物理 / 電場と電位
電場が 0 の点に置いた電荷は安定か
問題
軸上の原点に 、 に の点電荷を固定する。、 とする。
(1) 2 つの電荷の間で、電場が になる点の位置を求めよ。
(2) その点に負の点電荷 を置くと、静止したままでいられる。その理由を述べよ。
(3) を 軸に沿ってわずかにずらしたとき、はたらく力はもとの位置にもどす向きか、離れる向きか。理由とともに答えよ。
(4) こんどは 軸に垂直な向きにわずかにずらしたとき、力はどちら向きか。(3) と合わせて、この点が安定なつり合いといえるかどうかを述べよ。
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つり合いの位置からずらしたとき、近づいたほうの電荷からの力と、遠ざかったほうからの力は、どちらが強くなるか。垂直にずらした場合は、2 つの力の合力がどちらを向くかを考える。
解答・解説
方針
電場が になる点は、2 つの電荷からの寄与の大きさが等しい点である。安定かどうかは、そこから少しずらしたときに力がどちらを向くかで決まる。軸方向と垂直方向を分けて調べるのが要点である。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「電場が の点に置けば動かない」——これは正しい。しかし「動かない」と「安定」は別のことである。
鉛筆を立てたときも、力はつり合っている。しかし少し傾けば倒れる。つり合っているだけでは安定とは限らない。
だから調べるべきは、つり合いの点から少しずらしたときに、力が「もどす向き」か「離れる向き」かである。しかも方向によって答えが違いうるので、軸方向と垂直方向を分けて見る。
① 電場が になる点。 2 つの電荷はどちらも正なので、電場が打ち消し合うのは 2 つの間である。原点からの距離を とすると
両辺の平方根をとる(距離は正)。
② 静止する理由。 その点では電場が だから、置いた電荷が受ける力は である。正でも負でも、力を受けないので静止したままでいられる。
③ 軸方向にずらす。 を右へ少しずらす。すると に近づき、 から遠ざかる。
電場は距離の 乗に反比例するので、近づいた からの電場が強くなり、遠ざかった からの電場は弱くなる。合成の電場は から へ向かう向き、つまり左向きになる。
負電荷が受ける力は電場と逆向きだから、右向きである。ずらした向きにさらに押される。
同じことは左へずらしても起こる。したがって軸方向には不安定である。
④ 垂直方向にずらす。 こんどは を軸から少し上へずらす。
がつくる電場は「 から遠ざかる向き」なので、少し上向きの成分をもつ。 がつくる電場も同じく上向きの成分をもつ。どちらの寄与も上向き成分をもつので、合成の電場は上を向く。
負電荷が受ける力はその逆で、下向き、つまり軸へもどす向きである。垂直方向には安定である。
まとめると、垂直方向には安定だが軸方向には不安定である。ある向きにでも不安定なら、そのつり合いは安定とはいえない。実際には、ほんのわずかなずれで はどちらかの電荷に落ちこんでいく。
まとめ 電場が でも安定とは限らない。安定かどうかは「ずらしたときの力の向き」で判定し、しかもすべての向きについて調べる必要がある。
発展 — 一歩先へ。 実は、点電荷をいくつ固定してどう配置しても、静電気の力だけで荷電粒子を安定に閉じこめることはできない。これをアーンショーの定理という。
理由は、電場のもつ性質にある。ある向きに「もどす」ようにできると、必ず別の向きが「離れる」ようになってしまう。今回の問題は、その最も簡単な例である。
だから荷電粒子を閉じこめるには、静電場だけでは足りない。磁場を使う(サイクロトロンやイオントラップ)、時間とともに向きが変わる電場を使う(四重極イオントラップ)、といった工夫が必要になる。
、電場が なので力を受けない、軸方向にずらすと離れる向き(不安定)、垂直方向にはもどす向き(安定)。どちらか一方で不安定なので、全体としては安定でない
別解
電位の地形で見るルート。 力の向きを 1 つずつ調べるかわりに、電位を「地形の高さ」と考えると全体像がつかめる。
正電荷が負電荷を引きつける状況では、負電荷は電位の高いほうへ向かう。そこで電位の山と谷を考える。
軸上では、 と の両方に近づくほど電位が高い。だから電場が になる点は、軸上では電位が最も低い点(谷底)になっている。負電荷にとっては「山の頂上」に相当し、ずれれば転がり落ちる。
一方、軸から垂直に離れると、どちらの電荷からも遠ざかるので電位は下がる。垂直方向では、この点は電位の峰にあたる。負電荷にとっては谷底で、もどってくる。
つまりこの点は、ある向きには谷、別の向きには峰という「峠(鞍点)」になっている。峠にボールを置くと、峠道の方向には転がり落ちる。
電位の地形図としてとらえると、「静電場のつり合いはいつも峠であって、盆地にはならない」というアーンショーの定理の意味が直感的に分かる。
ポイント
- 電場が 0 になるのは距離の比が電荷の平方根の比になる点
- 力がつり合うことと、安定であることは別
- 軸方向は不安定、垂直方向は安定 = 全体としては不安定
- 静電場だけでは荷電粒子を閉じこめられない(アーンショーの定理)
よくある間違い
- 電場が 0 なら安定だと考える(ずらしたときの力を調べていない)
- 電場が 0 の点を 2 つの電荷の中点だと思う(電荷が違えば中点ではない)
- 軸方向だけを調べて結論を出す(安定というためにはすべての向きで確かめる必要がある)