数学III / 微分法の応用

接線の方程式(三角関数)

★ 基礎接線

問題

曲線 上の原点 における接線の方程式を求めよ。

ヒントを見る

原点での傾きを微分係数で求める。実はこの接線、数IIIの基本極限( の行き先)と深くつながっている。

解答・解説

方針

傾きは での値、。原点を通り傾き の直線。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 手順は変わらない。傾きを出して、点を通す。

傾きは 。原点を通る。

答えは、驚くほど単純だ。

だが、この結果には見覚えがあるはずだ。

この基本極限は、「原点の近くで 」という意味だった。

今、それが「原点での接線が 」という形で、幾何的に確認された。

つは、同じ事実の言い換えである。

  • 極限の言葉:
  • 接線の言葉: 原点での接線は

計算と図形が、 点でつながっている。 その手応えを味わってほしい。

公式接線

① 傾きを求める。 なので

② 原点を通る直線を作る。

xyO
y=sin x と原点での接線 y=x

まとめ: の原点での傾きは 。接線は 。これは基本極限 ()と同じことを言っている。原点付近で がほぼ重なる。

発展 — 一歩先へ。 接線 は、 次近似だった。もっと精度を上げよう。

次の項を足すと、精度が跳ね上がる。

で比べてみよう(真の値は )。

  • 次近似 → 誤差
  • 次近似 → 誤差

誤差が 分の に減った。

さらに項を足すと

奇数次の項だけが現れ、符号が交互に変わる。

なぜ奇数次だけか。

は奇関数()だからだ。 偶数次の項()があると、対称性が壊れてしまう。

は偶関数なので、偶数次だけが現れる。

関数の対称性が、そのまま級数の形に刻まれている。

この級数は、実用上とてつもなく重要だ。

コンピュータは、 をどう計算しているのか。

三角比の表を持っているわけではない。 この級数を、必要な精度まで足し上げているのだ。

が小さければ、数項で十分な精度が出る。

が大きいときは? 周期性()を使って、まず の近くに引き寄せる。それから級数を使う。

「近似は、 の近くでいちばんよく効く。だから の近くに持ち込む。」

これが数値計算の基本戦略である。

そして、この級数からは、思わぬ結果も導ける。

両辺を で割ると

とすると、右辺は

基本極限が、級数から一瞬で出た。

はさみうちの証明が要らない。 級数という強力な武器を手にすると、極限は「見るだけ」で分かるようになる。

「接線 = 次近似」から始まった話が、無限級数を経て、また基本極限に戻ってきた。

数学は、こうして円環をなす。

別解

微分の公式を使わず、定義の極限から直接、傾きを出す。

微分係数の定義に、正面から戻ってみよう。

だから

この極限は、 である(三角関数の基本極限)。

傾きが 、原点を通るので、接線は

という公式を、 度も使っていない。

なぜ、これが意味をもつのか。

そもそも、 という公式は、 から導かれたものだった。

つまり、順序としてはこうだ。

この別解は、途中を飛ばして、いちばん根っこから直接、接線を出したことになる。

そして、いま「接線が 」ということの図形的な意味を確認しよう。

のグラフは、原点で の傾きをもつ。

単位円で考えると、こうだ。(弧度法)は弧の長さ縦の高さ

角が小さいとき、弧はほとんど直線に見え、その高さは弧の長さとほぼ同じ。

これが という接線の正体である。

数値で確かめよう。

に対して、誤差は

誤差は

誤差は、 に比例して小さくなる(実際 )。

なら — 上の誤差と一致する ✓

この近似 は、物理では絶大な威力を発揮する。

振り子、バネ、弦の振動、光の回折すべて「角度が小さい」という仮定のもとで、 に置き換えて、方程式を解いている。

この置き換えを許しているのが、原点での接線 なのだ。

接線 本が、物理学の計算を可能にしている。

ポイント

  • 接線の傾き
  • の原点での接線は

よくある間違い

  • と計算してしまう。 で、値が入れかわりやすい
  • 接線 を「」と読み違える。等しいのは原点付近での近似で、 が大きければ大きくずれる
  • を度数法で考えてしまう。度数法では傾きが になり、接線は にならない