物理 / 電場と電位
3 つの点電荷を組み立てる仕事
問題
1 辺 の正三角形の 3 つの頂点に、 の点電荷を 1 個ずつ置きたい。3 個とも、はじめは無限に遠いところにあり、静止しているものとする。
電荷を 1 個ずつゆっくり運んで所定の位置に固定していく。 とする。
(1) 1 個目、2 個目、3 個目を運ぶのに外から加える仕事を、それぞれ求めよ。
(2) 3 個を配置し終えるまでの仕事の合計を求めよ。
(3) 運ぶ順番を変えても合計は変わらない。その理由を述べよ。
(4) 3 個の固定をいっせいに外すと、電荷はたがいに反発して飛び去る。3 個とも質量が のとき、十分に離れたあとの速さを求めよ。
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何もない空間へ電荷を運ぶのに仕事は要るか。 個目を運ぶとき、そこにはすでに何がつくられているか。合計が順番によらないのは、力にどんな性質があるからか。
解答・解説
方針
個目は何もない空間へ運ぶので仕事は 。 個目以降は、すでに置かれた電荷がつくる電位に逆らって運ぶ。仕事は「電荷 × 運んだ先の電位」で計算できる。最後は、蓄えたエネルギーがすべて運動エネルギーに変わる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「3 個の電荷のエネルギー」と言われても、いきなり式は書けない。しかし「1 個ずつ運んでくる」と考えると、各段階でやることが決まる。
個目は何もない空間へ運ぶので、力を受けず仕事も要らない。 個目からは、すでにある電荷がつくる電位に逆らって運ぶ。
このとき使えるのが である。運ぶ先の電位さえ分かれば、経路を追う必要はない。
① 1 個ずつの仕事。
個目。まわりに何もないので、電場も である。
個目。 個目から距離 の点へ運ぶ。その点の電位は だから
個目。すでに 2 個あり、どちらからも距離 の点へ運ぶ。電位は重ね合わせで になる。
② 合計。
文字で書くと である。これは正三角形の 3 辺それぞれについて を足したものになっている。
③ 順番によらない理由。 ② の結果を「辺ごとの和」として読み直すと、答えが順番によらないことが見える。3 本の辺のそれぞれが を出しており、どの順で運んでも、最後に組み上がる形は同じだからである。
もっと根本的には、電気の力が保存力であることによる。電荷を運ぶ仕事は途中の経路によらず、始点と終点の電位だけで決まる。だから運ぶ順序という「経路の選び方」が結果に影響しない。
もし順番によって合計が変わるとしたら、同じ配置をつくるのに安上がりな手順が存在することになり、その差を使って何度でもエネルギーを取り出せてしまう。エネルギー保存に反する。
④ 飛び去るときの速さ。 固定を外すと、蓄えられていた がすべて運動エネルギーに変わる。
対称な配置なので、3 個の速さは等しく、それぞれ中心から外向きに飛ぶ。
まとめ 静電エネルギーは「組み立てるのに要した仕事」である。 個ずつ運ぶ手順で考えると、 だけで計算できる。
発展 — 一歩先へ。 ② の は「 本の辺の寄与の和」だった。一般に 個の電荷なら、すべての組(ペア)について を足せばよい。組の数は である。
この見方を進めると、原子核の中の陽子どうしの反発エネルギーが計算できる。陽子が増えるほどペアの数が急に増える(おおよそ に比例する)ので、重い原子核ほど電気的な反発が効いてくる。ウランのような重い核が分裂しやすいのは、この効き方が原因の一つである。
、、、合計 、順番によらないのは電気の力が保存力だから、速さは約
別解
辺ごとに分けて数えるルート。 順に運ぶ手順を追わずに、最初から「ペアごとのエネルギー」として数える方法がある。
2 個の点電荷 が距離 にあるとき、その組がもつ静電エネルギーは
である。3 個ある場合、組は の 3 つで、正三角形ならどれも距離が 、電荷も同じだから
同じ答えが 1 行で出る。
この数え方の利点は、順番を考える必要がないことである。「組の数だけ足す」と決めておけば、電荷の個数が増えても数え落としが起きない。
ただし注意が 1 つある。ペアを二重に数えないことである。 と は同じ組で、 回だけ数える。「1 個ずつ運ぶ」手順で計算すると、この二重数えが自動的に避けられる。だから手順で考える方法と、組で数える方法は、たがいのよい検算になる。
ポイント
- 静電エネルギーは「無限遠から組み立てるのに要する仕事」
- W=qV で計算でき、電位は重ね合わせでよい
- 合計が順番によらないのは、電気の力が保存力だから
- ペアごとに kq1q2/r を足す数え方でも同じ(二重数えに注意)
よくある間違い
- 1 個目にも仕事が要ると考える(まわりに何もないので 0)
- 3 個目の電位を 1 個分にしてしまう(すでに 2 個あるので 2 倍)
- ペアを二重に数えて 2 倍にしてしまう