数学B / 統計的な推測
引いたカードの最大値の期待値
問題
から までの番号が1つずつ書かれた 枚のカードから、無作為に 枚()を同時に取り出す。取り出したカードの番号の最大値を とする。
(1) のとき を求めよ。
(2) を求めよ。
(3) を示せ。
(4) のときの を求めよ。
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最大値が 以下、とはどういうことか。取り出した 枚がどうなっていればよいか。
(3) が掛かった二項係数は、 を中に吸収できる。 を計算してみよ。
解答・解説
方針
最大値そのものは扱いにくいが、「最大値が 以下」なら簡単で、 枚が全部 以下ということ。累積確率の差でちょうど の確率が出る。期待値の計算では で を二項係数に吸収し、(ホッケースティックの和)で畳む。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 最大値の分布を直接考えるのは難しい。だが「最大値が 以下」なら簡単だ。それは「取り出した 枚が全部 以下」ということにほかならない。
この「以下」の確率(累積確率)から、ちょうど になる確率が差で求まる。最大値・最小値を扱うときの定石である。
期待値の計算では、 という二項係数の変形が効く。 を二項係数の中に吸収してしまうのだ。すると和は という「二項係数の縦の和」になり、パスカルの規則で一気に潰れる(ホッケースティックの和)。
① (1) 「以下」の確率。 となるのは、取り出した 枚がすべて 以下のときである。それは から までの 枚から 枚を選ぶことだから
② (2) ちょうど の確率。 累積確率の差をとる。
最後はパスカルの規則 を使った。意味を読めば「最大が ⇔ を1枚選び、残り 枚を から までから選ぶ」であり、直接数えても同じ式になる。
③ (3) 期待値を計算する。 定義どおり足す。
ここで である(両辺とも に等しい)。したがって
最後にホッケースティックの和を使った。あとは比を計算する。
よって
④ (4) 数値を入れる。 とすると
検算しておく。(全部取る)なら で、最大値は必ず — 正しい。 なら で、 枚だけ引くときの平均。これも正しい。
まとめ: 最大値は「以下」の確率から攻める。期待値は二項係数の変形で を吸収し、ホッケースティックの和で畳む。
発展 — 一歩先へ。 答えを と書き直してみる。すると「区間 を 等分したときの、 番目の位置」と読める。
つまり 枚のカードは、平均的に見て区間をほぼ均等に 等分する位置に落ちるのだ。 なら を 等分した3番目、つまり 。カードを引く前から、だいたいの位置が読めてしまう。
この「 個の点が区間を均等に分ける」という現象は、順序統計量の基本的な性質である。 番目に小さいカードの期待値も になり、やはり等分点にくる。無作為に選んだはずの点が、全体としては規則正しく並ぶ — 確率の面白さがここにある。
(1) (2) (3) とホッケースティックの和から (4)
別解
「以上」の確率を足し上げる(得意な人向け)。 以上 以下の整数値をとる確率変数には、期待値のもう1つの表し方がある。
理由は簡単だ。右辺を展開すると、各 について が の 回だけ現れる。だから合計は になる。「値そのものを、1ずつ数え上げる」という発想である。
これを使う。 だから
和の部分は とおけば で、 の項は だから、ホッケースティックの和により に等しい。よって
本解と一致した。
を経由しないぶん、こちらのほうが計算が短い。「値を直接足す」のではなく「しきい値を超える回数を数える」— この視点の切り替えは、期待値の計算で何度も役に立つ。
ポイント
- ⇔ 枚が全部 以下。累積確率が主役。
- で を吸収。
- ホッケースティックの和で 。
よくある間違い
- を「 が含まれる確率」 としてしまう。 が最大値であるためには、残り 枚が より小さくなければならない。含まれるだけでは足りない。
- ホッケースティックの和を知らずに、 を力ずくで展開しようとする。パスカルの規則を繰り返せば にまとまる。
- 答えの検算をしない。(全部取る)なら になるはずである。この一手で、係数の取り違えはその場で見つかる。