物理 / 電磁誘導と交流
モーターの逆起電力と出力
問題
起電力 の電源に、内部抵抗を含めた合計 の抵抗と直流モーターを直列につないだ。モーターが回転すると、その回転によって逆向きの起電力 (逆起電力)が生じる。モーターのコイルの抵抗は に含めてある。
(1) 回転を手で止めているとき()、流れる電流と消費される電力を求めよ。
(2) で回転しているときの電流、電源が供給する電力、抵抗で発生する熱、機械的な仕事率をそれぞれ求めよ。
(3) 機械的な仕事率が最大になるときの と、そのときの仕事率を求めよ。
(4) (2) と (3) で効率(機械的な仕事率÷電源の供給電力)を比べ、何がいえるか述べよ。
ヒントを見る
回転すると電流はどうなるか。電源が送りこんだエネルギーは、どこへ分かれていくか。
解答・解説
方針
逆起電力は電源と向かい合う起電力なので、回路を流れる電流は になる。電源の供給 が、熱 と機械的仕事 に分かれる。 の 次関数の最大を考える。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 モーターはただの抵抗ではない。回転すると、電磁誘導によって電流を妨げる向きの起電力が生じる。
これを回路の式に入れるには、モーターを「逆向きの電池」とみなせばよい。すると電流は
となる。回転が速いほど が大きくなり、電流は小さくなる。
そのうえで、エネルギーがどこへ分かれるかを追う。電源が送りこむ のうち、 が熱になり、残りの が機械的な仕事になる。
① 止めているとき。 なので
回転していないので機械的な仕事は である。 が全部熱になる。モーターを無理に止めると焼けるのは、このためである。
② 回転しているとき。
で収支が合っている。
③ 仕事率の最大。 を変数として
の 次関数で、上に凸である。平方完成すると
④ 効率の比較。
効率は に比例するという、すっきりした形になる。
② では 、③ では である。
出力が最大のとき、効率はちょうど半分しかない。供給した電力の半分が熱として捨てられている。
逆に、効率を上げたければ を に近づける(速く回す)ことになるが、そのとき電流が小さくなるので出力そのものは小さくなる。出力と効率は同時には追えない。
まとめ モーターを「逆向きの電池」として回路に入れると、電流・熱・仕事がすべて計算できる。出力最大は効率 という関係は、電池の最大電力の問題とまったく同じ構造である。
発展 — 一歩先へ。 ③ の結論は、直流回路の「最大電力の条件」と同じである。負荷抵抗を内部抵抗に等しくしたとき最大電力が取り出せ、そのとき効率が になる、というあの話である。
実際の電気自動車や電車では、効率のほうを優先して設計する。出力が最大の点で走り続けると、電池のエネルギーの半分が熱になってしまうからである。
そのかわり、発進のときは大電流が流れる。電車が駅を出るときに床下から大きな音がするのは、この大電流と、それを制御する装置の働きによるものである。回生ブレーキでは逆にモーターを発電機として使い、運動エネルギーを電気に戻している。
・、・・・、 で 、効率は と で、出力が最大のときは効率が悪い
別解
電流を変数にとるルート。 ③ を ではなく電流 の関数として考えても解ける。
なので
これも の 次関数である。微分して とおくと
③ と一致する。このとき ✓ である。
こちらの式 は意味が読みやすい。第 項が電源の供給、第 項が熱の損失で、その差が機械的仕事である。
を大きくすると供給は 次で増えるのに、損失は 次で増える。だからどこかで追い越されて、出力が減りはじめる。「 乗で効いてくる損失に 次の利得が負ける」という構造は、送電の損失(電流を小さくして送る理由)とまったく同じである。
同じ形の式が別の場面に現れたら、そこには同じ結論が待っている。
ポイント
- モーターは逆向きの電池。I=(E−E')/r
- 供給 EI = 熱 I²r + 機械的仕事 E'I
- 出力最大は E'=E/2 で P=E²/4r
- 効率は E'/E。出力最大のとき効率は 50 %
よくある間違い
- モーターを単なる抵抗として扱う(逆起電力を忘れる)
- 効率を上げれば出力も上がると考える(両立しない)
- 回転を止めたときに電流が小さくなると思う(最大になる)