数学III / 関数と極限
三角関数の極限
問題
極限 を求めよ。
ヒントを見る
これは数IIIの基本極限そのもの — 値を覚えているかの確認問題。単位円で弧と弦の長さを比べる図を思い出すと、値にも納得がいく。
解答・解説
方針
これは有名な基本極限。 のとき は に近づく。この事実は、以降の三角関数の極限の土台になる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 を代入すると — また不定形だ。
だが今度は、因数分解も約分もできない。 は多項式ではないからだ。
そこで、この極限は「基本の道具」として与えられる。
丸暗記ではなく、意味を掴んでほしい。
が小さいとき、 ということだ。
実際に数を入れてみよう( は弧度法)。
と、ほとんど同じ値になっている。
単位円で言えば、小さい角では、弧の長さと、それに対する縦の高さがほぼ等しいということ。
この つの極限が、三角関数の微分のすべての土台になる。
これは公式として与えられている基本極限。
のとき と はほぼ同じ大きさになる(グラフでも と は原点付近でほぼ重なる)。
まとめ: は三角関数の極限の心臓部。 の形だが、値は 。角は必ず弧度法で測ること(度数法だと成り立たない)。この形に持ち込むのが多くの問題の目標になる。
発展 — 一歩先へ。 は、なぜ「基本極限」として特別扱いされるのか。
それは、三角関数の微分が、この 行から生まれるからだ。
を、定義に従って微分してみよう。
加法定理で展開する。
つの極限が出てきた。
代入すると
この有名な公式の根拠が、 だったのだ。
もしこの極限が でなかったら(たとえば度数法なら )、微分の公式はこうなる。
毎回、 という汚い係数がついてまわる。 積分でも、微分方程式でも、波の方程式でも、この係数が式を汚し続ける。
弧度法を使うと、それが消える。
「( が小さいとき)」という近似も、ここから来ている。
この近似は、物理学でとてつもなく重要だ。
振り子の運動方程式は、本来こうだ。
この方程式は、初等的には解けない。
だが、振れ角が小さいとき と近似すると
単振動の方程式になり、きれいに解ける。 振り子の周期 が出てくるのは、この近似のおかげである。
時計が正確に時を刻めるのも、 という近似が成り立つからだ。
たった 行の極限が、微分公式を生み、時計を動かしている。
別解
「なぜ になるのか」を、面積の比較で証明する。
公式として与えられているが、その根拠を知っておくと忘れない。
単位円(半径 )を考える。 中心 、 軸上に点 をとり、角 ()の位置に点 をとる。
つの図形の面積を比べる。
① 三角形
底辺 、高さは の 座標 。
② 扇形 (中心角 、半径 )
③ 三角形 ( での接線と、直線 の交点を とする)
底辺 、高さは 。
この つは、明らかに「小さい順に入れ子」になっている。
三角形 は扇形にすっぽり含まれ、扇形は三角形 に含まれる。
各辺を 倍する。
各辺を で割る。
逆数をとる(正の数なので、不等号は反転する)。
はさみうちの完成だ。
のとき、左端は
右端は、ずっと 。
両端が に向かうのだから、間に挟まれたものも に行くしかない。
証明できた ✓
そして、この証明には隠れた前提がある。
扇形の面積を と書いた — これは弧度法だから成り立つ式だ。
もし度数法( を「度」で測る)なら、どうなるか。
にならない!
「」という美しい式は、弧度法という単位を選んだご褒美なのだ。
弧度法が「自然な」角度の測り方と呼ばれる理由が、ここにある。 数学IIIで角度をラジアンで測るのは、こだわりでも意地悪でもなく、この 行を成り立たせるためである。
ポイント
- (弧度法)。
- 三角関数の極限はこの形に帰着させる。
よくある間違い
- を度数法(度)で考えてしまう。この極限が になるのは弧度法のときだけで、度数法では になる
- の と を約分して と書く。 は数ではなく関数の記号で、約分の対象ではない
- のような形でも、そのまま と答える。角と分母を揃える( に直す)必要がある