物理 / 円運動と万有引力
回転する水の表面はどんな形か
問題
半径 、高さ の円筒形の容器に、水を深さ まで入れる。この容器を中心軸のまわりに一定の角速度 で回すと、じゅうぶん時間がたったのち、水は容器と一緒に回るようになる。重力加速度の大きさを とする。
なお、下に凸の放物面と、それに外接する円柱を考えると、放物面より上の部分の体積は円柱の体積のちょうど半分になることを用いてよい。
(1) 水面上で、回転軸から距離 の点における水面の傾き(水平とのなす角 の正接)を求めよ。
(2) 水面の断面がどんな曲線になるか、式で答えよ。
(3) のとき、壁ぎわの水位と中心の水位の差を求めよ。
(4) を大きくしていったとき、水が容器からあふれ始めるのはいくつのときか。
(5) さらに速くして、中心で容器の底が現れるのはいくつのときか。
ヒントを見る
液体は面に沿う力を出せない。だから、水面上の小片がまわりの水から受ける力は水面に垂直である。その1点を認めれば、あとは重力と遠心力の合力の向きだけで水面の傾きが決まる。傾きが に比例したら、高さは何に比例するかを考える。
解答・解説
方針
水面の上に小さな水のかたまりを1つ置き、それにはたらく力を見る。水と一緒に回る立場に立てば、その小片は静止していて、重力・遠心力・まわりの水から受ける力の3つがつり合う。まわりの水から受ける力は水面に垂直だから、水面の傾きが決まる。傾きが場所ごとに分かれば、それを積み上げて水面の形が出る。あふれる条件は、体積が変わらないことから求める。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 水面の形が分からないので、水面の上に小さな水のかたまりを1つ置いて、それにはたらく力を調べる。水と一緒に回る立場に立てば、その小片は静止しており、力はつり合っている。
決定的なのは「まわりの水から受ける力は水面に垂直」という点である。液体は面に沿う向きの力(ずれの力)を出せないからだ。垂直な力が重力と遠心力の合力とつり合うのだから、水面の傾きは合力の向きだけで決まる。
傾きが場所ごとに分かれば、あとはそれを高さの変化率と読んで積み上げればよい。
① 水面の傾き。 容器と一緒に回る立場で考える。水面上、軸から距離 にある質量 の小片には、重力 (下向き)、遠心力 (外向き)、水面に垂直な力 の3つがはたらいてつり合う。
が水面に垂直で、しかも残り2力の合力とつり合うのだから、重力と遠心力の合力も水面に垂直である。合力が鉛直となす角と、水面が水平となす角は等しいので
② 水面の形。 は水面の傾きそのものだから、水面の高さを として
右辺は に比例している。傾きが に比例する曲線は2次関数である。中心()の水位を高さの基準にとると
実際この式の傾きは で①と一致する。断面は放物線、それを軸のまわりに回した水面は 放物面 になる。
③ 高低差。 壁ぎわは だから
④ あふれる条件。 ここで水の量が変わらないことを使う。与えられた事実より、くぼんだぶん(放物面より上の体積)は高さ の円柱のちょうど半分である。したがって、回す前の水面を基準にして
では だから、中心の水位は 、壁ぎわの水位は になる。
壁ぎわがちょうど容器の高さ に達した。つまり で、あふれ始める。
⑤ 底が現れる条件。 中心が底(高さ0)に届くのは 、すなわち のときである。
ただし④より先にあふれてしまうので、水を足さないかぎりこの状態には届かない。
まとめ 「液面は見かけの重力に垂直」を1つ認めれば傾きの式が出て、積み上げると放物面になる。あとは体積が変わらないことから「半分下がり、半分上がる」を使えば、あふれる条件も底が出る条件も同じ物差しで測れる。
発展 — 一歩先へ。 放物面は平行に入った光を1点に集める。回転する液体金属(水銀)の表面をそのまま望遠鏡の主鏡に使う「液体鏡望遠鏡」は、この性質を利用したものである。ガラスを磨かずに理想的な放物面が得られるかわりに、真上しか向けられない。
焦点距離は と②を見比べて となる。ゆっくり回すほど焦点距離が長い。実際の液体鏡は数秒で1回転するくらいの速さで回している。
(1) (2) 放物線 (回すと放物面) (3) (4) (5)
別解
圧力から一気に出すルート。 回転する水の中の圧力は、軸から距離 、高さ の点で
と書ける。第2項が遠心力によって外側ほど押される効果、第3項が深いほど押される効果である。
水面は大気に接しているので、水面上ではどこでも圧力が に等しい。そこで とおくと
密度 が約分で消え、①②と同じ式が1行で出た。密度が消えることから、水面の形は液体の種類によらない ことも同時に分かる。水でも水銀でも、同じ角速度なら同じ放物面になる。
力の分解を追うルートが「なぜ傾くか」を見せるのに対し、こちらは「等圧面がどこか」を一気に答える。液面の形は等圧面である、という見方は流体を扱うときの基本になる。
ポイント
- 液面は見かけの重力に垂直。傾きは
- 傾きが に比例するので高さは に比例する。断面は放物線、面は放物面
- 高低差は 。水の量が変わらないので中心が 下がり、壁ぎわが 上がる
よくある間違い
- 水面が円錐面になると思ってしまう。傾きが一定なら円錐だが、ここでは傾きが に比例するので放物面になる
- 高低差 のぶんだけ壁ぎわが上がると数えてしまう。上がるのは で、残りは中心が下がる
- 静止した立場のまま遠心力を使ってしまう。遠心力は容器と一緒に回る立場でだけ現れる力である