物理 / 剛体のつり合い
積み木はどこまで張り出せるか
問題
長さ の同じ積み木を、机の端から少しずつずらして積み上げる。 枚も落ちないようにしながら、いちばん上の積み木をできるだけ遠くまで張り出させたい。
上から数えて 枚目までのまとまりを考えると、その重心が「 枚目の右端」より内側にあれば崩れない。この条件から、上から 枚目は 枚目より だけ張り出せる。
(1) 枚のとき、いちばん上の積み木の右端は机の端から最大どれだけ出せるか。 を用いて表せ。
(2) 枚のときの最大の張り出しを、和の形で表せ。
(3) 枚のとき、張り出しは積み木 枚の長さを超えることを示せ。
(4) 張り出させるには何枚必要か。 で和を近似してよい( は自然対数、)。
ヒントを見る
枚ずつ下から見るのではなく、上から 枚のまとまりを つの物体とみなす。その重心はどこにあるか。
解答・解説
方針
いちばん上から順に「そこまでのまとまりの重心」を考えるのが要点である。 枚のまとまりの重心は、 枚ずつずらすと ずつ動く。和をとると調和級数になり、発散するのでいくらでも張り出せる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「どこまで出せるか」を 枚ずつ考えると混乱する。上の積み木の位置が下の条件に効いてくるからである。
そこで、上から 枚をひとまとまりの物体とみなす。そのまとまりが 枚目から落ちない条件は、「まとまりの重心が 枚目の右端より内側」である。
この条件を上から順に使っていくと、ずらせる量が という単純な形で出てくる。あとはそれを足すだけである。
① 枚の場合。 いちばん上の積み木は、 枚目より だけ張り出せる(自分の重心が 枚目の右端に来るまで)。
枚のまとまりの重心は、 枚目の左端から の位置にある。これが机の端に来るまで出せるので、 枚目は机から 張り出せる。
いちばん上の右端は、机の端から
② 一般の 枚。 上から 枚目が 枚目より 張り出せるので、合計は
③ 枚のとき。
枚の長さ を超えている。つまり 枚あれば、いちばん上の積み木は机の真上から完全に外れた位置まで出せる。
④ 張り出す。 だから
近似式を使うと
約 万枚である。
まとめ 調和級数は発散するので、枚数さえ増やせばいくらでも張り出せる。ただし伸びが対数なので、増え方は極端に遅い。
発展 — 一歩先へ。 調和級数の発散は 的なので、 倍遠くへ出すには枚数が 倍必要になる。 万枚積んでも にしかならない。
「原理的には無限」と「現実的に可能」がまったく違う、というよい例である。
なお、この問題は「 枚ずつ真上に積む」という条件でのものである。 枚を横に並べて支えるなど、積み方を工夫すると 枚で 程度まで伸ばせることが知られている。制約を変えると最適解の形が変わる、というのも面白いところである。
、、 枚で 、約 枚
別解
下から順に重心を追うルート。 ② の式は、下から積み上げる立場でも確かめられる。
まず机の端を原点とし、いちばん下( 枚目)の左端を とする。上へ行くほど右へずれていく。
枚目の右端が机の端からどれだけ出るかを追うより、「上から 枚のまとまりの重心」を追うほうが速い。まとまりの重心は、 枚追加するごとに
で更新される。ぎりぎりまでずらした状態では、まとまりの重心はつねに つ下の積み木の右端に一致している。
この漸化式を書き下すと、 枚追加するごとに重心が ずつ動くことが出てくる。② の と同じ式である。
「まとまりの重心を平均で更新する」という見方は、重心の問題全般で使える。 つの物体の重心は質量で重みをつけた平均、という基本がそのまま効いている。
ポイント
- 上から k 枚をひとまとまりとみなすのが要点
- k 枚目は 1 つ下より L/(2k) 張り出せる
- 合計は調和級数で、発散するのでいくらでも張り出せる
- ただし伸びは対数なので、1 m に 1.2 万枚も必要
よくある間違い
- 各段で L/2 ずつずらせると考える(まとまりの重心で決まる)
- 調和級数が収束すると思い込む(発散する)
- 発散するから現実的にも遠くまで出せると考える(対数なので極端に遅い)