物理 / 円運動と万有引力
糸・棒・管で一周できる条件はどう違うか
問題
質量 の小球を最下点から水平に打ち出し、鉛直面内で一周させたい。重力加速度の大きさを とし、摩擦と空気抵抗は無視する。次の3つの場合を考える。
(A) 長さ の軽い糸で、天井の点につるす
(B) 長さ の軽くて丈夫な棒で、同じ点に固定する
(C) 半径 のなめらかな円形の管(内側と外側の両方に壁がある溝)の中を通す
(1) (A)(B)(C) それぞれについて、一周するために最下点で必要な最小の速さを求めよ。
(2) (A) で最下点の速さを (約 )としたとき、糸がたるむのは最下点から測ってどの高さか。またそのときの小球の速さを求めよ。
(3) (C) で最下点の速さを としたとき、最高点で管が小球に及ぼす力を求めよ。
(4) (C) で最下点の速さを としたとき、最高点で管が小球に及ぼす力の大きさと向きを求めよ。
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最高点だけを取り出して、必要な向心力と重力の大小を比べてみる。重力が足りないのか、多すぎるのか。支えがどちら向きの力を出さなければならないかが決まり、それを出せるかどうかで3つの場合が分かれる。
解答・解説
方針
3つの違いは「支えが何を出せるか」の一点に尽きる。糸は引くことしかできないので、張力が0以上という条件が余分につく。棒と管は押すことも引くこともできるので、最高点まで届きさえすればよい。エネルギー保存は3つとも共通なので、差はこの条件だけから出る。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 3つの違いは「支えが何を出せるか」の一点に尽きる。
糸は引くことしかできない。だから張力は0以上でなければならず、最高点でも をこえる向心力を必要とするだけの速さが要る。棒は引くことも押すこともできる。管は内壁と外壁の両方があるので、やはり内向きにも外向きにも力を出せる。
つまり (A) だけに「張力が0以上」という条件が余分につき、(B)(C) は最高点まで届けばよい。この差がそのまま答えの差になる。
① 最小の速さ。 エネルギー保存はどの場合も共通である。最下点の速さを 、最高点の速さを とすると、高さの差が だから
(A) 糸のとき。 最高点で張力を とすると、下向き(中心向き)を正として
が要るので 。したがって
(B)(C) 棒や管のとき。 支えが押す力も出せるので、最高点での条件は だけでよい。
必要な速さの比は で、糸のほうが厳しい。
② 糸がたるむ位置。 最下点の速さが では に届かないので、途中で張力が0になる。円の中心から見て鉛直上向きから角 の位置を考える。最下点からの高さは だから
張力が0になるのは、重力の中心向き成分だけで向心力がまかなわれるときである。
高さは
そのときの速さは
ここから先、小球は糸から離れて放物運動に移る。
③ 管で最下点の速さが のとき。 最高点の速さは
必要な向心力は
これは重力 とちょうど等しい。重力だけでぴったり足りるので、管が及ぼす力は 0 である。この速さは、①で求めた糸の最小条件そのものになっている。
④ 管で最下点の速さが のとき。
必要な向心力は で、重力 より小さい。重力が 効きすぎている から、余りを打ち消す外向きの力が要る。
管が及ぼす力を (中心向きを正)として
負なので向きは外向き、大きさは 。最高点では球が内側の壁の上に乗っている形になり、内側の壁が球を外向き(この位置では上向き)に押している。糸ではこの力を出せないので、同じ速さでは糸はたるんでしまう。
まとめ 支えが「引けるだけ」か「押しも引きもできる」かで、一周の条件が変わる。糸は最高点で 、棒や管は届きさえすればよい。管の中では、速さに応じて内側の壁と外側の壁が役割を交代する。
発展 — 一歩先へ。 (C) で最下点の速さを から へ上げていくと、最高点で球を支える壁が内側から外側へ入れかわる。ちょうど のときだけ、どちらの壁にも触れずに重力だけで曲がる。
ジェットコースターのループでは、車輪がレールを内側と外側からはさむ構造になっていて、まさにこの (C) と同じ状況をつくっている。頂上で速度が落ちても車両が落下しないのは、そのためである。
(1) (A) 、(B)(C) (2) 高さ 、速さ (3) (4) で、内側の壁が外向き(最高点では上向き)に押す
別解
必要な向心力と重力の綱引きとして見るルート。 式を立てる前に、最高点だけを取り出して2つの量を比べる方法がある。最高点で必要な向心力は 、そこで無料でもらえるのは重力 。この大小だけで、支えが何をすべきかが決まる。
- … 重力では足りない。不足分を 内向き に補う必要がある。糸なら張力、管なら外側の壁が担う
- … ちょうど。支えは何もしなくてよい
- … 重力が多すぎる。余りを 外向き に打ち消す必要がある。糸には無理で、棒や管ならできる
糸が引くことしかできない以上、3番目の状況を許せない。これが (A) だけ条件の厳しい理由である。
この見方だと ③ は2番目、④ は3番目とすぐに分類でき、計算は最後の引き算だけで済む。①の という条件も、「1番目か2番目でなければならない」と言い換えただけだと分かる。場合分けの根拠が1本の大小比較に集約されるので、式の意味を見失いにくい。
ポイント
- 支えが押せるか引けるかで条件が変わる。糸は 、棒と管は
- 糸がたるむのは の点。
- 管では と の大小で、押す壁が内側と外側で入れかわる
よくある間違い
- 最高点で速さが0でよい、を糸にも当てはめてしまう。糸は押せないので が要る
- 最高点で必要な向心力を と混同する。向心力は であって、重力はそれを担う候補の1つにすぎない
- 管の中の力を大きさだけ答えて向きを決めない。速さによって内側の壁と外側の壁が入れかわる