物理 / 円運動と万有引力

回転でつくる人工重力

★★★★ 難関等速円運動遠心力見かけの重さ

問題

宇宙空間に、半径 の円筒形のステーションがある。円筒の中心軸のまわりに一定の角速度 で回し、内側の壁を床として人が立てるようにしたい。地球の重力加速度の大きさを とする。

(1) 床に立った人が地上と同じ重さを感じるための と、1回転に要する時間を求めよ。

(2) そのとき、床(壁)の速さはいくらか。

(3) 身長 の人が床に立っている。頭の位置で感じる重力は、足もとの何 % か。

(4) この人が床の上を、回転の向きに速さ で歩く。感じる重さは何倍になるか。逆向きに歩いたときはどうか。

(5) 同じ人工重力を半径 の小さなステーションでつくったとすると、(3) の割合はどうなるか。

Rω床(内側の壁)
回転する円筒形ステーションの断面。内側の壁が床になる(人の大きさは誇張してある)
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感じる重さとは、床が押す力の大きさのことである。まずそれを式で書く。頭と足では軸からの距離が違うが、角速度は同じであることに注意する。歩くときは、外から見た速さがどう変わるかを考える。

解答・解説

方針

人工重力の正体は「回る床が人を内側へ押す力」である。その力が人を円運動させている。大きさは で、軸からの距離に比例する。だから頭と足で違いが出るし、床の上を歩いて速さが変わればまた違ってくる。すべて 、あるいは の1本から出る。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 人工重力といっても新しい力ではない。実在するのは、回る床が人を内側へ押す力(垂直抗力)だけである。それが人を円運動させている。

人の立場からは、自分が床に押しつけられているように感じる。地上で床に押されているのと区別がつかない。だから「床が押す力の大きさ = 感じる重さ」と読んでよい。

その大きさは で、軸からの距離 に比例する。ここが地上の重力と決定的に違う点で、頭と足で値が変わることも、ステーションを大きく作る理由も、すべてここから出る。

① 必要な角速度。 床が人を押す力が に等しければ、地上と同じ重さを感じる。この力が向心力なので

1回転に要する時間は

② 床の速さ。

時速に直すと 近い。ただし中の空気ごと一緒に回っているので、中にいる人に風は感じられない。

③ 頭と足の違い。 頭は軸から の位置にある。角速度は体のどこでも同じ だから

足もとの に対して

ほど軽い。ふつうは気づかない差である。

④ 歩くとどうなるか。 床の上を歩くと、外から見た速さが変わる。回転の向きに で歩けば、その人の速さは になる。

床の速さ 49歩き 1.0合わせて 50逆向きなら 48
床の上を歩くと、外から見た速さが 49 ± 1.0 に変わる。感じる重さは (v±u)²/R で決まる

逆向きなら

歩くだけで体重が 変わる。回転の向きに歩けば重く、逆向きなら軽い。

⑤ 小さいステーションだと。 半径 なら、頭は軸から である。

、つまり も軽い。

O足もと半径10mの頭0.8210.821
感じる重力は軸からの距離に比例する(横軸は床を1としたときの距離、縦軸は足もとを1とした重力)。半径245mなら頭は0.993で床とほとんど同じだが、半径10mでは0.82まで落ちる

足もとと頭でこれだけ違うと、立ち上がるだけで血液の移動のしかたが変わり、強い不快感につながる。人工重力のステーションを大きく作らねばならない理由がここにある。

まとめ 人工重力の正体は床が押す力だけ。 が軸からの距離に比例することから、頭と足の差も、歩く向きで重さが変わることも、大きく作る必要も、すべて同じ1つの式から説明できる。

発展 — 一歩先へ。 ④で見た「回転の向きに動くと重くなる」効果は、回る立場から見ると コリオリの力 と呼ばれる。半径方向に動くとき、つまりはしごを上り下りするときにも横向きの力として現れ、まっすぐ上ったつもりが横へ押される。

投げたボールも曲がる。回転式ステーションの生活が想像より厄介なのは、この力のためである。地球の大気で低気圧が渦を巻くのも、自転による同じコリオリの力の効果である。

(1) (2) (3) 約 (4) 順向き 約 倍、逆向き 約 倍 (5) 約 で、差がはるかに大きくなる

別解

回る立場(遠心力)で数えるルート。 ステーションと一緒に回る立場に立つと、人には外向きに遠心力 がはたらき、床からの垂直抗力とつり合って静止して見える。感じる重さとは、この遠心力そのものだと読める。

この立場に立つと ③ と ⑤ が一目で分かる。遠心力は に比例するので、軸に近いほど弱い。地上の重力が高さでほとんど変わらないのとは対照的で、天井へ登るほど軽くなり、軸に達すると完全な無重力になる。半径が小さいほど、身長ぶんの の変化の割合が大きくなるので、頭と足の差も大きくなる。

④ も、歩いているあいだは見かけの角速度が

に変わったと読めば、感じる重さは で一行である。 をそのまま足すのではなく、速さを足してから で割る、という手順がここでは大切になる。

ポイント

  • 人工重力の正体は床が押す力。大きさは で軸からの距離に比例する
  • 角速度は体のどこでも同じ。軸に近い頭ほど が小さく、感じる重力も小さい
  • 床の上を動くと外から見た速さが に変わり、感じる重さは になる

よくある間違い

  • 遠心力を「外向きにはたらく本当の力」と思ってしまう。静止した立場で実在するのは、床が押す内向きの力だけである
  • 頭のほうが速く動くから重い、と考えてしまう。同じ角速度で回るので、軸に近い頭はむしろ遅く、感じる重力も小さい
  • 歩く速さ をそのまま角速度に足してしまう。単位が合わない。足すのは速さで、角速度に直すなら である