物理 / 剛体のつり合い
3 つの力の作用線は 1 点で交わる
問題
大きさをもつ物体が つの力だけを受けてつり合っているとする(どの力も でないものとする)。
(1) つの力の作用線が 点 P で交わっているとき、 番目の力の作用線も P を通ることを示せ。
(2) なめらかな鉛直の壁に、あらい水平な床から長さ の一様な棒を、床と の角で立てかける。棒にはたらく つの力を挙げ、そのうち つの作用線の交点を求めよ。
(3) (1) の性質を使って、床から棒にはたらく力の向き(水平からの角)を求めよ。 とする。
(4) 棒がすべらないために必要な静止摩擦係数の最小値を求めよ。
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交点のまわりでモーメントを考えると、 つの力はどうなるか。残りの力について何がいえるか。
解答・解説
方針
つの力の作用線の交点まわりでは、その 力のモーメントが である。全体のモーメントも なので、残る 力のモーメントも でなければならない。力が でないなら、作用線がその点を通るしかない。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 剛体のつり合いでは、モーメントをどの点のまわりで考えてもよい。だから「都合のよい点」を選べる。
つの力の作用線の交点を選ぶと、その 力のモーメントがどちらも になる。残るのは 番目の力だけである。
全体のモーメントが なのだから、 番目の力のモーメントも 。力の大きさが でないなら、腕の長さが 、つまり作用線がその点を通っているしかない。
これが分かると、力の向きが図から読み取れるようになる。
① 証明。 つの力 の作用線の交点を P とする。P のまわりのモーメントを考えると、 も も作用線が P を通るので、腕の長さが でモーメントは である。
つり合っているのだから、 つの力のモーメントの和も である。
したがって のモーメントも である。 なので、腕の長さが 、つまり の作用線も P を通る。
② 棒にはたらく力。 つある。
壁からの力(なめらかなので壁に垂直、つまり水平。上端にはたらく)、重力(鉛直下向き、中点にはたらく)、床からの力(垂直抗力と摩擦力の合力。下端にはたらく)。
下端を原点、 の角で立てかけるとすると、上端は 、重心はその中点 である。
壁の力の作用線は上端を通る水平線、つまり 。重力の作用線は重心を通る鉛直線、つまり 。交点は
③ 床の力の向き。 ① より、床からの力の作用線も P を通る。床の力は下端(原点)にはたらくので、その向きは原点と P を結ぶ向きである。
水平から 傾いた向きである。
④ 摩擦係数。 床の力の水平成分が摩擦力 、鉛直成分が垂直抗力 である。向きが分かっているので
すべらないためには が必要だから
文字で書くと で、一般には である。角度が小さい(寝かせる)ほど大きな摩擦が要る。
まとめ 力のつり合いでは作用線が 点で交わる。この 点を図に描きこむだけで、力の向きが読み取れる。連立方程式を立てる前に、図で答えの形が見える。
発展 — 一歩先へ。 この定理は「 力」でしか使えないが、力が つ以上でも つずつまとめて つにできれば適用できる。
たとえば ② で、床からの力を「垂直抗力」と「摩擦力」に分けて 力として扱うと定理は使えない。合力として つにまとめたからこそ使えた。
「まとめられる力はまとめる」というのは、剛体の問題を簡単にする基本の手筋である。逆に、成分に分けたほうがよい場面もある。どちらが有利かは、何を求めたいかで決まる。
交点まわりのモーメントを考えると第 の力のモーメントも になるから、交点は棒の上端の高さと重心の真上が交わる点、床の力は水平から 、
別解
モーメントの式を直接立てるルート。 定理を使わず、ふつうにつり合いの式を書いても解ける。
未知数は、壁からの力 、床の垂直抗力 、摩擦力 の つである。
第 式から
したがって 、 で、 ✓ ③④ と一致する。
計算量はどちらも大差ない。しかし作用線の定理を使うと、「床の力がどちらを向いているか」が図の上で先に見える。答えの向きを知ってから計算すると、符号や角の取り違えに気づきやすい。
なお、この定理は逆にも使える。 力の作用線が 点で交わっていなければ、その物体は必ず回転を始める。図を見ただけで「これは回る」と判断できるのは、設計や安全の検討で役に立つ。
ポイント
- 交点まわりでは 2 力のモーメントが 0 になる
- 残る 1 力のモーメントも 0 → 作用線がその点を通る
- 力の向きが図から読み取れる(計算前に答えの形が見える)
- はしごの条件は μ≥1/(2tanθ)
よくある間違い
- 力を成分に分けたまま定理を使おうとする(合力にまとめてから)
- 床からの力を鉛直方向だけと考える(摩擦があるので傾く)
- 3 力が平行な場合にも交点があると考える(その場合は例外)