数学B / 漸化式と数学的帰納法
隣にしか動かせないハノイの塔
問題
3本の杭 A, B, C がこの順に一列に並び、杭 A に大きさの異なる 枚の円盤が大きい順に積まれている。円盤は1回に1枚だけ動かせ、隣り合う杭にしか移動できず(A↔B、B↔C のみ)、小さい円盤の上に大きい円盤を置くことはできない。 枚すべてを杭 A から杭 C へ移すのに必要な最小の手数を とする。
(1) ()が成り立つことを示せ。
(2) を求めよ。
ヒントを見る
いちばん大きい円盤はいつ・どこへ動けるか — 隣接制限の下では C へ一足飛びに行けない。最大円盤が動く瞬間、残りの 枚はどこに退避していなければならないか。その退避と復帰は、それぞれ「小さいハノイの塔」1回分ではないか。
解答・解説
方針
最大の円盤の動きに注目して操作全体を分解する: 最大円盤は A→B→C と2回動くしかなく、その前後で上の n−1 枚が「A→C」「C→A」「A→C」と3回の完全な引っ越しをする — これで a_n=3a_{n−1}+2 が立つ。解くのは特性方程式型で 3ⁿ−1。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 操作列を正面から数えるのは不可能だ。最大の円盤の動きを軸に全体を分解するのが、漸化式を立てる定石になる。
隣接制限があるから、最大円盤は と一足飛びには動けず、 と最低2回動く。そして最大円盤が動く瞬間には、残り 枚がすべて「今いる杭でも行き先でもない杭」に退避していなければならない。
追いかけると、 枚は 、、 と3回の完全な引っ越しを強いられる。これが の正体だ。
① 下からの評価(必要性)。 どんな最短手順でも: 最大円盤が と動く直前、上の 枚はすべて杭 C にある(A は最大円盤の下、B は行き先だから空でなければならない)— ここまでに 枚の A→C の引っ越し(最小 手)が済んでいる。次に最大円盤が と動く直前、 枚はすべて杭 A に戻っている必要がある(C→A の引っ越し、最小 手)。最後に 枚を A→C へ( 手)。最大円盤自身の2手とあわせて
② 上からの評価(実現可能性)。 逆に、「 枚を A→C → 最大を A→B → 枚を C→A → 最大を B→C → 枚を A→C」という手順は制約をすべて守り、ちょうど 手。よって 。①②から
③ 解く((2))。 (A→B→C)。特性方程式 より : で は初項 、公比3の等比数列。
まとめ: 「最大の円盤の運命」で操作全体が3つの子問題+2手に割れる — 漸化式は数式でなく操作の構造から立てるもの。この最小手数 は、実は全円盤配置 通りをすべて1回ずつ通る手順になっている(だから1手も無駄にできない)、というおまけの美しさも持っている。
発展 — 一歩先へ。 個の配置を頂点、合法手を辺としたグラフを描くと、シェルピンスキーの三角形(自己相似のフラクタル)が現れることが知られている。隣接制限ハノイの最短手順は、その三角形の一辺を端から端までなぞる道にあたる。ちなみに通常ルール(どの杭へも動かせる)なら最小手数は — 制限が手数を 型から 型へ跳ね上げる。
(1) 最大の円盤を2回動かす分解(証明) (2)
別解
「全部の配置を通る」ことから直接数える(状態の視点)。 円盤 枚の置き方は、各円盤がどの杭にいるかで決まり(同じ杭の中では大きい順が強制される)、全部で 通り。1手動かすごとに配置は1つ変わる。
そこで次を帰納法で示す: 最短手順は、 通りの配置をすべてちょうど1回ずつ通る(だから手数は )。
枚で正しいとする。 枚の最短手順は本解の3幕構成で、第1幕(最大が A にいる間)は上の 枚が全 配置を1回ずつ通り、第2幕(最大が B)、第3幕(最大が C)も同様。最大円盤の位置が3幕を区別するから、全体で 配置をちょうど1回ずつ通る。手数は配置数より1少ない 。
漸化式を解く(本解)代わりに、「手数=通る配置の数 」という対応で答えが直接出た。1手も無駄にできない(同じ配置に二度戻れない)ことまで、おまけで証明されている。
ポイント
- 最大円盤は A→B→C の2回、その合間に 枚が3回引っ越す。
- 下からと上からの両評価で 。
- → 。
よくある間違い
- 隣接制限を忘れて、通常のハノイの塔()と混同する。
- 「この手順で 手で運べる」(上からの評価)だけを示し、それより少ない手数では不可能なこと(下からの評価)を落とす。「最小の手数」の証明は両側が要る。
- 特性方程式 の解 を使う場面で、 を等比としてしまう(正しくは )。