数学III / 関数と極限
関数の極限(0分の0)
問題
極限 を求めよ。
ヒントを見る
そのまま代入すると になってしまう。分子を因数分解すると、割り算の障害だった因数が消せる。
解答・解説
方針
を代入すると (不定形)。分子を因数分解して約分すると、代入できる形になる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 まず、素直に を代入してみる。
分母が 。計算できない。
だが、諦めるのは早い。
は不定形だ。 分子も分母も に近づくが、どちらがどう に近づくかで、比の行き先が変わる。
そして、 になったということは、大事な情報でもある。
分子と分母が、どちらも で になる — つまり両方が を因数にもつということだ。
その共通因数こそが、 を作っている犯人である。 約分して追い出せばいい。
「 は、 を生む共通因数を約分して解消する。」 これが関数の極限の定石だ。
① 因数分解する。 。
② 約分後に代入する。
まとめ: は「 を作っている共通因数 」を約分すれば解ける。 は「 が に近づく(= そのものではない)」ので、 で割ってよい。
発展 — 一歩先へ。 なぜ「」だと言い切って、約分してよいのか。極限の定義に立ち返ろう。
この式の意味は、こうだ。
「 を に近づけると、 は に近づく」
ここで、 ちょうどのときの値は、まったく問題にしていない。
近づく途中の話であって、到着点の話ではない。 だから の範囲で考えてよく、 だから約分できる。
この区別が、極限のいちばん大事なところである。
極端な例を作ってみよう。
だけ、値が に飛んでいる変な関数だ。
それでも
である。 を に近づけると、 は に近づく。 での値()は、極限には何の関係もない。
「近づく先」と「その点での値」は、別の概念なのだ。
この つが一致するとき、関数は連続という。
上の は、 で不連続。 極限()と値()が違うからだ。
そして、この問題の関数
は、 で"定義されていない" — グラフは直線 から、 の 点だけを抜いた形になる。そこに穴が空いている。
極限は なので、この穴を で埋めれば、連続な関数になる。
除去可能な不連続点と呼ばれる。
「極限は存在するのに、値が定義されていない(あるいは違う値)」 — 微分係数の定義が、まさにこの状況だった。
は で定義されない。 だが極限は存在する。その極限値に という名前をつけた — それが微分だ。
「穴の空いた点で、値を極限で定義する」
この一手が、微積分という巨大な体系の礎になっている。
別解
この式の正体は、「微分係数の定義」である。
式をじっと見てほしい。
とおくと、 だから
この形に、見覚えはないだろうか。
点 と を結ぶ直線の傾き — 平均変化率だ。
そして、 の極限をとると?
微分係数の定義そのもの!
の導関数は だから
本解と同じ答え ✓
この見方が教えてくれること。
の不定形は、じつは「微分の入り口」だった。
微分係数の定義
この式は、 のとき分子も に近づき、分母も に近づく — 必ず の形をしている。
つまり、微分とは「 を、うまく計算する技術」なのだ。
幾何的に見よう。
これは 点を結ぶ直線(割線)の傾き。
を に近づけると、 点が重なっていく。 割線は、接線に近づく。
ちょうどでは、 点が完全に重なって「 点を結ぶ直線」が定義できない( になる理由がこれだ)。
だが、近づける途中の傾きは、ちゃんと に近づいていく。
接点そのものでは測れないのに、極限としてなら測れる。
この逆説を乗り越えるために、 年前にニュートンとライプニッツが微分を作った。
目の前の は、その歴史の入り口に立っている。
ポイント
- は因数分解して約分。
- は に近づく( 自身ではない)ので約分可。
よくある間違い
- を や だと思って答える。 は不定形で、値は式ごとに変わる
- 約分したあと、 を代入し忘れて のまま答える。極限値は という数値
- 「 だから を代入してよい」と考え、約分せずに で詰まる。 は が に近づくだけで、 のまま。だから で約分できる