数学III / 積分法の計算

不定積分(cos)

★ 基礎不定積分

問題

不定積分 を求めよ。

ヒントを見る

『微分すると になる関数』はどれか。 の微分の表を思い浮かべて逆にたどろう。

解答・解説

方針

の逆。 の積分は (こちらはマイナスなし)。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 前問と対にして覚えるべき積分だ。

「微分すると になる関数」は?

そのまま、 である。

マイナスは、つかない。

つを並べて、対比しよう。

なぜ、 の積分にだけマイナスがつくのか。

微分の側を見れば分かる。 を微分するとマイナスが出る()。その符号を、積分では打ち消す必要がある。

逆に、 を微分してもマイナスは出ない()。だから積分でも符号はそのまま。

「マイナスが出るのは、 を微分するときだけ」 — これが、すべての符号の源である。

公式

なので、逆に

まとめ: の積分は (マイナスなし)。 の積分()とセットで覚える。「」。マイナスがつくのは のほうだ。

発展 — 一歩先へ。 の積分には、「直交性」という驚くべき性質がある。

周期( から )にわたって、 つの三角関数の積を積分してみよう。

周波数が違う波どうしの積は、積分すると必ず になる。

ところが、同じ波どうしなら

ではない値が出る。

この性質を、直交性という。

なぜ「直交」なのか。

ベクトルの内積を思い出そう。

関数どうしの「内積」を、積分で定義する。

すると、異なる周波数の三角関数は、この内積が — つまり「直交している」ことになる。

関数を、無限次元空間のベクトルと見る。 その空間で、 は、互いに直交する基底ベクトルなのだ。

そして、ここからフーリエ級数が生まれる。

「どんな周期関数も、 の重ね合わせで書ける」

係数 は、どうやって求めるか。

直交性を使う。 両辺に を掛けて、 から まで積分する。

すると、直交性により、 の項だけが生き残り、他はすべて になる。

欲しい成分だけを、"取り出す"ことができる。

これは、ベクトルの成分を内積で取り出すのと、まったく同じ操作だ。

フーリエ解析は、現代技術の基盤である。

  • MP3: 音を周波数成分に分解し、聞こえない成分を捨てて圧縮
  • JPEG: 画像を周波数成分に分解し、細かい成分を捨てて圧縮
  • 医療のMRI: 信号を周波数分解して、体内の画像を再構成
  • 地震波の解析、音声認識、通信

すべて、この直交性が支えている。

そして、その直交性の証明は — のような、素朴な積分公式の積み重ねなのだ。

基本公式は、決して"基本"にとどまらない。

別解

面積として、 の積分を"見る"。

公式を使うだけでなく、定積分の値がグラフのどこを表しているのかを確かめよう。

から まで積分する。

答えは、ちょうど

これは何の面積か。

のグラフで、(高さ )から (高さ )まで、なめらかに下がる曲線の下の面積だ。

幅は 、高さは最大

もし三角形なら、面積は

もし長方形なら

実際の面積は — その中間だ。 曲線が、三角形の斜辺より上に膨らんでいるぶん、面積が大きくなっている。

ぴったり になるのが、美しい。

次に、 周期分を積分してみよう。

答えは !

なぜ になるのか。

のグラフは、 軸の上と下を、対称に行き来する。

  • : 正の面積
  • : 負の面積
  • : 正の面積

合計

上と下が、きれいに打ち消し合う。

これは「面積が 」ということではない。 実際の面積(絶対値の和)は だ。

定積分は、 軸より下を負として数える — この符号つきの面積を、符号つき面積という。

周期の積分が 」という事実には、深い意味がある。

交流電流(正弦波)の平均値は だ。 プラスとマイナスが打ち消し合うから。

だから、交流の「大きさ」を表すには、平均値では役に立たない。

そこで、 乗してから平均する(実効値)。

平均は 、その平方根が

家庭のコンセントが「 V」というのは、この実効値だ。 実際の電圧は V の間を振動している()。

という 行の公式が、電力の計算を支えている。

ポイント

  • (マイナスなし)。

よくある間違い

  • の積分にもマイナスをつけて とする。マイナスがつくのは の積分のほう
  • の微分()と取り違える。積分は微分の逆で、符号がたどり直される
  • 定積分が になったとき「面積が 」と解釈する。 軸の上下が打ち消し合っただけで、実際の面積は ではない