物理 / 原子

コンプトン効果の波長変化

★★★ 応用コンプトン効果光子

問題

X 線を静止した電子に当てて散乱させる。散乱角 の方向へ散乱された X 線の波長の伸び を、コンプトンの式 で求めよ。電子の質量 とする。また、この波長変化が入射波長によらないことを述べよ。

ヒントを見る

式に θ=90°(cos=0)を代入すると Δλ=h/mc——電子の質量と光速だけで決まる定数(コンプトン波長)。入射 X 線の波長 λ は式に出てこないので、波長の『伸び』は入射波長によらない。

解答・解説

方針

コンプトンの式に θ=90° を代入。Δλ=h/mc(コンプトン波長)。散乱角のみで決まり入射波長に依存しない。光子の運動量保存・エネルギー保存の帰結。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 コンプトン効果(標準 s03)の定量版。式に を代入するだけだが、「波長の伸びが入射波長によらない」という特徴に注目する。

① 波長の伸び。 より

② 入射波長によらない理由。 コンプトンの式 には入射波長 が現れない——波長の伸び 散乱角 だけで決まる。(コンプトン波長)は電子の質量と光速で決まる普遍定数である。

まとめ (電子のコンプトン波長)は、光子と電子の衝突での「波長の物差し」——散乱角 でこの分だけ伸び、(真後ろ)で最大 伸びる。この式は光子を運動量 の粒子とみなし、電子との衝突で運動量保存・エネルギー保存を立てて導かれる——光電効果(光子のエネルギー)に続き、光子が運動量を持つ粒子であることの決定的証拠。「 が入射波長によらず散乱角だけで決まる」という予言が実験と一致したことが、光子説の勝利を確定させた。波と粒子の二重性——物理の到達点の 1 つである。

は散乱角だけで決まり、入射波長にはよらない(コンプトン波長 が普遍定数)

別解

相対的な効果の大きさを見るルート。 可視光()では ——伸びが小さすぎて観測できない。X 線()なら と顕著——だからコンプトン効果は X 線で観測される。

は絶対値では一定だが、相対的には短波長(X 線)ほど効く」——なぜコンプトン効果が X 線・γ線の現象なのかが分かる。波長の物差し に対して入射波長が小さいほど、効果が目立つ。

ポイント

  • Δλ=(h/mc)(1−cosθ)
  • 散乱角だけで決まる(入射波長によらない)
  • 光子の運動量保存の帰結

よくある間違い

  • 入射波長を式に入れようとする
  • θ=90° で cos90°=1 とする
  • h/mc の分母の計算ミス