物理 / 剛体のつり合い

ドアの蝶番にかかる力

最難関編モーメント偶力設計

問題

重さ 、幅 のドアが、上下 つの蝶番で壁に取りつけられている。 つの蝶番の間隔は で、どちらもドアの回転軸の側にある。ドアの重心は中央にあるものとする。

上の蝶番下の蝶番b重心Wa = 0.80 m
ドアを横から(壁を左に)見た図。重心は蝶番の線から a/2 離れている。

(1) ドアにはたらく力をすべて挙げ、水平方向・鉛直方向・モーメントのつり合いの式を書け。

(2) 上下の蝶番が受ける水平方向の力の大きさを求めよ。それぞれの向きも答えよ。

(3) 蝶番の間隔 を半分にすると、水平方向の力はどうなるか。

(4) 上の蝶番だけが鉛直方向も支えているとすると、その蝶番が受ける力の大きさはいくらか。

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水平方向の力は外から加わっていないのに、なぜ蝶番に水平の力がかかるのか。モーメントを打ち消すには何が必要か。

解答・解説

方針

重力はドアの中央にはたらき、蝶番から 離れている。この重力のモーメントを、上下の蝶番の水平力が作る偶力で打ち消す。偶力の腕は蝶番の間隔 である。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 ドアにはたらく外力は重力と、 つの蝶番からの力だけである。重力は鉛直なのに、なぜ蝶番に水平の力がかかるのか。

理由はモーメントにある。重力はドアの中央、つまり蝶番の線から 離れたところにはたらく。これはドアを「壁からもぎ取る」向きに回そうとする。

このモーメントを打ち消すには、鉛直の力だけでは足りない(蝶番は同じ鉛直線上にあるので、モーメントの腕がない)。上下で逆向きの水平力、つまり偶力が必要になる。

① 力とつり合い。 はたらく力は、重力 (下向き、中央)、上の蝶番からの力( 水平、 鉛直)、下の蝶番からの力( 水平、 鉛直)である。

水平方向の式から 、つまり大きさが同じで向きが逆である。

② 水平力。

上の蝶番はドアを壁のほうへ引く向き、下の蝶番は壁から押し出す向きである。 つで偶力をつくり、重力のモーメントを打ち消している。

50 N50 N偶力W
上下の水平力が逆向きの偶力をつくり、重力のモーメントを打ち消している。
重要 つの蝶番の水平力は偶力。腕は蝶番の間隔

③ 間隔を半分にすると。 だから、 が半分になれば 倍の になる。

蝶番はできるだけ離してつけたほうが、 つあたりの負担が小さくなる。ドアの上端と下端の近くに取りつけるのは、このためである。

④ 上の蝶番の合力。 鉛直方向をすべて上の蝶番が支えるとすると である。水平の と合わせて

まとめ 鉛直の重力しかかかっていないのに水平の力が生じるのは、モーメントを打ち消す必要があるからである。「離してつけるほど楽になる」という設計の常識が、 という形で式に現れている。

発展 — 一歩先へ。 ① で気づくように、鉛直方向の力 の配分は決まらない。式が 本に対して未知数が 個だからである(これも不静定である)。

実際には、上の蝶番のほうが多く負担することが多い。ドアがわずかに垂れ下がると、上の蝶番が引っかかる形になるからである。だから ④ のように「上がすべて支える」と仮定するのは、安全側の見積もりとして妥当である。

設計では、こうした「決まらない量」を安全側に仮定して余裕をもたせる。物理で決まる部分と、仮定を置く部分を区別しておくことが大切である。

水平力は上下で大きさが等しく逆向き、(上は壁へ引く向き、下は壁を押す向き)、 を半分にすると 倍の 、上の蝶番の合力は約

別解

重力を蝶番の線上へ移すルート。 モーメントの計算を、力の平行移動として見ると見通しがよい。

重心にはたらく重力 を、蝶番の線上へ平行移動させることを考える。ただの平行移動では回転の効果が変わってしまうので、移動した距離 と力の積、すなわち

の偶力を「おつり」として付け加える必要がある。

すると、ドアにはたらくのは「蝶番の線上の鉛直力 」と「 の偶力」の つになる。

鉛直力は蝶番の鉛直方向の力が受け持つ。偶力は偶力でしか打ち消せないので、蝶番の水平力が偶力をつくる。その腕は だから

② と一致する。

「力を平行移動すると偶力が生まれる」という見方は、剛体の問題を整理するのに便利である。重心にはたらく重力を支点の真上に移す、といった操作でも同じ考え方を使う。

ポイント

  • 重力のモーメントを打ち消すのは、上下の水平力がつくる偶力
  • H=Wa/(2b)。間隔 b に反比例する
  • 蝶番は離してつけるほど 1 つあたりの負担が小さい
  • 鉛直方向の配分は決まらない(不静定)ので、安全側に仮定する

よくある間違い

  • 水平の外力がないから蝶番の水平力も 0 と考える
  • 2 つの蝶番の水平力を同じ向きとしてしまう(逆向きの偶力)
  • モーメントの腕をドアの幅としてしまう(偶力の腕は蝶番の間隔)