数学III / 積分法の計算

原始関数が書けない定積分(区間の折り返し)

最難関編置換積分対称性対数関数

問題

定積分

を求めよ。

ヒントを見る

原始関数を探しても出てこない。区間の両端を入れ替える置換を試せ。

を加法定理で開き、 を足すと何が見えるか。

解答・解説

方針

原始関数は初等関数では書けない。定積分に固有の武器、すなわち「区間を自分自身に移す置換」 を試す。加法定理より となり、 の性質から2つを足すと定数 になる。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 まず原始関数を探しにいくと、必ず行き詰まる。 の不定積分は初等関数では書けないからだ。

そこで、定積分にしかない武器を使う。区間 を自分自身に移す置換、すなわち の折り返しである。区間が変わらないので、 が再び の式として現れる可能性がある。

実際に折り返すと、加法定理から 。これに を足すと と、もとの の逆数の 倍になる。

は積を和に変える。だから、もとの被積分関数と折り返した被積分関数を足すと、 という定数になってしまう。 が長方形の面積として求まる、という筋書きだ。

公式加法定理より
重要定積分では「区間を自分自身に移す置換」が使える:

① 折り返して、もう1つの式を作る。 とおくと で、 に対応する。上端と下端が入れ替わることで負号が吸収され

積分変数の名前は何でもよいので、 と書き直しておく。

② 中身を計算する。 加法定理より

これは区間内のすべての で成り立つ恒等式である。

③ 2本の式を足す。 もとの と①の を足すと

中カッコの中は、 の和の性質から が消えてしまうのだ。よって

θyOπ/4log2
y=log(1+tanθ)(青)と、折り返した y=log(1+tan(π/4-θ))(赤)。同じ θ での高さの和はつねに log2(破線)になる。だから2つの面積を足すと、たて log2・よこ π/4 の長方形になる

まとめ: 原始関数が求まらない定積分には、まず「区間を自分自身に移す置換」を試す。 の折り返しはその最も基本的な形で、被積分関数と折り返したものの和が簡単になれば勝ちである。

発展 — 一歩先へ。 上端の を他の値に変えると、この手はまったく効かなくなる。効いていたのは という特殊事情である。難関大の定積分では、こうした「仕込まれた特殊値」を見抜けるかどうかが勝負を分ける。区間の端・係数・角度に不自然にきれいな値が置いてあれば、それは偶然ではなく出題者が置いた道しるべだ。式を睨む前に、まず数値の意味を疑う習慣をつけたい。

別解

有理式の世界に移してから、分数変換で折り返す(高い視点)。 同じ対称性は、舞台を変えると別の顔で現れる。

とおくと より に対応するから

今度は区間 を自分自身に移す置換を探す。 がそれだ( のとき のとき )。計算すると

代入すると(上端と下端が入れ替わるので負号は吸収される)

右辺の第1項は 、第2項は そのものである。よって

本解の「角の折り返し 」が、こちらでは「分数変換 」という姿をしている。同じ1つの対称性が、三角の世界と有理式の世界で違う顔を見せているのだ。ついでに、有名な積分 も手に入る。

ポイント

  • 原始関数は書けない。定積分固有の技を使う。
  • の和が定数 になり、 が長方形の面積に。

よくある間違い

  • 原始関数を求めようとして時間を溶かす。 に初等的な原始関数は存在しない。「定積分の値だけが求まる」問題があることを知っておく。
  • 折り返しの置換で、 の負号と、上端・下端の入れ替えの両方を処理して符号を二重に反転させる。向きが入れ替わることで負号は吸収される、と手順で覚える。
  • を、特定の でだけ成り立つ式だと思う。これは区間内のすべての で成り立つ恒等式で、だからこそ積分できる。