物理 / 電場と電位

電場が 0 の点に置いた電荷は安定か

最難関編電場の重ね合わせつり合いの安定性静電場

問題

軸上の原点に の点電荷を固定する。 とする。

+Q+4QL = 0.30 m
2 つの正の点電荷を固定する。この間のどこかに、電場が 0 になる点がある。

(1) 2 つの電荷の間で、電場が になる点の位置を求めよ。

(2) その点に負の点電荷 を置くと、静止したままでいられる。その理由を述べよ。

(3) 軸に沿ってわずかにずらしたとき、はたらく力はもとの位置にもどす向きか、離れる向きか。理由とともに答えよ。

(4) こんどは 軸に垂直な向きにわずかにずらしたとき、力はどちら向きか。(3) と合わせて、この点が安定なつり合いといえるかどうかを述べよ。

ヒントを見る

つり合いの位置からずらしたとき、近づいたほうの電荷からの力と、遠ざかったほうからの力は、どちらが強くなるか。垂直にずらした場合は、2 つの力の合力がどちらを向くかを考える。

解答・解説

方針

電場が になる点は、2 つの電荷からの寄与の大きさが等しい点である。安定かどうかは、そこから少しずらしたときに力がどちらを向くかで決まる。軸方向と垂直方向を分けて調べるのが要点である。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「電場が の点に置けば動かない」——これは正しい。しかし「動かない」と「安定」は別のことである。

鉛筆を立てたときも、力はつり合っている。しかし少し傾けば倒れる。つり合っているだけでは安定とは限らない。

だから調べるべきは、つり合いの点から少しずらしたときに、力が「もどす向き」か「離れる向き」かである。しかも方向によって答えが違いうるので、軸方向と垂直方向を分けて見る。

① 電場が になる点。 2 つの電荷はどちらも正なので、電場が打ち消し合うのは 2 つの間である。原点からの距離を とすると

両辺の平方根をとる(距離は正)。

重要電場が になる位置は、距離の比が電荷の平方根の比になる点

② 静止する理由。 その点では電場が だから、置いた電荷が受ける力は である。正でも負でも、力を受けないので静止したままでいられる。

③ 軸方向にずらす。 を右へ少しずらす。すると に近づき、 から遠ざかる。

電場は距離の 乗に反比例するので、近づいた からの電場が強くなり、遠ざかった からの電場は弱くなる。合成の電場は から へ向かう向き、つまり左向きになる。

負電荷が受ける力は電場と逆向きだから、右向きである。ずらした向きにさらに押される。

同じことは左へずらしても起こる。したがって軸方向には不安定である。

+Q+4Q電場 0 の点離れる向きもどる向き
ずらしたときに受ける力。軸に沿ってずらすと離れる向き、垂直にずらすともどる向きになる。

④ 垂直方向にずらす。 こんどは を軸から少し上へずらす。

がつくる電場は「 から遠ざかる向き」なので、少し上向きの成分をもつ。 がつくる電場も同じく上向きの成分をもつ。どちらの寄与も上向き成分をもつので、合成の電場は上を向く。

負電荷が受ける力はその逆で、下向き、つまり軸へもどす向きである。垂直方向には安定である。

まとめると、垂直方向には安定だが軸方向には不安定である。ある向きにでも不安定なら、そのつり合いは安定とはいえない。実際には、ほんのわずかなずれで はどちらかの電荷に落ちこんでいく。

まとめ 電場が でも安定とは限らない。安定かどうかは「ずらしたときの力の向き」で判定し、しかもすべての向きについて調べる必要がある。

発展 — 一歩先へ。 実は、点電荷をいくつ固定してどう配置しても、静電気の力だけで荷電粒子を安定に閉じこめることはできない。これをアーンショーの定理という。

理由は、電場のもつ性質にある。ある向きに「もどす」ようにできると、必ず別の向きが「離れる」ようになってしまう。今回の問題は、その最も簡単な例である。

だから荷電粒子を閉じこめるには、静電場だけでは足りない。磁場を使う(サイクロトロンやイオントラップ)、時間とともに向きが変わる電場を使う(四重極イオントラップ)、といった工夫が必要になる。

、電場が なので力を受けない、軸方向にずらすと離れる向き(不安定)、垂直方向にはもどす向き(安定)。どちらか一方で不安定なので、全体としては安定でない

別解

電位の地形で見るルート。 力の向きを 1 つずつ調べるかわりに、電位を「地形の高さ」と考えると全体像がつかめる。

正電荷が負電荷を引きつける状況では、負電荷は電位の高いほうへ向かう。そこで電位の山と谷を考える。

軸上では、 の両方に近づくほど電位が高い。だから電場が になる点は、軸上では電位が最も低い点(谷底)になっている。負電荷にとっては「山の頂上」に相当し、ずれれば転がり落ちる。

一方、軸から垂直に離れると、どちらの電荷からも遠ざかるので電位は下がる。垂直方向では、この点は電位の峰にあたる。負電荷にとっては谷底で、もどってくる。

つまりこの点は、ある向きには谷、別の向きには峰という「峠(鞍点)」になっている。峠にボールを置くと、峠道の方向には転がり落ちる。

電位の地形図としてとらえると、「静電場のつり合いはいつも峠であって、盆地にはならない」というアーンショーの定理の意味が直感的に分かる。

ポイント

  • 電場が 0 になるのは距離の比が電荷の平方根の比になる点
  • 力がつり合うことと、安定であることは別
  • 軸方向は不安定、垂直方向は安定 = 全体としては不安定
  • 静電場だけでは荷電粒子を閉じこめられない(アーンショーの定理)

よくある間違い

  • 電場が 0 なら安定だと考える(ずらしたときの力を調べていない)
  • 電場が 0 の点を 2 つの電荷の中点だと思う(電荷が違えば中点ではない)
  • 軸方向だけを調べて結論を出す(安定というためにはすべての向きで確かめる必要がある)