数学III / 関数と極限
無限等比級数
問題
無限等比級数 の和を求めよ。
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無限に足しても値が定まるのは、公比に条件があるとき。まず初項と公比を確認し、収束するなら和の公式へ。
解答・解説
方針
初項 、公比 の無限等比級数。 なので収束し、和は 。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 無限個の数を足す。答えは無限大になりそうに思える。
ところが、そうならない。
足す数が、どんどん小さくなるからだ。 次に足す量が 倍ずつ縮んでいく。
部分和を計算してみよう。
に近づいて、そこで止まりそうだ。
この直感は正しい。 の等比級数は、必ず有限の値に収束する。
「無限に足しても、有限に収まることがある」 — これは驚くべき事実だ。まずこの感覚を掴んでほしい。
初項 、公比 。 なので収束する。
まとめ:無限に足しても有限の値に落ち着くのが等比級数( のとき)。和は 。ここでは 。分母の計算に注意。
発展 — 一歩先へ。 「足す数が に近づけば、和は収束する」— そう思っていないだろうか。
残念ながら、これは間違いだ。
反例が、 つある。
調和級数と呼ばれる。
足す数 は、確かに に近づく。 それでも、この和は無限大に発散する。
信じがたいので、証明を見てほしい。
項を、こうグループ分けする。
各グループを、下から評価する。
どのグループも、 より大きい。
そんなグループが、無限に続く。
和は、無限大に発散する。
ただし、発散のスピードは絶望的に遅い。
和が を超えるには、約 項。 和が を超えるには、約 項 — 宇宙の全原子を使っても足りない。
それでも、無限に足せば、どんな大きな数も超えていく。
この違いは、どこから来るのか。
「 に近づく」だけでは足りない。「十分速く に近づく」ことが要る。
ちなみに、 なら収束する。
なぜか が出てくる。 オイラーが 年に解いた、バーゼル問題である。
は発散し、 は収束する。 その境目のぎりぎりに、無限の深淵が口を開けている。
別解
「自分自身」を使って、方程式を立てる。
公式を忘れても、この手が使える — 級数の"自己相似性"を突く別解である。
和を とおく。
ここで、右辺の 項目以降をよく見る。
全体を でくくると
カッコの中は、 そのものだ!
無限に続く級数だからこそ、 項ずらしても同じ形が現れる。 これを自己相似という。
だから、こう書ける。
についての、ただの 次方程式になった。
解く。
本解と同じ答え ✓
公式 の正体が、これで分かる。
一般に とおけば
公式は、この 次方程式を解いた結果にすぎなかった。
ただし — 大事な注意がある。
この計算は、「 が有限の値として存在する」ことを前提にしている。
存在しない場合に使うと、嘘の答えが出る。
やってみよう。 (公比 )で、同じ操作をする。
正の数を無限に足したのに、答えが ?
もちろん、間違いだ。 この級数は に発散し、 という有限の値は存在しない。存在しないものを とおいて計算したから、無意味な答えが出た。
「収束を確かめてから、計算する」 — この順序を逆にすると、数学は簡単に嘘をつく。
便利な技法ほど、使ってよい条件を確認する習慣が要る。
ポイント
- 無限等比級数の和 ()。
- なら和は存在しない(発散)。
よくある間違い
- 公式の分母を としてしまう。 で、公比は引く
- 初項を (第 項)と取り違える。この級数の初項は
- の確認をせずに公式を使う。公比が 以上なら和は発散し、公式は成り立たない