物理 / 円運動と万有引力

自転で重力はどれだけ変わるか

★★★★ 難関遠心力万有引力見かけの重力

問題

地球を半径 の球とし、 時間()で1回自転しているとする。自転を無視したときの重力加速度の大きさを とする。

(1) 自転の角速度を求めよ。

(2) 赤道上の物体が自転のためにする円運動の、向心加速度の大きさを求めよ。また赤道で測られる重力加速度は、 より何 % 小さいか。

(3) 緯度 の地点では、自転による円運動の半径は である。この地点で糸につるしたおもりが、地球の中心を向く方向からどれだけ傾くかを近似式で表せ。また傾きが最大になる緯度と、そのときの角度を求めよ。

(4) 実際に測ると、重力加速度は極で 、赤道で である。この差は自転だけで説明できるか。

(5) 自転が今の何倍の速さになると、赤道上の物体が地面から浮き上がるか。そのときの1日の長さも求めよ。

自転軸赤道PφR cosφ
緯度 φ の地点 P は、自転軸から距離 R cosφ の円を描く
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緯度 の地点が描く円の中心は、地球の中心ではなく自転軸の上にある。そこがこの問題の分かれ目である。遠心力を「鉛直方向」と「それに垂直な方向」に分けたとき、糸を傾けるのはどちらの成分かを考える。

解答・解説

方針

体重計が示す重さは、地球が引く万有引力そのものではない。地面と一緒に自転している以上、私たちは円運動をしており、その向心力にまわされたぶんだけ地面を押す力が減る。赤道では引き算がまっすぐ効き、緯度がつくと円の中心が自転軸に移るので、遠心力の向きがずれて糸が傾く。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 体重計にのって測る重さは、地球が引く万有引力そのものではない。地面と一緒に自転している以上、私たちは円運動をしている。その円運動に要る向心力のぶんだけ、地面を押す力が減る。

そこで「万有引力 = 見かけの重力 + 向心力にまわされたぶん」と分けて考える。まず赤道でこの差を見積もる。

緯度がつくと様子が変わる。円の中心が地球の中心ではなく自転軸の上に移るからだ。すると遠心力は地球の中心を向く方向とずれ、おもりの糸がわずかに傾く。この「向きのずれ」が (3) の主役である。

① 自転の角速度。

② 赤道での大きさ。 向心加速度は

赤道では自転の円の中心が地球の中心と一致するので、万有引力と遠心力はちょうど正反対を向く。測られる重力加速度は

割合にすると

体重 の人で ほど軽くなる計算である。

③ 緯度による傾き。 緯度 の地点は、自転軸から距離 の円を描く。遠心力は 自転軸から遠ざかる向き で、大きさは である。

P遠心力水平成分鉛直成分φ糸の向き中心の向き
緯度 φ での遠心力の分解。鉛直成分は重力を弱め、水平成分がおもりの糸を赤道側へ傾ける(傾きは誇張してある)

これを地球の中心を向く方向(鉛直)と、それに垂直な方向に分けると

糸の傾き は、水平成分と鉛直向きの力の比で決まる。 よりずっと小さいので分母を で近似し、 が小さいことから を使うと

重要 が最大になるのは 、すなわち のとき
O45900.10緯度(度)
糸の傾き δ(度)は sin2φ に比例する。緯度45度で最大の約0.10度(6分角)、赤道と極ではゼロになる

そのとき

度に直すと約 、角度の単位で約6分である。赤道と極では となり、糸は傾かない。

④ 実測と比べる。 実測の差は

自転による差は だから

自転で説明できるのは ほどで、足りない。残りは地球が完全な球ではないことによる。地球は自転のために赤道方向へふくらんでおり、赤道半径は極半径より ほど大きい。中心から遠いぶん万有引力が弱くなり、その効果が加わる。

⑤ 浮き上がる自転。 赤道上の物体が地面から離れるのは、地面が押す力が0になるとき、つまり万有引力だけで円運動がまかなわれるときである。

今の との比は

そのときの1日の長さは

まとめ 測られる重力は「万有引力から遠心力ぶんを引いたもの」。赤道では真正面から引き算になって 、緯度がつくと向きがずれて糸がわずかに傾く。実測との食い違いは、地球が球でないことを教えてくれる。

発展 — 一歩先へ。 ⑤で出た 分は、地表すれすれを回る人工衛星の周期とぴたり同じである。当然といえば当然で、どちらも「万有引力だけで半径 の円運動をする」条件だからだ。自転が17倍になった地球では、赤道の地面そのものが軌道速度に達してしまう。

この という時間は、地球サイズの天体につきまとう基本の時間尺度である。地球を貫くトンネルに物を落としたときの往復時間も、同じ になる。

(1) (2) 、約 (3) で最大 約 (約6分角) (4) 説明できない(自転の寄与は差の約 で、残りは地球が扁平なため) (5) 約 倍、1日 約

別解

遠心力を使わず、ベクトルの引き算で見るルート。 静止した立場のままでも同じ結論が出る。緯度 の地点にあるおもりにはたらくのは、万有引力 (地球の中心向き)と糸の張力 の2つだけである。この合力が向心力、すなわち自転軸へ向かう になる。

つまり張力は「向心力から万有引力を引いた残り」である。糸は張力の向きに垂れるので、中心向きの長いベクトルから、自転軸向きの短いベクトルを引いた向きが糸の向きになる。

長いベクトルから短い斜めのベクトルを引くと、向きは「短いベクトルの横向き成分 ÷ 長いベクトルの大きさ」だけ振れる。横向き成分は 、長いほうは だから、そのまま③の式になる。

この見方だと、赤道()では引くベクトルが真下向きで横成分が0、極()では引くベクトル自体が0、だから両端で傾きが消えて中間で最大になる、という③の結論が図だけで読み取れる。

ポイント

  • 測られる重力は「万有引力 − 自転の遠心力ぶん」。赤道で 、割合で
  • 緯度 での円の半径は 。遠心力の水平成分が糸を 傾ける
  • 極と赤道の実測差は自転だけでは説明できず、地球が扁平であることが残りを担う

よくある間違い

  • 緯度 の地点が描く円の半径を としてしまう。正しくは自転軸までの距離 である
  • 遠心力をすべて鉛直上向きに数えてしまう。緯度がつくと遠心力は鉛直からずれ、その水平成分が糸を傾ける
  • 糸の傾きが最大になるのは赤道だと思ってしまう。赤道は遠心力こそ最大だが向きが真上なので、傾きは0になる