物理 / 電磁誘導と交流

抵抗のないループでは磁束が保存される

最難関編自己誘導磁束超伝導

問題

自己インダクタンス の閉じたループがある。ループの電気抵抗は とみなせる(超伝導体でできているとする)。はじめ、このループには の電流が流れている。

ループ(抵抗 0、L = 0.20 H)I₀磁束外から磁石を近づける
抵抗が 0 の閉じたループ。はじめ 5.0 A の電流が流れている。

(1) はじめにループを貫いている磁束を求めよ。

(2) 抵抗が であることから、ループを貫く全磁束は変化しないことを示せ。

(3) 外から磁石を近づけ、ループを貫く外部からの磁束を(はじめの電流がつくる磁束と同じ向きに) 増やした。ループに流れる電流はいくらになるか。

(4) このとき、ループの磁気エネルギーはどう変化したか。エネルギーは保存しているか。

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抵抗が のとき、ループを一周したときの電圧の和はどうなるか。そこから磁束について何がいえるか。

解答・解説

方針

ループを一周したときの電圧の関係を書く。抵抗が なら なので、誘導起電力も でなければならない。起電力が ということは、磁束が変化していないということである。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 ふつうの回路では「電流が決まっている」と考えるが、抵抗が のループでは事情が違う。

一周したときの電圧の関係を書いてみる。抵抗による電圧降下は である。したがって誘導起電力も でなければならない。

起電力が とは、、つまり磁束が変化しないということである。

だから「電流が一定」ではなく「磁束が一定」が保たれる。外から磁束を押しこめば、電流のほうが変わって帳尻を合わせる。

① はじめの磁束。 自己インダクタンスの定義から

② 磁束が保存されること。 ループを一周する。抵抗による電圧降下は なので

ここで は、自分の電流がつくる磁束と外からの磁束の和である。

重要抵抗 のループでは、電流ではなく**貫く磁束の合計**が保存される

③ 磁石を近づけたあとの電流。 磁束の合計が変わらないことから

電流は半分に減る。外から押しこまれた磁束を打ち消すように、自分の電流を減らしたのである。これはレンツの法則そのものである。

1.0 Wbはじめ0.50 Wb0.50 Wb磁石を近づけたあと自分の電流がつくる磁束外から加わった磁束
ループを貫く磁束の内訳。合計は変わらないので、外から入った分だけ自分の分が減る(電流が減る)。

④ エネルギー。 磁気エネルギーは

減っている。

抵抗が なので、熱にはなっていない。ではどこへ行ったのか。答えは「磁石を動かした人」である。

ループは磁石を押し返す向きに力を及ぼす(レンツの法則)。それに逆らって磁石を近づけたので、ループは磁石を動かす側に仕事をした。減ったエネルギーはその仕事として外部へ出ていったのである。

エネルギーは全体としては保存している。ループの中だけを見れば減っている。

まとめ 抵抗 のループでは、電流ではなく磁束が保存量になる。「何が一定に保たれるか」を見抜くのが第一手である。

発展 — 一歩先へ。 磁束の保存は、超伝導体の重要な性質である。超伝導リングに一度電流を流すと、抵抗がないので何年でも流れ続ける。これを永久電流という。

MRI(磁気共鳴画像診断)の強力な磁石は、この永久電流で磁場をつくっている。電源を切っても磁場が消えないので、装置に近づくときは金属の持ち込みが厳しく制限される。

なお、抵抗が でなくても、変化がとても速ければ近似的に磁束は保存する。時定数 より短い時間では電流が変われないからである。プラズマの磁場閉じこめでも、この「磁束が凍りついている」という描像が使われる。

、抵抗 では電圧降下も なので 、電流は に減る、磁気エネルギーは から へ減り、差は磁石を動かす仕事として外部へ渡される

別解

時定数の極限として見るルート。 ループに小さな抵抗 があるとして、 の極限を考えても同じ結論になる。

抵抗のあるループに外から磁束を加えると、はじめは磁束を打ち消すように電流が変化するが、そのあと時定数 で元の状態へ緩和していく。誘導電流はやがて消えてしまう。

たとえば なら

で、 秒ほどかけて電流が元に戻る。

を小さくしていくとこの時間はどんどん長くなり、 では無限大になる。つまり「元に戻らない」。これが ② の磁束保存である。

この見方の利点は、現実の導体で何が起こるかが分かることである。銅のリングでも、磁石を素早く近づければ(時定数より短い時間なら)ほぼ磁束が保存され、大きな反発力が生じる。ゆっくり近づければ電流が緩和してしまい、力はほとんど生じない。

「速く動かすほど強く反発する」という日常の感覚が、時定数との比較として理解できる。

ポイント

  • 抵抗 0 では RI=0 なので誘導起電力も 0 → 磁束が変化しない
  • 保存量は電流ではなく「貫く磁束の合計」
  • 外から磁束を加えると、打ち消す向きに電流が変わる
  • 磁気エネルギーは減るが、その分は外部への仕事になっている

よくある間違い

  • 抵抗 0 だから電流が一定と考える(一定なのは磁束)
  • エネルギーが消えたと考える(外部への仕事になっている)
  • 外部磁束の向きを考えずに電流が増えるとする