数学III / 積分法の計算
不定積分(負の指数)
問題
不定積分 を求めよ。
ヒントを見る
を負の指数の累乗に書き直せば、いつもの累乗の積分規則がそのまま使える。
解答・解説
方針
と指数に直す。 は ではないので累乗の公式が使える。指数を 増やして 、その数 で割る。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 を見ると、「また対数か?」と思うかもしれない。
違う。 対数になるのは、 だけだ。
指数に直して確かめよう。
累乗の公式が使えるのは、 のとき。
今回は 。 ではないので、公式が使える。
答えにマイナスがつくのは、 で割ったからだ。
検算しよう。
「分数の形を見たら対数」ではない。
(指数 )だけが例外で、それ以外は累乗の公式。 この区別を、確実にしておこう。
① 指数に直す。 。()なので公式が使える。
② 公式で積分する。 指数を 増やして 、その数 で割る。
まとめ: は に直せば累乗の公式が使える( は例外の ではない)。積分結果 を微分すると に戻る。()だけが になる例外だ。
発展 — 一歩先へ。 「無限に広がるのに、面積は有限」— この不思議を、もう一歩進めてみよう。
トリチェリのラッパ(ガブリエルのホルン)という、有名な図形がある。
()を、 軸のまわりに 回転させてできる立体だ。
無限に長い、細くなっていくラッパの形をしている。
この立体の体積を計算しよう。
体積は — 有限だ!
無限に長い立体なのに、 リットルの水で満たせる。
次に、表面積を計算する。
表面積の公式は複雑だが、下から評価するだけで十分だ。
表面積は、無限大。
まとめると、こうなる。
ここに、有名な逆説が生まれる。
「このラッパは、 リットルのペンキで満たせる。」
「だが、内側の表面を塗るには、無限のペンキが要る。」
満たせるのに、塗れない?
どこがおかしいのか。
おかしくない。 数学的には、どちらも正しい。
逆説の正体は、「ペンキを塗る」という物理的なイメージにある。
現実のペンキには、厚みがある。 厚み のペンキを塗るなら、必要な量は「表面積 」で、確かに無限になる。
だが、ラッパの細い部分では、直径がペンキの厚みより小さくなってしまう。 そこはもう「塗る」ことができない。
一方、「満たす」というのは、厚みゼロの数学的な体積の話だ。
「無限の表面積」と「有限の体積」は、矛盾しない。 我々の直感が、 次元の物理的な感覚に縛られているだけである。
この図形を発見したトリチェリ(–)は、当時の数学者たちを震撼させた。
「無限は、有限に含まれうる」
この事実は、無限という概念への理解を、根本から書き換えた。
という、なんでもない公式。
その中に、 年前に人類を悩ませた、無限の逆説が眠っている。
別解
と の運命の違いを、「無限まで積分する」ことで見る。
どちらも で に近づく関数だ。 グラフの形も似ている。
だが、無限まで積分すると、正反対の結果になる。
まず、 を、 から まで積分する。
をどんどん大きくすると?
無限まで積分しても、面積は に収まる!
無限に広がる領域なのに、面積は有限。
次に、 で同じことをする。
を大きくすると?
発散する。 面積は無限大になってしまう。
同じような形の つの曲線。片方は面積が有限、もう片方は無限。
この差は、どこから来るのか。
「 への近づき方の速さ」だ。
で比べると、 に対し、。 倍の差だ。
すそが薄いほうが、面積を稼がない。
この境目が、ちょうど にある。
、つまり が、収束と発散を分ける境界線なのだ。
そして、この境界は、無限級数の話と完全に対応している。
積分の収束・発散と、級数の収束・発散が、同じ境界をもつ。
これは偶然ではない。 積分は「連続的な足し算」、級数は「離散的な足し算」で、本質的に同じものだからだ(積分判定法)。
という関数は、あらゆる意味で"境界線上"にいる。
- 積分公式: 累乗公式が使えない唯一の例外
- 原始関数: べき関数でなく、対数
- 広義積分: 収束と発散の境目
- 級数: 収束と発散の境目
この つの"特別扱い"は、すべて同じ根っこから生えている。
ポイント
- 、公式は で使える。
- だけが例外()。
よくある間違い
- の積分も対数だと考えて とする。対数になるのは だけ
- 指数を 増やしたあと、割る数を (もとの指数)にしてしまう。割るのは新しい指数
- 答えのマイナスを落として とする。微分すると になり、符号が合わない