物理 / 剛体のつり合い
倒れるのが先か、すべるのが先か
問題
幅 、高さ 、重さ の一様な直方体が水平な床に置かれている。床との静止摩擦係数は である。直方体の上端に水平な力 を加え、徐々に大きくしていく。(1) すべり出す の値 (2) (下端の角のまわりに)倒れ始める の値 を求め、(3) この物体は先にすべるか、先に倒れるか答えよ。
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「すべる」と「倒れる」は別々の条件で決まる独立な現象。それぞれの臨界の F を別々に計算して、先に達するほう(小さいほう)を選ぶ。倒れの支点は押している側と反対の下端の角。
解答・解説
方針
すべりの条件は F>μN=0.30×100。倒れの条件は、下端の角まわりで F×(高さ)>W×(幅の半分)。両者の臨界値を比べ、小さいほうが先に起こる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 押されている物体の運命は 2 通り——すべるか倒れるか。それぞれ臨界の を計算し、小さいほうが先に実現する。すべりは力のつり合い、倒れはモーメントのつり合いの守備範囲である。
① すべり出す F。 鉛直のつり合いより 。
② 倒れ始める F。 倒れの支点は、押す向きの先にある下端の角 P。倒れ始める(反対側の床反力が 0 になる)とき、P まわりで
(うで: は高さ 、重力は幅の半分 。)
③ 比較。 。よって に達した時点で先に倒れる。
まとめ 背の高い物体を上のほうで押すと倒れやすい。もし低い位置を押せば のうでが縮んで臨界値が上がり、すべりが先になる——その境目の高さを求めるのが a03 である。
(1) (2) (3) で先に倒れる
別解
垂直抗力の作用点で見るルート(視点の上級編)。 押す力を強めると、床からの垂直抗力の作用点は押す向きへじわじわ移動して重力とのモーメントを打ち消す。作用点が下端の角まで移動しきったときが転倒の臨界である。
作用点が角 P に来たとき、P まわりのモーメントは で 。「N の作用点の移動」という見方は、輪切りにした足裏の圧力分布のイメージで、転倒現象の本質をよく表す。
ポイント
- すべり(力)と倒れ(モーメント)は独立に判定
- 臨界値の小さいほうが先に起こる
- 倒れの支点は進行方向側の下端の角
よくある間違い
- 重力のうでを幅 0.60 のまま使う(半分の 0.30)
- μN と比べる前にどちらか一方しか計算しない
- 倒れの支点を押している側の角にする