物理 / 円運動と万有引力
正三角形を保って回る3つの星
問題
質量がどれも の3つの星が、一辺 の正三角形の頂点にある。3つの星は正三角形の形と大きさを保ったまま、共通の中心のまわりを同じ角速度で等速円運動している。万有引力定数を とする。
(1) 1つの星が他の2つから受ける万有引力の合力について、大きさと向きを求めよ。
(2) 各星が描く円の半径を求めよ。
(3) 角速度 と周期 を、、、 で表せ。
(4) 、、 のとき、 を求めよ。また1年を として何年になるか答えよ。
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大きさの等しい2つの力を合成すると、向きはなす角の二等分線になる。その二等分線が図のどこを通るかを見れば、円の中心がどこかも同時に分かる。半径は辺の長さそのものではない。
解答・解説
方針
円運動の問題はいつも「何が向心力になるか」と「どんな円を描くか」の2本立てである。3体でもこれは変わらない。違うのは向心力が1本の力ではなく2本の合力になる点だけ。大きさの等しい2力の合成と、正三角形の重心までの距離、この2つの道具で片が付く。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 円運動の問題はいつも同じ2本立てである。何が向心力になるか と どんな円を描くか。3つの星でもこれは変わらない。
違うのは、向心力が1本の力ではなく2本の合力になる点だけである。2つの引力は大きさが等しく、なす角は正三角形の内角 。大きさの等しい2力の合成は、なす角の二等分線を向く。
そして対称性から、回転の中心は正三角形の重心である。重心までの距離は辺の長さから幾何で出る。この2つが決まれば、あとは運動方程式1本で終わる。
① 合力。 1つの星に注目する。他の2つはどちらも距離 にあるので、受ける力の大きさはどちらも
2力のなす角は である。
したがって
の二等分線は、頂点から向かい合う辺の中点へ向かう線、つまり 重心を通る。合力は重心を向いており、向心力として申し分ない。
② 円の半径。 回転の中心は、対称性から正三角形の重心である。頂点から重心までの距離は、正三角形の外接円の半径にあたる。一辺 の正三角形では
(頂点から向かい合う辺の中点までの長さ の 倍として出る。)
③ 運動方程式。
両辺の を1つ払い、 を移すと
が に比例する形になっている。ケプラーの第3法則と同じ姿である。
④ 数値。
1年で割ると約 年。太陽くらいの重さの星3つが、地球と太陽の距離の2倍を一辺として、1年半ほどで一周する計算になる。
まとめ 3体でも手順は変わらない。合力を作る、半径を出す、運動方程式を立てる。等しい2力の合成 と、正三角形の重心までの距離 の2つが、この問題の道具である。
発展 — 一歩先へ。 ③の結果を の形に書き直すと、 となる。「重心に質量 の見えない天体があって、そのまわりを回っている」のと同じ運動だということである。多体の問題を1体の問題に読み替えるこの考えは、天体力学でよく使われる。
なお、この正三角形の配置は3体問題の厳密解の1つ(ラグランジュの解)である。3つの質量が等しくなくても正三角形を保つ解が存在し、太陽と木星の系ではその位置に多数の小惑星(トロヤ群)が実際に集まっている。
(1) で、正三角形の重心を向く (2) (3) 、 (4) 約 で、約 年
別解
座標を置いて成分で押すルート。 幾何の見通しに頼らず、成分計算でも同じ答えが出る。重心を原点にとり、3つの星を
に置く。どれも原点から の距離にあり、互いの距離が であることを確かめておく。
第1の星が他の2つから受ける力を成分で足す。相手の2つは について上下対称なので、 成分は打ち消し合って0になる。 成分だけを見ると、距離はどちらも 、 方向の余弦は
だから
負号は原点(重心)を向くことを表す。①と完全に一致した。
対称性が見えていれば①のほうが速い。しかし配置が対称でない問題では、この成分計算だけがいつでも通用する道になる。どちらの道も持っておくとよい。
ポイント
- 大きさの等しい2力の合成は で、向きは二等分線。 なら
- 正三角形の重心(外接円の中心)までの距離は
- 。 でケプラーの第3法則と同じ形になる
よくある間違い
- 円の半径を辺の長さ としてしまう。回るのは重心のまわりで、半径は である
- 2つの引力を単純に足して としてしまう。向きが 違うのでベクトルで合成し、 倍になる
- 運動方程式の右辺を と書いてしまう。かけるのは円の半径であって辺の長さではない