物理 / 原子
太陽はあと何年輝けるか
問題
太陽の中心では、 個の水素の原子核が 個のヘリウムの原子核に変わる反応が起きている。
水素原子の質量を 、ヘリウム原子の質量を 、 に相当するエネルギーを 、 とする。
太陽が出す光の仕事率(光度)を 、太陽の質量を 、、、 年を とする。
(1) この反応 回で放出されるエネルギーを MeV で求めよ。
(2) 太陽は 秒あたり何 kg の質量を失っているか。
(3) 太陽の質量の の水素がこの反応に使えるとして、取り出せるエネルギーの合計を求めよ。
(4) (3) のエネルギーを現在の光度で出し続けるとして、太陽が輝いていられる年数を求めよ。
ヒントを見る
反応の前後で、質量の合計はどう変わるか。 秒に出るエネルギーと、失う質量はどう結びつくか。
解答・解説
方針
まず反応 回の質量欠損を求め、 を掛けてエネルギーに直す。失う質量は を逆に使う。使える水素の個数を数え、 個で 回の反応が起きるとして総エネルギーを出し、光度で割れば寿命になる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 太陽が燃えているのは化学反応ではない。石炭を燃やす程度のエネルギーでは、とても 億年も輝き続けられない。
核融合では、反応の前後で質量がわずかに減る。その減った分が でエネルギーになる。まずは 回の反応で減る質量を数え、それを太陽全体の規模まで積み上げていく。
① 回の反応のエネルギー。 反応前は水素原子 個、反応後はヘリウム原子 個である。
② 秒に失う質量。 出ていくエネルギーの分だけ、質量が減っている。
毎秒 億 kg である。莫大に見えるが、太陽の質量 に比べればごくわずかで、 年間でも ほど、全体の にすぎない。
③ 取り出せる総エネルギー。 使える水素の質量は である。水素原子 個の質量は だから、個数は
個で 回の反応だから、反応の回数は 回である。
④ 寿命。
約 億年である。太陽はすでに 億年ほど輝いているので、残りは 億年ほどという見積もりになる。
まとめ 回の反応の質量欠損(、全体の )という小さな数から出発して、太陽の寿命という桁違いに大きな量まで到達できる。核融合が化学反応と決定的に違うのは、この という効率の高さである。
発展 — 一歩先へ。 化学反応(たとえば燃焼)で取り出せるエネルギーは、原子 個あたり数 eV である。核融合は 回あたり だから、 万倍以上の開きがある。
もし太陽が石炭でできていて燃えているとしたら、寿命は 万年ほどにしかならない。地質学が示す地球の年齢( 億年)と合わないことは 世紀から問題になっており、核融合の発見でようやく解決した。
「エネルギー源が何か」という問いに、物理が桁で答えを出した例である。
、、、約 年(百億年)
別解
質量の減り方だけで寿命を出すルート。 反応の回数を数えなくても、寿命は出せる。
核融合では、反応にあずかる質量のうち がエネルギーに変わる。つまり使える水素の質量を とすると
③ と同じ値になる。個数を数える手間が要らない。
さらに ② と組み合わせると、寿命はもっと直接に出せる。太陽は毎秒 の質量をエネルギーに変えている。使える質量のうちエネルギーになるのは だから
「エネルギーに変わる質量の総量 ÷ 毎秒変わる質量」という形で、 すら使わずに寿命が出る。効率 という数を覚えておくと、核融合の見積もりはたいてい暗算でできる。
ポイント
- 4H → He の質量欠損 0.0286 u が 26.6 MeV になる
- 失う質量は E=mc² を逆に使って毎秒 4.2×10⁹ kg
- 使える水素の 0.71 % がエネルギーに変わる
- 寿命は約 110 億年(すでに 46 億年経過)
よくある間違い
- 質量欠損を「ヘリウム 1 個と水素 1 個の差」としてしまう(水素は 4 個)
- MeV から J への換算を忘れる(1 MeV=1.6×10⁻¹³ J)
- 太陽の全質量が反応に使えるとしてしまう(中心部の一部だけ)