物理 / 円運動と万有引力

正三角形を保って回る3つの星

★★★★ 難関万有引力等速円運動力の合成

問題

質量がどれも の3つの星が、一辺 の正三角形の頂点にある。3つの星は正三角形の形と大きさを保ったまま、共通の中心のまわりを同じ角速度で等速円運動している。万有引力定数を とする。

(1) 1つの星が他の2つから受ける万有引力の合力について、大きさと向きを求めよ。

(2) 各星が描く円の半径を求めよ。

(3) 角速度 と周期 を、 で表せ。

(4) のとき、 を求めよ。また1年を として何年になるか答えよ。

a質量はどれも m
一辺 a の正三角形の頂点にある3つの星。形を保ったまま共通の中心のまわりを回る
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大きさの等しい2つの力を合成すると、向きはなす角の二等分線になる。その二等分線が図のどこを通るかを見れば、円の中心がどこかも同時に分かる。半径は辺の長さそのものではない。

解答・解説

方針

円運動の問題はいつも「何が向心力になるか」と「どんな円を描くか」の2本立てである。3体でもこれは変わらない。違うのは向心力が1本の力ではなく2本の合力になる点だけ。大きさの等しい2力の合成と、正三角形の重心までの距離、この2つの道具で片が付く。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 円運動の問題はいつも同じ2本立てである。何が向心力になるかどんな円を描くか。3つの星でもこれは変わらない。

違うのは、向心力が1本の力ではなく2本の合力になる点だけである。2つの引力は大きさが等しく、なす角は正三角形の内角 。大きさの等しい2力の合成は、なす角の二等分線を向く。

そして対称性から、回転の中心は正三角形の重心である。重心までの距離は辺の長さから幾何で出る。この2つが決まれば、あとは運動方程式1本で終わる。

① 合力。 1つの星に注目する。他の2つはどちらも距離 にあるので、受ける力の大きさはどちらも

2力のなす角は である。

G合力30°a/√3
ひとつの星が受ける2つの引力(赤)と、その合力(青)。合力は重心 G を向き、大きさは √3 Gm²/a²。円の半径は a/√3
公式大きさの等しい2力 がなす角 で合わさるとき、合力の大きさは で、向きは二等分線

したがって

の二等分線は、頂点から向かい合う辺の中点へ向かう線、つまり 重心を通る。合力は重心を向いており、向心力として申し分ない。

② 円の半径。 回転の中心は、対称性から正三角形の重心である。頂点から重心までの距離は、正三角形の外接円の半径にあたる。一辺 の正三角形では

(頂点から向かい合う辺の中点までの長さ 倍として出る。)

③ 運動方程式。

両辺の を1つ払い、 を移すと

に比例する形になっている。ケプラーの第3法則と同じ姿である。

④ 数値。

1年で割ると約 年。太陽くらいの重さの星3つが、地球と太陽の距離の2倍を一辺として、1年半ほどで一周する計算になる。

まとめ 3体でも手順は変わらない。合力を作る、半径を出す、運動方程式を立てる。等しい2力の合成 と、正三角形の重心までの距離 の2つが、この問題の道具である。

発展 — 一歩先へ。 ③の結果を の形に書き直すと、 となる。「重心に質量 の見えない天体があって、そのまわりを回っている」のと同じ運動だということである。多体の問題を1体の問題に読み替えるこの考えは、天体力学でよく使われる。

なお、この正三角形の配置は3体問題の厳密解の1つ(ラグランジュの解)である。3つの質量が等しくなくても正三角形を保つ解が存在し、太陽と木星の系ではその位置に多数の小惑星(トロヤ群)が実際に集まっている。

(1) で、正三角形の重心を向く (2) (3) (4) 約 で、約

別解

座標を置いて成分で押すルート。 幾何の見通しに頼らず、成分計算でも同じ答えが出る。重心を原点にとり、3つの星を

に置く。どれも原点から の距離にあり、互いの距離が であることを確かめておく。

第1の星が他の2つから受ける力を成分で足す。相手の2つは について上下対称なので、 成分は打ち消し合って0になる。 成分だけを見ると、距離はどちらも 方向の余弦は

だから

負号は原点(重心)を向くことを表す。①と完全に一致した。

対称性が見えていれば①のほうが速い。しかし配置が対称でない問題では、この成分計算だけがいつでも通用する道になる。どちらの道も持っておくとよい。

ポイント

  • 大きさの等しい2力の合成は で、向きは二等分線。 なら
  • 正三角形の重心(外接円の中心)までの距離は
  • でケプラーの第3法則と同じ形になる

よくある間違い

  • 円の半径を辺の長さ としてしまう。回るのは重心のまわりで、半径は である
  • 2つの引力を単純に足して としてしまう。向きが 違うのでベクトルで合成し、 倍になる
  • 運動方程式の右辺を と書いてしまう。かけるのは円の半径であって辺の長さではない