物理 / 波の伝わり方と音
音速を超えると何が起こるか
問題
音速 の空気中を、飛行機が一定の速さ で水平に飛んでいる。飛行機は進みながら音を出し続けており、時刻 だけ前に出た音は、そのときの位置を中心とする半径 の球面に広がっている。
のとき、これらの球面は共通の円錐面に接する。この円錐の頂点は飛行機で、円錐の面が衝撃波(ソニックブーム)として伝わる。
(1) 円錐の中心軸(飛行機の進む向き)と円錐の面がなす角を とする。 となることを、 秒間に飛行機と音が進む距離から示せ。
(2) が音速の 倍のとき、 を求めよ。
(3) 高度 をマッハ で飛ぶ飛行機が真上を通過したあと、地上の観測者に衝撃波が届くのは何秒後か。 とする。
(4) 飛行機の速さが音速に近づくとき、また音速より遅いとき、円錐はどうなるか。
ヒントを見る
ある瞬間に出た音は、どこを中心にどれだけ広がっているか。飛行機の位置と音の球面の関係を、直角三角形で結べないか。
解答・解説
方針
秒前に出た音の球面の半径は 、そのあいだに飛行機は 進む。この つを 辺とする直角三角形から が決まる。到達時間は、円錐面が観測者を通るまでに飛行機がどれだけ進むかで求める。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 音源が音速より速く動くと、自分が出した音を追い越してしまう。追い越された球面が次々に重なって、その包絡線として円錐ができる。
この円錐の形を決めるのは、 秒間に「音が広がる距離 」と「飛行機が進む距離 」の比だけである。時間 は約分で消えるので、円錐の角は速さの比だけで決まる。
① 角の関係。 秒前に出た音は、そのときの位置を中心とする半径 の球面になっている。飛行機は現在その位置から だけ前方にいる。
この 点を結ぶ線分()を斜辺、球面までの垂線()を対辺とする直角三角形ができる。
が消えるので、いつ出た音で考えても同じ角になる。だから球面はすべて同じ円錐に接する。
② マッハ のとき。
③ 衝撃波が届く時刻。 飛行機が真上を通過した瞬間、円錐の面はまだ観測者に届いていない。円錐は飛行機の後方に開いているからである。
観測者に届くのは、飛行機がさらに だけ進み、円錐の面が観測者を通るときである。高度 とすると
真上を通ってから約 秒も後に、大きな音が届く。音が聞こえた方向を見上げても、飛行機はもうそこにいない。
④ 速さを変えると。 が音速に近づくと 、つまり で、円錐は開ききって平面に近づく。すべての球面が同じ平面に接し、そこに音が集中する。
では、飛行機は自分の出した音に追い越されるので、球面が重なることはない。円錐はできず、衝撃波も生じない。
まとめ という関係だけで、円錐の形も到達の時刻も決まる。 が約分で消えることが、「すべての球面が同じ円錐に接する」ことの理由になっている。
発展 — 一歩先へ。 同じ形の現象は、水面を進む船の後ろにできる V 字の波でも見られる。ただし水面波では速さが波長で変わる(分散がある)ため、角度は速さによらず約 に決まる(ケルビン波)。
また、水中を光速に近い速さで走る荷電粒子は、水中の光速()を超えるためチェレンコフ光という「光の衝撃波」を出す。原子炉が青く光るのはこの現象で、円錐の角度から粒子の速さが測れる。
「波源が波より速い」という つの条件が、音・水面・光でそれぞれ違う顔を見せる。
、マッハ で 、 秒後、音速に近づくと で平面に近づき、音速より遅いと円錐はできない
別解
ホイヘンスの作図で見るルート。 式を立てずに、作図だけで同じ結論に達することもできる。
飛行機の航路上に、等間隔の時刻の位置を打つ。それぞれの点から、経過時間に比例した半径の円を描く。いちばん古い点の円がいちばん大きく、新しい点ほど小さい。
これらの円に共通に接する直線(包絡線)を引くと、それが衝撃波の断面になる。
このとき、いちばん古い円の半径と、その中心から現在の飛行機までの距離の比が である。円が半径 、距離が で、どちらも に比例するので、どの円で見ても同じ比になる——だから 本の直線がすべての円に接する。
作図してみると、 では新しい円が古い円の内側に入りきらず、共通接線が引けないことも目で分かる。式の という条件が、図の上では「接線が引けるかどうか」として現れる。
ポイント
- sinθ=v/V=1/M。時間 t が約分で消えるので、すべての球面が同じ円錐に接する
- マッハ 2 なら θ=30°。速いほど円錐は細い
- 衝撃波は真上通過より遅れて届く(円錐が後方に開くため)
- V<v では円錐ができず、衝撃波も生じない
よくある間違い
- 真上を通過した瞬間に衝撃波が届くと考える
- θ を円錐の頂角としてしまう(半頂角)
- 音速を超えた瞬間だけ衝撃波が出ると考える(超音速で飛ぶ間ずっと出ている)