物理 / 電磁誘導と交流
回転する棒に生じる起電力
問題
一様な磁束密度 の磁場の中に、長さ の導体棒を磁場に垂直な面内に置き、一端 O を中心として角速度 で回転させる。
(1) 中心から距離 の点の速さを求めよ。
(2) 棒の微小部分 に生じる起電力を書き、棒全体の起電力が となることを示せ。値も求めよ。
(3) 「棒の先端の速さ を使って とすればよい」という考えは誤りである。どこが違うか説明せよ。
(4) 棒の長さを 倍にすると起電力は何倍になるか。
ヒントを見る
棒の根元と先端では、速さが同じか。同じでないなら、公式をそのまま使えるか。
解答・解説
方針
棒の各点で速さが違うので、 をそのまま当てはめられない。微小部分に分け、それぞれの起電力を足し合わせる。 に比例する量の和なので、平均をとれば中点の速さになる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 という式は、棒のどの点も同じ速さ で動いているときの式である。
回転する棒では、根元は止まっていて先端がいちばん速い。速さが場所によって違うので、この式をそのままでは使えない。
こういうときは、速さが一定とみなせるくらい短い部分に分けて、それぞれの起電力を足す。これは積分の考え方そのものである。
① 各点の速さ。 中心から の点は、半径 の円を角速度 で回るので
② 起電力。 中心から の位置にある長さ の部分を考える。この部分は速さ で動いているので
棒全体では、これを から まで足し合わせる。
③ 誤りの理由。 先端の速さは である。これで計算すると
正しい答えの 倍になってしまう。
原因は、棒のすべての点が先端と同じ速さで動いていると仮定したことである。実際には根元は止まっている。
正しくは、速さが から まで一様に変化するので、その平均 を使う。
速さが に比例して増えるので、平均が中点の値になる。だから「中点の速さで代表させる」と覚えてもよい。
④ 長さを 倍にすると。 なので 倍である。 なら になる。
長さの効果が 重にはたらいている。 つは「棒が長い」ぶん、もう つは「先端が速くなる」ぶんである。
まとめ 速さが場所によって違うときは、細かく分けて足す。 に比例する量なら平均は中点の値になり、係数 が現れる。
発展 — 一歩先へ。 この装置はファラデーの円板(単極誘導発電機)の原型である。円板を磁場中で回転させ、中心と縁から電流を取り出すと直流の起電力が得られる。
交流発電機がコイルを回して正弦波を生むのに対し、こちらは向きの変わらない直流を生む。整流子がいらないので構造が単純だが、起電力が小さいので用途は限られる。
なお、この現象は「磁石と一緒に円板を回すとどうなるか」という有名な問いを生んだ。磁力線が磁石と一緒に回るのかどうか、という論争である。答えは実験で決着しており、磁石を回しても起電力は変わらない(磁力線は回らない)。式の上でも、起電力は導体の速度と だけで決まっていて、磁石の運動は入ってこない。
、 を足して 、棒の各点で速さが違うので一律に先端の速さを使えない(正しくは平均の速さ)、 倍
別解
掃く面積から求めるルート。 積分を使わずに、ファラデーの法則を面積の変化として使っても求められる。
棒が 回転すると、棒は半径 の円を 回掃く。その面積は
回転にかかる時間(周期)は
回転のあいだに棒が掃いた面積を貫く磁束の変化は だから
一致する。文字で書くと
で、係数 は と の比から出てくる。積分の と同じ が、こちらでは円の面積と円周の関係から現れる。
この方法の利点は、積分を知らなくても答えが出ることである。ただし「棒が掃いた面積」を回路の一部として数えてよい理由(起電力は磁束の変化率で決まる)を理解している必要がある。
ポイント
- 速さが場所によって違うので Bvl をそのまま使えない
- 微小部分に分けて足す → V=½Bωl²
- 速さが r に比例するので、平均は中点の速さ
- 長さの 2 乗に比例する(長い + 先端が速い の二重効果)
よくある間違い
- 先端の速さで Bvl として 2 倍にしてしまう
- 根元も動いていると考える(根元の速さは 0)
- 長さを 2 倍にすると 2 倍と考える(4 倍)