物理 / 剛体のつり合い

押す高さで変わる: すべるか倒れるか

★★★ 応用転倒摩擦

問題

、重さ の一様な直方体が水平な床に置かれている。床との静止摩擦係数は である。床から高さ の点に水平な力を加えて徐々に強くしていく。(1) すべり出すときの力の大きさを求めよ。(2) 高さ のとき、(下端の角のまわりに)倒れ始める力の大きさを の式で表せ。(3) 「先にすべる」か「先に倒れる」かの境目となる高さ を求めよ。

F100 Nh幅 0.40 mP
高さ h を変えながら水平に押す。μ=0.25
ヒントを見る

すべりの限界は押す高さに関係するだろうか。倒れの限界はどうか。それぞれの限界の F を出すと、片方は定数、片方は h の関数になる。グラフを思い浮かべて交点を探そう。

解答・解説

方針

すべりの臨界は F=μW=25 N(h によらない)。倒れの臨界は F×h=W×0.20 で F=20/h(h が高いほど小さい)。2 つが等しくなる h が境目。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 s08 では押す高さが固定されていたが、今度は高さ が変数。すべりの臨界は によらず一定、倒れの臨界は が高いほど小さくなる。この 2 つの限界曲線の交点が「運命の分かれ目」になる。

① すべりの臨界。 だから

② 倒れの臨界。 下端の角まわりで、 のうでは 、重力のうでは幅の半分

③ 境目の高さ。 2 つの臨界が等しいとき

で押せば先にすべり( より大きい)、 で押せば先に倒れる。

h [m]F [N]Oすべり 25 N倒れ 20/hh_c=0.80
2 つの臨界の交点が境目。低い h ではすべり、高い h では倒れが先

まとめ 家具を動かすとき「低い位置を押せ」と言われるのは、 を大きく保って転倒モードを封じるためである。1 つの物体に 2 つの破れ方があり、パラメータで切り替わる——この構造の見抜きが応用問題の core になる。

(1) (2) (3)

別解

比の形で一般化するルート。 臨界の等式 から が消えて

境目は重さによらず、幅と摩擦係数だけで決まる。 が小さい(つるつる)ほど が高くなり、どこを押してもすべりやすい——式の依存性から物理を読み取る練習として最適の 1 行である。

ポイント

  • すべり臨界は一定、倒れ臨界は 20/h
  • 交点 h_c=b/(2μ)
  • 低く押せばすべり、高く押せば倒れる

よくある間違い

  • 倒れのうでを幅 0.40 のまま使う
  • h_c の式で 2 を落として 1.6 m とする
  • 「すべる=倒れない」と排他的に考えて条件比較をしない