物理 / 剛体のつり合い

つり下げたモビールの重さを決める

★★★★ 難関力のモーメント重心多段

問題

軽い棒と糸で、3段のモビールを作る。全体の重さは 分である。

  • いちばん上の棒: 糸でつるした点から左へ のところにおもり 、右へ のところに2段目の棒全体がぶら下がる。
  • 2段目の棒: つるした点から左へ におもり 、右へ に3段目の棒全体がぶら下がる。
  • 3段目の棒: つるした点から左へ におもり 、右へ におもり

すべての棒が水平につり合っているとする。

(1) と、2段目より下の全体の重さを求めよ。

(2) を求めよ。

(3) だけを 重くしてしまった。3段目の棒のつるす点をどこへ動かせば、3段目は水平に戻るか。

(4) (3) のあと、モビール全体はもとどおりつり合うか。

m₁20 cm10 cmm₂5.015 cmm₄m₅2.04.0
3段のモビール。棒と糸は軽く、全体で 90 g 分の重さがある
ヒントを見る

下の段の棒とおもりをひとまとめにすると、上の段からは何に見えるか。各段のつり合いは、重さと腕のどんな関係か。

解答・解説

方針

各段の棒では、ぶら下がっているものの重さ × 腕がつり合う。下の段の棒全体は、上の段から見れば「1つのおもり」として扱える。上から順に、逆比で重さを分けていけばよい。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 段が3つもあると複雑に見えるが、仕掛けは1つしかない。下の段のかたまりは、上の段から見れば1つのおもり である。

その「1つのおもり」の重さは、下にぶら下がっているもの全部の合計で、ぶら下がる位置はつるした糸の点である。こう見れば、各段はただの「棒の両側におもりが1つずつ」というつり合いになる。

上の段から順に、全体の重さを逆比で2つに分けていけば、すべての重さが決まる。分けるときの比は、腕の逆比 である。

① いちばん上の段。 左の腕 、右の腕 である。つり合いの条件は

左右の重さの比は腕の逆比、つまり である。全体が だから

重要棒の両側の重さの比は **腕の逆比** 。下の段はまとめて1つのおもりとみなせる

② 2段目と3段目。 2段目の棒には、左に 、右に3段目全体がぶら下がる。腕は だから、重さの比は である。合計 を分けて

3段目は腕が だから、重さの比は である。合計 を分けて

全部足すと で、確かに合っている。

30 g60 g45 g15 g10 g5 g上から逆比で分けていく
青は「下のかたまりをまとめた重さ」。各段で腕の逆比に分けると、すべてのおもりが決まる

を重くしたとき。 になると、3段目は 同じ重さ になる。同じ重さなら腕も同じでなければならない。

棒の長さは のままだから、つるす点を 左右 ずつの中央 へ動かせばよい。もとの位置から右へ 動かすことになる。

④ 全体は戻るか。 戻らない。3段目全体の重さが から に増えているからである。

2段目のつり合いを確かめると

右のほうが大きく、2段目は右へ傾いてしまう。2段目のつるす点も動かさなければならない。

さらに、2段目より下の合計も から に増えるので、いちばん上の段も釣り合わなくなる。1か所を変えると、その上のすべての段に波及する。

これがモビール作りの難しさである。下から順に組み立てていくのが定石なのは、この波及を1回で押さえるためである。

まとめ 多段の問題は「下のかたまりを1つのおもりに置きかえる」ことで、同じ形のつり合いのくり返しに化ける。下から上へまとめ、上から下へ分ける。 どちらの向きにも読めるようにしておくと速い。

発展 — 一歩先へ。 各段のつるす点は、その下にぶら下がっている全体の 重心の真上 にある。もし重心の真上でなければ、その段は必ず回り出してしまうからである。

だから完成したモビールは、どの糸を切り離して1つ取り出しても、その部分の重心が糸の延長線上にある。全体の重心も、いちばん上の糸の延長線上にある。 複雑な形をしていても、つり合っているという事実だけから重心の位置が読める。

(1) 、2段目より下は (2) (3) 左右の腕が等しくなる位置(両側 )へ動かす (4) 戻らない。3段目全体が になったので2段目のつり合いが崩れ、上の段まで直す必要がある

別解

下から積み上げるルート。 上から分けるかわりに、下の段から順に決めていくこともできる。実際にモビールを作るときはこの向きになる。

いちばん下の段から始める。腕が なので、 である。 とおくと 、3段目の合計は になる。

2段目は腕が だから、 である。3段目が なので

いちばん上は腕が なので、 である。

全体が だから である。ここから

本文と同じ値が出た。

この解き方の利点は、全体の重さが分からなくても比だけで組み上がる ことである。最後に1つの実測値(ここでは全体の )を入れれば、すべてが決まる。未知数を1つ置いて最後に決める、という代数の定石が、そのまま工作の手順になっている。

ポイント

  • 下の段のかたまりは、上の段から見れば1つのおもり。重さは合計、位置はつるした点
  • 棒の両側の重さの比は腕の逆比。全体を逆比で分けていけば各段が決まる
  • 各段のつるす点は、その下全体の重心の真上にある

よくある間違い

  • 下の段の棒の重さを、左右のおもりの片方だけと考えてしまう。上から見れば下の段は合計の重さでぶら下がる
  • 重さの比を腕の比と同じにしてしまう。つり合うのは「重さ × 腕」なので逆比
  • 1か所を直せば全体が直ると考えてしまう。下の段の合計が変われば、上の段のつり合いも崩れる