物理 / 円運動と万有引力
中心を通らないトンネルでも単振動
問題
密度が一様な地球(半径 、地表での重力加速度の大きさ )を考える。地球内部で中心から距離 の位置にある物体には、中心に向かって大きさ の重力がはたらくことが知られている。
いま、地球の中心を通らず、中心からの距離が の直線トンネルをまっすぐ掘る(トンネルはなめらかで、空気抵抗はない)。トンネルの中央から測った位置を として、物体を静かに放す。
(1) 物体にはたらく重力の、トンネルに沿う方向の成分を で表せ。
(2) 物体の運動が単振動であることを示し、その周期 を求めよ。
(3) 周期はトンネルの位置(距離 )によるか、答えよ。
ヒントを見る
中心を向く重力を、トンネルに「平行」と「垂直」に分解する。垂直成分はトンネルの壁が受け止めるので運動には効かない。平行成分だけを x で表すと、距離 b がうまく消えて「変位に比例して中央へ引き戻す力」の形になる。相似(または三角比)で成分を出すのがカギ。
解答・解説
方針
重力は中心を向く。それをトンネルに平行な成分と垂直な成分に分ける。平行成分だけが運動を決め、それが -(g/R)x の形(復元力)になることを見抜く。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 中心を通るトンネルなら重力がそのまま復元力になり単振動——これは有名。問題は 中心を通らない ときも同じかどうかである。
重力は必ず中心を向く。だからトンネルに対して斜めにはたらく。そこで重力を トンネルに平行な成分と垂直な成分に分解 する。垂直成分は壁が受け止めるので運動には効かない。
運動を決めるのは平行成分だけ。これを で表したとき、距離 が消えて の形になれば、 によらず単振動だと分かる。
① 力のトンネル方向成分。 物体の位置を、トンネルの中央(中心に最も近い点)から測って とする。中心からの距離は三平方の定理で
重力の大きさは で中心向き。トンネル方向の成分は、この力に (方向余弦)を掛けたもの。
向きは中央()に引き戻す向きである。ここで がきれいに約分され、 が消えたことが決定的。
② 単振動の証明と周期。 中央向きを負にとって運動方程式を書くと
したがって単振動であり、
③ 周期は によるか。 復元力の係数 に が入っていないので、周期は に よらない。中心を通るトンネル()でも、少しずれたトンネルでも、片道の時間はどこでも同じ約 42 分になる。
まとめ 「中心を向く重力を、進む方向へ射影する」と距離 が消え、どんな弦トンネルでも同じ周期の単振動になる。地球上のどの2点を結んでも、重力だけで滑れば所要時間が同じ、という驚きの結論である。
(1) (中央向き) (2) (3) によらない
別解
中央に最も近い点=振動中心、と見抜くルート。 トンネル上で中心に最も近い点(中央)では、重力はトンネルに垂直になり、平行成分が 0。ここが「力のつり合う点=振動中心」である。
中心から距離 の点での平行成分は、幾何的に「中央からの距離 」に等しい(相似な直角三角形で、)。つまり平行成分は最初から で、 を計算するまでもない。振動中心と復元力の形さえ見抜けば、周期が によらないことは即座に分かる。
ポイント
- 中心向きの重力をトンネルに平行・垂直へ分解、平行成分だけが効く
- 平行成分=(g/R)r・(x/r)=(g/R)x で r と b が消える
- ω²=g/R、T=2π√(R/g) は b によらず一定(片道約42分)
よくある間違い
- 重力をそのまま復元力にしてしまう(斜めなので平行成分だけ)
- 中心からの距離 r を復元力に残し、b が消えることに気づかない
- 垂直成分(壁が支える分)を運動方程式に入れてしまう