数学III / 積分法の応用

速度と道のり

★ 基礎速度と道のり

問題

数直線上を動く点の速度が ()で表される。時刻 から までに動いた道のりを求めよ。

ヒントを見る

速度が区間全体で 以上なら、道のりは速度の積分そのもの。まず符号を確認してから積分する。

解答・解説

方針

速度が正なら、道のりは速度の定積分 なので絶対値は不要。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 速度を積分すると、位置の変化が出る。

なぜか。 速度は位置の微分だった()。その逆をたどるのが積分だ。

ただし、「変位」と「道のり」は違う。

  • 変位 (符号つき)
  • 道のり (絶対値)

この問題では、どちらだろうか。

まず、速度の符号を確認する。

ずっと正の向きに動いている。 折り返しがない。

速度が正なら、変位と道のりは一致する。 絶対値をつけても、何も変わらない。

「まず符号を確認、正なら絶対値は不要」 — 面積のときと、まったく同じ作法だ。

公式道のり ( なら絶対値不要)

でつねに 以上。

tvO2
v=t の t=0〜2 の面積が道のり=2

まとめ:道のりは「速度を時間で積分」。速度が正なら符号を気にせず 。位置の変化(変位)も同じ式だが、速度が負になる場合は道のりと変位がずれる(道のりは の積分)。

発展 — 一歩先へ。 「速度を積分すると距離」— この関係を、逆に読んでみよう。

微分と積分が、位置・速度・加速度を結ぶ階段になっている。

上りは微分、下りは積分。

この階段を下ることで、運動の未来が予測できる。

ニュートンの運動方程式は、加速度を与える。

力が分かれば、加速度が分かる。

加速度を積分すれば、速度が分かる。

速度を積分すれば、位置が分かる。

「力 → 加速度 → 速度 → 位置」

この 回の積分で、物体の未来の位置が完全に決まる。

これが、古典力学の全体像だ。

ただし、 つの積分定数()が必要になる。

  • : 初速度
  • : 初期位置

「力の法則」だけでは、未来は決まらない。 「今、どこに、どんな速さでいるか」という初期条件が要る。

同じ重力(同じ )でも、投げ上げるか、落とすかで、軌道は違う。

そして、これが「決定論」という思想を生んだ。

世紀の数学者ラプラスは、こう言った。

「もし、宇宙のすべての粒子の位置と速度を知る知性がいれば、その知性にとって未来は現在と同じく明らかである。」

ラプラスの悪魔と呼ばれる思考実験だ。

すべての初期条件が分かれば、積分によって未来が完全に計算できる — 微積分の力への、絶大な信頼である。

この夢は、 世紀に 度、打ち砕かれた。

① 量子力学: 位置と速度を、同時に正確には知りえない(不確定性原理)

② カオス理論: 初期条件のわずかな誤差が、指数関数的に拡大する(バタフライ効果)

だが、それでも。

ロケットは月に着き、探査機は 億 km 先の冥王星に到達した。

「加速度を 回積分すれば、位置が出る」

この単純な事実が、人類を宇宙へ送り出したのだ。

という、教科書の 行。

その先に、天体の軌道計算がある。

別解

積分せずに、 グラフの面積として求める。

速度のグラフを描いてみよう。

は、原点を通る傾き の直線だ。

この直線と 軸、 で囲まれる図形は — 直角三角形である。

  • 底辺: (時間)
  • 高さ: ( での速度)

道のりは 積分せずに答えが出た。

なぜ、 グラフの面積が道のりになるのか。

細かく刻んで考えよう。

ごく短い時間 のあいだ、速度はほぼ一定()とみなせる。

その間に進む距離は

これは、 グラフの細長い長方形の面積だ。

それを全部足し上げれば、総距離になる。

「速さ 時間 距離」という小学校の公式を、速度が変化する場合に拡張したもの — それが積分なのだ。

この見方は、実用的だ。

等加速度運動なら、 グラフは直線になる。 面積は台形や三角形なので、積分せずに計算できる。

例: 初速 、加速度 で動くとき、時間 での移動距離は?

グラフは、切片 、傾き の直線。

台形の面積(上底 、下底 、高さ )。

物理の公式が出てきた!

この有名な式は、 グラフの台形の面積にすぎない。

丸暗記していた公式が、図形の面積として"見える"ようになる。

そして、もう つ大事な区別。

もし速度が途中で負になったら?

例: ()。

では負(逆向き)、 では正。

変位(符号つき):

元の位置に戻っている。

道のり(絶対値):

実際には だけ動いている。

グラフで見れば、 軸の下の三角形と、上の三角形。 変位は打ち消し合い、道のりは足し合わされる。

「符号つきか、絶対値か」 — 問題文をよく読むこと。

ポイント

  • 道のり ( なら )。
  • 速度の積分が道のり。

よくある間違い

  • 速度の符号を確認せず、いつでも で道のりが出ると思い込む。 が負になる区間があれば、絶対値が要る
  • 「道のり」と「変位」を混同する。往復する運動では、変位が でも道のりは でない
  • 速度 を積分せず、加速度と混同して微分してしまう。位置 → 速度が微分、速度 → 位置が積分