)にあたるので、それを弱めると澄んだ響きになる。

物理の「節の位置」の話が、楽器の設計という形で音楽に直結している例である。

、中央では偶数倍振動()が出ない、 では の倍数()が出ない、端に近いほど高い倍音が多く含まれる

別解

波形の分解として見るルート。 「節ならば出ない」を、初期の形の分解として理解しておくと確かである。

はじいた直後の弦の形は、はじいた点を頂点とする三角形である。この形は、基本振動・ 倍振動・… の形を適当な重みで足し合わせたものとして書ける(フーリエ級数)。

各倍振動の重みは、三角形の形とその倍振動の形との「重なり具合」で決まる。

中央をはじいた三角形は、中央について左右対称である。一方、偶数倍振動の形は中央について反対称(左右で符号が逆)である。対称な形と反対称な形の重なりは打ち消し合って になる。

だから偶数倍音の重みは 、つまり励起されない。

この見方だと、「節だから出ない」という言い方が「対称性が合わないから重なりが 」というより一般的な言葉に翻訳される。同じ論法は、量子力学で遷移が起きるかどうかを判定するときにも使われる。

ポイント

  • n 倍振動の節は弦を n 等分する位置
  • はじいた点が節になる倍音は励起されない
  • 中央では偶数倍音、L/3 では 3 の倍数の倍音が消える
  • 端に近いほど高い倍音まで含まれ、硬い音になる

よくある間違い

  • はじいた点が腹になる倍音だけが出ると考える(節にならなければ出る)
  • 中央をはじくと基本振動も出ないと思う(中央は基本振動の腹)
  • 振動数が変わると考える(変わるのは含まれる倍音の割合であって、各倍音の振動数ではない)