物理 / 剛体のつり合い
3 本脚は決まるが 4 本脚は決まらない
問題
正三角形の頂点に 本の脚をつけたテーブルがある。天板は軽くて変形しないものとし、脚の位置を A、B、C とする。三角形の 辺の長さを 、A を原点、B を 、C を とする()。
天板の上に重さ のおもりを置く。
(1) おもりを三角形の重心に置いたとき、各脚が受ける力を求めよ。
(2) おもりを辺 AB の中点に置いたとき、各脚が受ける力を求めよ。
(3) おもりを (C 寄り)に置いたときはどうか。
(4) 同じことを 本脚(正方形の頂点)のテーブルで考えると、各脚の力は決まらない。その理由を、未知数と方程式の数から説明せよ。
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つり合いの式は何本立てられるか。未知数はいくつか。数を数えてみるとよい。
解答・解説
方針
剛体のつり合いで使える式は、鉛直方向の力のつり合いが 本、水平な 本の軸まわりのモーメントのつり合いが 本の、合わせて 本である。未知数が 個なら決まり、 個なら足りない。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 脚の力を求める問題だが、まず「何本の式が使えるか」を数えるのがこの問題の主題である。
平面上に置かれた物体が鉛直方向にだけ力を受ける場合、使えるつり合いの式は 本である。鉛直方向の力の和が 、そして水平な 本の軸(たとえば 軸と 軸)まわりのモーメントの和がそれぞれ である。
だから未知数が 個なら決まる。 個なら決まらない。これは物理の限界ではなく、剛体という理想化の限界である。
① 重心に置いた場合。 対称性から 本とも等しい。
② 辺 AB の中点。 辺 AB を軸としてモーメントを考える。おもりは軸の上にあるのでモーメントが 、A と B も軸上なのでモーメントが である。残るのは C だけだから
次に、A を通り AC に平行な軸(あるいは単純に 方向のつり合い)を使うと、対称性から である。
C の脚には力がかからない。おもりが AB の真上にあるので、C は「ただ触れているだけ」になる。
③ C 寄りに置いた場合。 おもりの 座標は で、これは三角形の高さ の にあたる。
辺 AB を軸としたモーメントのつり合いから
残りを A と B が分け合い、対称性から等しい。
④ 本脚が決まらない理由。 未知数は脚の力 個である。しかし使える式は 本しかない。
方程式が足りないので、解は つに定まらない。たとえば「対角の 本だけで支え、他の 本は 」という配分も、「 本で均等」という配分も、どちらもつり合いの式をすべて満たしてしまう。
実際にどうなるかは、脚や床のわずかな変形(どれだけ縮むか)で決まる。剛体として扱っているかぎり答えは出ない。
このような状態を不静定という。
まとめ つり合いの式の本数と未知数の個数を数えるのが第一手である。 本脚のテーブルががたつかないのは、力の配分が一意に決まるからでもある。
発展 — 一歩先へ。 本脚のテーブルががたつくのは、床や脚がわずかに不揃いなとき、 点が同一平面に乗らないからである。 点はつねに つの平面を決めるので、 本脚は原理的にがたつかない。
カメラの三脚や測量機器の脚が 本なのは、この安定性のためである。
いっぽう建築や機械では、あえて不静定にすることも多い。 か所が壊れても全体が崩れないという冗長性が得られるからである。ただしその代わり、力の配分を求めるには材料の変形まで考える必要がある。
重心では各 、AB の中点では A と B が で C は 、C 寄りでは A・B が で C が 、 本脚は未知数 に対して式が 本しかないので決まらない
別解
重心座標として読むルート。 ①〜③ の答えは、実は「おもりの位置を 頂点の重み付き平均として書いたときの重み」そのものである。
おもりの位置 が
と書けるとき、各脚の力は 、、 になる。
確かめてみる。重心なら で各 ✓。AB の中点なら で ✓。③ の点は 、 で ✓。
この係数は重心座標とよばれ、三角形の内部の点を頂点の重みで表す方法である。
この見方の利点は、 がすべて 以上であることが「おもりが三角形の内側にある」ことと同値だと分かる点である。おもりが三角形の外に出ると、どれかの係数が負になる——脚が床を引っぱらないといけないので、実際にはテーブルが倒れる。
本脚が倒れない条件が、重心座標の符号として読み取れる。
ポイント
- 鉛直の力だけなら、つり合いの式は 3 本(力 1 本 + モーメント 2 本)
- 未知数 3 個の 3 本脚は一意に決まる
- 辺の真上に荷重があると、向かいの脚の力は 0
- 4 本脚は未知数 4 で式が足りない(不静定)
よくある間違い
- 4 本脚でも常に均等に 1/4 ずつと考える
- 荷重が三角形の外にあっても脚の力が正だと考える(倒れる)
- モーメントの式を 1 本しか立てない(平面なので 2 本立つ)