数学A / 整数の性質
素数を法とする二項展開(フロベニウスの夢)
問題
を素数とする。(1) のとき二項係数 は の倍数であることを示せ。
(2) すべての整数 について を示せ。
ヒントを見る
(1) を整数の等式 に。 素数、 なら と は互いに素。(2) 二項展開の中間項が(1)で消える。
解答・解説
方針
(1) 等式 を使い、 が素数で なら から が の倍数。(2) それを二項定理に入れて中間項を消す。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 (1) の急所は整数の等式 。右辺は見るからに の倍数だ。
左辺を見る。 は素数で だから、 は と互いに素。すると は の側を割れないので、 の側を割るしかない。
(2) はこの事実の収穫だ。 を二項定理で開くと、中間項()が で全部消え、両端の だけが残る。「和の 乗がバラバラに乗る」。素数だけで起こる現象である。
① が の倍数。 上の等式で右辺は の倍数だから、左辺 も の倍数。 は素数で より 、すなわち と は互いに素。よって は を割る(素数が積を割るとき、互いに素でない方を割る)。ゆえに で 。
② 二項展開の中間項が消える。 二項定理から 中間の和は各係数 が の倍数だから で 。よって
まとめ と から 。二項定理の中間項が消えて 。これはフェルマーの小定理の土台でもある。整数・二項定理・素数の融合。
発展 — 一歩先へ。 (2) を繰り返すと 。とくに を 個足した式に使えば 、フェルマーの小定理が一行で出る。この単元の帰納法による証明と根は同じ( ずつ足す)ながら、景色の違う道である。
(1) の右辺が の倍数で、 より は と互いに素だから が の倍数。(2) 二項定理の中間項が で消えて 。
別解
別解 — 円卓の回転で示す(得意な人向けの高い視点)。 を「円周上に等間隔に並んだ 個の席から 席を選ぶ場合の数」と読み替える。
選び方全体を、円の回転( 席ずつずらす)で仲間分けする。 つの選び方は 回の回転で元に戻るから、各グループの大きさは の約数。 は素数なので、大きさは か しかない。
大きさ のグループとは「どの回転でも変わらない選び方」。それは全席選ぶ()か何も選ばない()だけで、 ではあり得ない。
よってすべてのグループの大きさはちょうど 。総数 は大きさ のグループの寄せ集めだから、 の倍数である。
数式の割り算(本解)を使わず、「素数個の回転は途中で戻れない」という対称性だけで示せた。この“回転で仲間分け”は、円順列など数え上げの証明で繰り返し現れる強力な見方だ。
ポイント
- と から 。
- 二項定理の中間項が で消える。
- 。
よくある間違い
- (1) を「分子 に があるから」で済ませる(分母との約分で消えない理由=分母の因数はすべて 未満、が本体)。
- 素数の仮定を落とし、一般の でも が の倍数だと思い込む( は の倍数でない)。
- (2) で両端の項 まで消してしまう(消えるのは中間項だけ。残る が結論そのもの)。