物理 / 円運動と万有引力

糸・棒・管で一周できる条件はどう違うか

★★★★ 難関鉛直面内の円運動エネルギー保存束縛

問題

質量 の小球を最下点から水平に打ち出し、鉛直面内で一周させたい。重力加速度の大きさを とし、摩擦と空気抵抗は無視する。次の3つの場合を考える。

(A) 長さ の軽い糸で、天井の点につるす

(B) 長さ の軽くて丈夫な棒で、同じ点に固定する

(C) 半径 のなめらかな円形の管(内側と外側の両方に壁がある溝)の中を通す

(1) (A)(B)(C) それぞれについて、一周するために最下点で必要な最小の速さを求めよ。

(2) (A) で最下点の速さを (約 )としたとき、糸がたるむのは最下点から測ってどの高さか。またそのときの小球の速さを求めよ。

(3) (C) で最下点の速さを としたとき、最高点で管が小球に及ぼす力を求めよ。

(4) (C) で最下点の速さを としたとき、最高点で管が小球に及ぼす力の大きさと向きを求めよ。

A 糸v0B 棒C 管
同じ半径 L で、支えが糸(A)・棒(B)・管(C)の3つの場合。最下点から水平に速さ v0 で打ち出す
ヒントを見る

最高点だけを取り出して、必要な向心力と重力の大小を比べてみる。重力が足りないのか、多すぎるのか。支えがどちら向きの力を出さなければならないかが決まり、それを出せるかどうかで3つの場合が分かれる。

解答・解説

方針

3つの違いは「支えが何を出せるか」の一点に尽きる。糸は引くことしかできないので、張力が0以上という条件が余分につく。棒と管は押すことも引くこともできるので、最高点まで届きさえすればよい。エネルギー保存は3つとも共通なので、差はこの条件だけから出る。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 3つの違いは「支えが何を出せるか」の一点に尽きる。

糸は引くことしかできない。だから張力は0以上でなければならず、最高点でも をこえる向心力を必要とするだけの速さが要る。棒は引くことも押すこともできる。管は内壁と外壁の両方があるので、やはり内向きにも外向きにも力を出せる。

つまり (A) だけに「張力が0以上」という条件が余分につき、(B)(C) は最高点まで届けばよい。この差がそのまま答えの差になる。

① 最小の速さ。 エネルギー保存はどの場合も共通である。最下点の速さを 、最高点の速さを とすると、高さの差が だから

(A) 糸のとき。 最高点で張力を とすると、下向き(中心向き)を正として

が要るので 。したがって

重要糸の鉛直円運動は「最高点で 」が急所。最下点では になる

(B)(C) 棒や管のとき。 支えが押す力も出せるので、最高点での条件は だけでよい。

必要な速さの比は で、糸のほうが厳しい。

② 糸がたるむ位置。 最下点の速さが では に届かないので、途中で張力が0になる。円の中心から見て鉛直上向きから角 の位置を考える。最下点からの高さは だから

張力が0になるのは、重力の中心向き成分だけで向心力がまかなわれるときである。

Oθここでたるむ最下点4L/3
最下点の速さが √(3gL) のとき、cosθ = 1/3 の位置で糸がたるむ。高さは 4L/3 で、そこから先は放物運動になる

高さは

そのときの速さは

ここから先、小球は糸から離れて放物運動に移る。

③ 管で最下点の速さが のとき。 最高点の速さは

必要な向心力は

これは重力 とちょうど等しい。重力だけでぴったり足りるので、管が及ぼす力は 0 である。この速さは、①で求めた糸の最小条件そのものになっている。

④ 管で最下点の速さが のとき。

必要な向心力は で、重力 より小さい。重力が 効きすぎている から、余りを打ち消す外向きの力が要る。

速いとき外側の壁が押すちょうど壁の力は 0遅いとき内側の壁が押すmg
最高点(円の中心は真下)で必要な向心力 mv²/L と重力 mg の大小によって、支えの役割が決まる。糸は「押す」ができないので右の場合を許せない

管が及ぼす力を (中心向きを正)として

負なので向きは外向き、大きさは 。最高点では球が内側の壁の上に乗っている形になり、内側の壁が球を外向き(この位置では上向き)に押している。糸ではこの力を出せないので、同じ速さでは糸はたるんでしまう。

まとめ 支えが「引けるだけ」か「押しも引きもできる」かで、一周の条件が変わる。糸は最高点で 、棒や管は届きさえすればよい。管の中では、速さに応じて内側の壁と外側の壁が役割を交代する。

発展 — 一歩先へ。 (C) で最下点の速さを から へ上げていくと、最高点で球を支える壁が内側から外側へ入れかわる。ちょうど のときだけ、どちらの壁にも触れずに重力だけで曲がる。

ジェットコースターのループでは、車輪がレールを内側と外側からはさむ構造になっていて、まさにこの (C) と同じ状況をつくっている。頂上で速度が落ちても車両が落下しないのは、そのためである。

(1) (A) 、(B)(C) (2) 高さ 、速さ (3) (4) で、内側の壁が外向き(最高点では上向き)に押す

別解

必要な向心力と重力の綱引きとして見るルート。 式を立てる前に、最高点だけを取り出して2つの量を比べる方法がある。最高点で必要な向心力は 、そこで無料でもらえるのは重力 。この大小だけで、支えが何をすべきかが決まる。

  • … 重力では足りない。不足分を 内向き に補う必要がある。糸なら張力、管なら外側の壁が担う
  • … ちょうど。支えは何もしなくてよい
  • … 重力が多すぎる。余りを 外向き に打ち消す必要がある。糸には無理で、棒や管ならできる

糸が引くことしかできない以上、3番目の状況を許せない。これが (A) だけ条件の厳しい理由である。

この見方だと ③ は2番目、④ は3番目とすぐに分類でき、計算は最後の引き算だけで済む。①の という条件も、「1番目か2番目でなければならない」と言い換えただけだと分かる。場合分けの根拠が1本の大小比較に集約されるので、式の意味を見失いにくい。

ポイント

  • 支えが押せるか引けるかで条件が変わる。糸は 、棒と管は
  • 糸がたるむのは の点。
  • 管では の大小で、押す壁が内側と外側で入れかわる

よくある間違い

  • 最高点で速さが0でよい、を糸にも当てはめてしまう。糸は押せないので が要る
  • 最高点で必要な向心力を と混同する。向心力は であって、重力はそれを担う候補の1つにすぎない
  • 管の中の力を大きさだけ答えて向きを決めない。速さによって内側の壁と外側の壁が入れかわる