物理 / 円運動と万有引力

軌道を上げる遷移軌道(ホーマン遷移)

最難関編万有引力エネルギー保存円運動

問題

地球(中心からの距離 で万有引力がはたらく。)のまわりの、半径 の円軌道を回っている宇宙船を、半径 の円軌道へ移したい。そのために、まず短時間の噴射で速さを変えて、近い側の距離が ・遠い側の距離が の楕円軌道(遷移軌道)に乗せ、遠い側に着いたところで再び噴射して半径 の円軌道に乗せる。

(1) 半径 、半径 の円軌道の速さ をそれぞれ で表せ。

(2) 遷移軌道の近い側・遠い側での速さ を求めよ。

(3) 1 回目・2 回目の噴射で必要な速さの変化 を求めよ。

地球半径 R半径 4R遷移楕円
半径 R の円軌道から半径 4R の円軌道へ、遷移楕円で移る
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3種類の軌道が登場する:内側の円、外側の円、そして両者をつなぐ楕円。円軌道の速さは「向心力=万有引力」。楕円の両端は前問と同じく面積速度一定+エネルギー保存で出す。噴射で必要な速さの変化は、同じ場所での「楕円の速さ」と「円の速さ」の差(向きは同じなので引き算)。

解答・解説

方針

円軌道の速さは「向心力=万有引力」で出す。遷移楕円の両端の速さは、近点・遠点で面積速度一定とエネルギー保存の連立(またはヴィス・ヴィヴァ)で出す。噴射量は各点での速さの差。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 登場する軌道は3つ。内側の円(半径 )、外側の円(半径 )、それをつなぐ 遷移楕円(近 ・遠 )。

円軌道の速さは「向心力=万有引力」で即決。楕円の両端は、前問と同じく 面積速度一定+エネルギー保存(まとめればヴィス・ヴィヴァの式)で出す。

噴射で必要な速さの変化は、同じ地点での「楕円の速さ」と「円の速さ」の差。向きは軌道接線方向でそろっているので、単純な引き算でよい。

① 円軌道の速さ。 円軌道は「向心力=万有引力」。

② 遷移楕円の両端の速さ。 長半径 。ヴィス・ヴィヴァの式 を使う。

近い側 :

遠い側 :

(面積速度一定 も満たしていることが確かめられる。)

③ 噴射量。 1 回目は内側の円→楕円の近点、同じ地点なので

2 回目は楕円の遠点→外側の円、

どちらも正なので、2 回とも加速の噴射である。数値では なので

まとめ 軌道を上げるには「加速→楕円で惰性→もう一度加速」の2段。速さは円が「向心力=万有引力」、楕円がヴィス・ヴィヴァで統一的に出せる。遠点では円軌道より遅いので、外側の円に乗るには もう一度加速 が要る点が直感に反して面白い。

別解

エネルギーと角運動量の連立に戻すルート。 ヴィス・ヴィヴァを暗記していなくても、楕円の両端 について

を連立すれば、 が同じく得られる。ヴィス・ヴィヴァはこの連立を一般化して1本にまとめた式にすぎない。試験では連立から出す方が安全なこともある。

ポイント

  • 円軌道は向心力=万有引力で v=√(GM/r)
  • 遷移楕円の両端はヴィス・ヴィヴァ(またはE+面積速度の連立)
  • 噴射量は同じ地点での楕円と円の速さの差、2回とも加速

よくある間違い

  • 遠点では外側の円より速いと思い、2回目を減速にしてしまう
  • 長半径を a=4R などと誤る(a=(R+4R)/2=2.5R)
  • 噴射量をエネルギーの差で出そうとする(速さの差でよい、向きが同じ)