物理 / 原子
ウラン鉱石の中のラジウム
問題
ウラン (半減期 年)は、いくつかの崩壊を経てラジウム (半減期 年)になり、ラジウムはさらに崩壊していく。
地中で長い時間が経ったウラン鉱石では、途中の核種の量が変化しなくなり、一定に保たれる。この状態を放射平衡という。
崩壊定数 と半減期 の間には の関係があり、 秒あたりの崩壊数は で表される。アボガドロ定数を とする。
(1) 量が変化しない条件を、ウランとラジウムの崩壊定数と個数で表せ。
(2) ラジウムとウランの原子数の比 を、半減期で表せ。値も求めよ。
(3) ウラン (原子量 )に含まれるウランの原子数を求めよ。
(4) そのウランと放射平衡にあるラジウム()の質量を mg 単位で求めよ。
ヒントを見る
ラジウムは何によって増え、何によって減るか。一定に保たれるとは、どういう釣り合いか。
解答・解説
方針
「量が変わらない」とは「できる速さと壊れる速さが等しい」ということである。式にすると崩壊定数と個数の積が等しい。半減期に直すと、個数の比がそのまま半減期の比になる。あとは個数と質量を行き来するだけである。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「量が一定に保たれる」という言葉を、そのまま式に翻訳する。
ラジウムはウラン(の系列)から供給され、自分自身も崩壊して減る。量が変わらないなら、 秒あたりの「増える数」と「減る数」が等しいはずである。
崩壊数は と与えられているので、この釣り合いは と書ける。あとは半減期に直すだけである。
① 釣り合いの条件。 ウランが崩壊する数だけラジウムが供給され、ラジウムが崩壊する数だけ失われる。
② 個数の比。 を代入すると、 が両辺で約分される。
半減期の短いものほど少ししか存在できない。すぐ壊れてしまうからである。
③ ウランの原子数。
④ ラジウムの質量。
ウラン に対してラジウムは である。キュリー夫妻がラジウムを取り出すのに何トンもの鉱石を処理した理由が、この数字に現れている。
まとめ 放射平衡の条件は「崩壊数が等しい」であって「個数が等しい」ではない。個数の比は半減期の比になる。
発展 — 一歩先へ。 ② の結果は「短命な核種ほど少ない」ことを示すが、逆に読むと「鉱石の中の比を測れば半減期の比が分かる」ということでもある。
実際、ラジウムの半減期は、ウラン鉱石中の存在比と、ウランの半減期から求められた。直接 年待つことはできないので、平衡の関係が測定の手段になっている。
また、この関係は年代測定の前提でもある。閉じた系で十分な時間が経っていれば、途中の核種は平衡にあるとみなせるので、親と最終生成物(鉛)の比だけを見ればよい。放射平衡は、地球の年齢を測る土台になっている。
、、ウランは 個、ラジウムは約
別解
時間変化を追って平衡に近づくのを見るルート。 ① の条件は「そうなっている」と仮定したが、なぜそこへ落ち着くのかを見ておくと納得できる。
ラジウムの個数の変化は、 の間に
である。第 項は供給、第 項は自分の崩壊である。
はじめラジウムが なら、第 項も なので は増える。増えるにつれて第 項が大きくなり、増え方が鈍る。そして が に追いついたところで増加が止まる。
ウランの半減期は桁違いに長いので、この間 はほとんど変わらない。したがって は、ばねが伸びきるように一定値へ近づいていく。
近づく速さを決めるのは、ラジウム自身の半減期である。 年で平衡値の半分、 年( 回分)で に達する。地質学的な時間から見れば一瞬で、だから鉱石は必ず平衡状態にある。
「なぜその状態に落ち着くのか」を追っておくと、平衡の式を丸暗記せずに済む。
ポイント
- 放射平衡の条件は λ1N1=λ2N2(崩壊数が等しい)
- 個数の比は半減期の比 N2/N1=T2/T1
- 半減期の短い核種ほど、存在できる量は少ない
- 平衡に達する時間は、短いほうの半減期で決まる
よくある間違い
- 平衡を「個数が等しい」と考える(等しいのは 1 秒あたりの崩壊数)
- 半減期の比を逆にとる(短いほうが少ない)
- 原子数と質量の換算でモル質量を取り違える(ラジウムは 226)