物理 / 電場と電位
2 層の誘電体 — 先に壊れるのはどちらか
問題
面積 の 2 枚の極板を間隔 で向かい合わせ、その間を厚さ ずつの 2 層で満たす。下の層は比誘電率 の誘電体、上の層は空気(比誘電率 )である。
真空の誘電率を とし、空気の絶縁破壊の電場を 、誘電体の絶縁破壊の電場を とする。
(1) この装置の電気容量を求めよ。
(2) 極板間に をかけたとき、各層にかかる電圧を求めよ。
(3) 各層の電場の強さを求め、その比が何で決まるかを述べよ。
(4) 電圧を上げていくと、どちらの層が先に絶縁破壊するか。またそのときの極板間の電圧を求めよ。
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2 層はどのようなつなぎ方に相当するか。直列で共通なのは電圧か、電荷か。壊れるかどうかを決めるのは、電圧そのものか、それとも別の量か。
解答・解説
方針
2 つの層は直列につないだ 2 個のコンデンサーとみなせる。直列では電荷が共通なので、電圧は容量の逆比に分かれる。電場は電圧を厚さで割れば出る。絶縁破壊は「電場」が限界を超えたときに起きるので、電圧が小さい層でも安心はできない。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「電圧が大きくかかる層のほうが危ない」と考えたくなるが、絶縁破壊を決めるのは電場であって電圧ではない。
2 つの層は直列のコンデンサーである。直列では電荷が共通で、電圧は容量の逆比に分かれる。誘電体を入れた層は容量が大きいので、電圧の分け前は少ない。
その結果、電場も層によって違う。どちらが危ないかは、この電場の比で決まる。
① 電気容量。 各層の容量は
直列だから
② 各層の電圧。 電荷は共通で
合計すると で、つじつまが合っている。容量の大きい誘電体の層のほうが、電圧の分け前が小さい。
③ 電場。 電場は電圧を厚さで割ればよい。
比は で、比誘電率の逆比になっている。
理由は、どちらの層も同じ電荷 を極板にもつからである。誘電体の中では分極が電場を打ち消すので、同じ電荷でも電場は に弱くなる。
④ 先に壊れる層。 電圧を上げると、各層の電場は同じ割合で大きくなる。空気の層のほうが電場が 倍強いので、先に限界に達する。
空気の電場が になるとき、空気の層の電圧は
このとき誘電体の層は の電場だから
参考までに、誘電体が壊れるのは のときで、そのとき全体の電圧は になる。空気の よりはるかに大きいので、やはり空気が先に壊れる。
まとめ 直列では電圧が容量の逆比、電場は比誘電率の逆比に分かれる。絶縁破壊を決めるのは電場なので、「電圧の分け前が少ない層」が安全とは限らない。
発展 — 一歩先へ。 ここで見たことは、実際の設計で重要な意味をもつ。高電圧の機器では、絶縁体の中にわずかな空気のすき間(ボイド)が残ることがある。
そのすき間は比誘電率が小さいので電場が集中し、しかも空気は絶縁破壊の電場が低い。だからそこだけで放電が始まり、少しずつ絶縁体を傷めていく。これが部分放電とよばれる劣化の原因である。
「一番弱いところが全体の耐圧を決める」という点で、鎖の強さが最も弱い輪で決まるのと同じ構造をしている。
、誘電体側 ・空気側 、電場は と で比は比誘電率の逆比、空気が先に壊れて全体の電圧は
別解
電気力線の本数(電束密度)で見るルート。 電圧の計算をせずに、電場の比だけをすぐに出す方法がある。
極板の電荷は共通なので、極板から出る電気力線の本数はどの層でも同じである。この「単位面積あたりの本数」にあたる量を とすると
の関係がある。 が層によらず一定だから
これで ③ の答えが 1 行で出る。あとは厚さを掛けて電圧に直せばよい。
合計が だから と である。
容量を計算せずに済むのが利点で、層が 3 つ以上に増えても同じように扱える。「共通なのは何か」を見抜くと、直列の問題はいつも短くなる。
ポイント
- 2 層は直列のコンデンサー。共通なのは電荷
- 電圧は容量の逆比、電場は比誘電率の逆比に分かれる
- 絶縁破壊を決めるのは電圧でなく電場
- 電場が集中する空気の層が先に壊れる(全体の耐圧を決める)
よくある間違い
- 2 層を並列と考えて容量を足してしまう(重ねてあるので直列)
- 電圧が大きい層が先に壊れると決めつける(厚さで割った電場で比べる)
- 誘電体を入れると電場が強くなると思う(同じ電荷なら弱くなる)