数学B / 統計的な推測

無相関でも独立とは限らない

最難関編独立共分散相関

問題

確率変数 の値をそれぞれ確率 でとるとし、 とする。

(1) は独立でないことを示せ。

(2) が成り立つことを示せ(すなわち の共分散は で、無相関である)。

(3) 一般に、 が独立ならば であることを示せ。

ヒントを見る

のとき は何になるか。独立の定義を、この1点で確かめてみよ。

(2) である。 の分布の対称性を見よ。

解答・解説

方針

相関係数(共分散)は「直線的な関係」しか見ていない。だから放物線の関係 で完全に結ばれていても、 の分布が原点対称なら共分散は になる。一方、 が決まれば は完全に決まるのだから、独立であるはずがない。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「無相関」と「独立」は同じことか。答えは No である。

共分散(相関係数)は、 の「直線的な関係」しか見ていない。だから、直線でない関係 — たとえば放物線 — で完全に結ばれていても、相関は になりうる。

そういう例を作ればよい。 は放物線の関係だ。 を原点対称に散らせば、 かつ となり、共分散が消える。

それでいて、 の値が決まれば の値は完全に決まってしまう。これほど強く結びついているのに相関は — 相関係数の限界が、ここにはっきり現れている。

定理 が独立ならば (逆は成り立たない)

① (1) 独立の定義を破る。 である。また だから、 となるのは のときに限り、

もし独立なら

でなければならない。ところが実際には「 ならば必ず 」だから

よって は独立ではない。

② (2) 共分散を計算する。 のとる値は に対応して である。

したがって

共分散は で、 は無相関である。

xyO(-1, 1)(1, 1)-111
(X, Y) がとる3点(各確率 1/3)。すべて放物線 y=x^2 の上にあり、X が決まれば Y は完全に決まる。それでも左右対称なので共分散は 0(無相関)。相関係数は直線的な関係しか見ていない

③ (3) 独立ならば無相関。 のとりうる値を のとりうる値を とする。独立だから 。よって

和を分解できて

つまり「独立 無相関」は正しい。本問が示したのは、その逆が成り立たないことである。

まとめ: 「無相関」は「直線的な関係がない」という意味にすぎない。「独立」(どんな意味でも無関係)とは別物である。相関係数が でも、 が完全に結びついていることがある。

発展 — 一歩先へ。 「相関が だから関係がない」と結論するのは、統計でいちばん多い誤りの1つである。散布図がU字や放物線を描いていれば、相関係数は に近くなる。だから「相関係数を計算する前に、必ず散布図を描け」と言われるのだ。

逆向きの主張は正しい。(3)で示したとおり「独立 無相関」だから、その対偶「相関がある 独立でない」も正しい。相関があれば必ず何らかの関係はある。成り立たないのは逆の推論だけだ。

なお、 の組が2次元正規分布に従う場合には「無相関 独立」が成り立つ。正規分布の世界では、直線的な関係がすべてなのである。これが正規分布の特別さの1つであり、統計の理論が正規分布を好む理由でもある。

(1) (2) なので共分散は (3) 独立性 を代入して和を分解する

別解

対称性だけで共分散が を見抜く(見通しのルート)。 は、計算しなくても見える。

の分布は原点対称( が同じ確率、 が中央)であり、 は奇関数だ。奇関数の期待値は、対称な分布のもとでは になる。正の側と負の側がぴったり打ち消し合うからである。

この見方を使えば、無相関だが独立でない例はいくらでも作れる。 の分布が原点対称でありさえすれば、 の偶関数 (たとえば )との共分散はつねに になる。実際

で、 が偶関数なら は奇関数だから第1項は 、そして だから第2項も である。

「偶関数と奇関数は打ち消し合う」— 積分や級数でおなじみのこの性質が、確率の世界でも同じ働きをしている。無相関とは、いわば「直交」のことなのだ。そう思えば、相関係数が直線的な関係しか捉えられない理由も腑に落ちる。直交していても、まったく無関係とは限らないのである。

ポイント

  • の1点で独立の定義が破れる()。
  • の分布が原点対称なので → 共分散
  • 独立 無相関は正しいが、逆は成り立たない。

よくある間違い

  • 「共分散が なら独立」と結論する。統計でもっとも多い誤解の1つである。逆(独立ならば共分散は )は正しいが、その逆は成り立たない。
  • (1)で「 で決まるから独立でない」とだけ書いて済ませる。直感としては正しいが、答案では独立の定義 を破る具体例を1つ挙げるのが確実である。
  • と計算する。期待値は関数の中に入れられない。 の値に確率を掛けて足す。