数学III / 微分法の応用

不等式の証明(2段階)

★★★ 応用不等式

問題

のとき、不等式 が成り立つことを示せ。

ヒントを見る

差をとって微分すると、 つ手前の不等式( の比較)が現れる — 前段の結果を土台に積み上げる 段構えの証明。

解答・解説

方針

とおく。 を示すには、(増加)を言えばよい。ところが の符号もすぐには分からないので、 にもう一度「差の最小」の考えを使う( 段階)。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 不等式は「差をとって を示す」が基本だ。差を とおく。

ところが の符号がすぐには分からない。

じつは は、標準的な不等式 に帰着する。

回の微分で足りなければ、導関数にもう一段の議論を重ねる。これが多段階の発想だ。

重要 の符号が不明なら、 にも「差の最小」を使う( 段階の微分)

① 差を関数とおく。

を求める。

を示す。 これは「」()そのもの。(下の補足参照)なので 。よって で増加。

④ 最小値を確認する。 は増加なので最小は

よって 、すなわち

(補足: から。)

xyO(0,1)
y=eˣ は y=1+x+x²/2 の上にある(eˣ≥1+x+x²/2)

まとめ: の符号が直接分からないときは、 をさらに調べる( を使う、または既知の不等式に帰着)。ここでは が前段の不等式そのもので 。微分を 段重ねる発想がカギだ。

発展 — 一歩先へ。 この不等式は、最後に足す項の次数によって「成り立つ範囲」が変わる。

は、 が正でも負でも、すべての実数で成り立つ。ところが まで足した は、 でしか成り立たない。試しに を入れると、左辺 に対し右辺は で、不等号が逆になる。

さらに まで足すと、また全実数で成り立つ。 まで足すと、また だけになる。最後の項が奇数次なら全実数、偶数次なら に限る、という規則だ。

理由は、切り捨てた残りの符号にある。 では残りはつねに正だが、 では最後の項の偶奇で残りの符号が変わる。どこで打ち切るかが、不等式の効く範囲まで決めている。

g(x)=eˣ-(1+x+x²/2) について g'(x)=eˣ-1-x≥0(前問の結果)より g は増加、g(0)=0 で成立

別解

別解 — 差でなく比をとる(得意な人向けの視点)。 引き算のかわりに、 と多項式の「比」を作ると、 回の微分で符号がすっきり決まる。

とおき、 を考える。分母 は判別式 よりつねに正なので、 はどこでも定義できる。

商の微分をすると、分子は 。ここで だから 。よって

だから 。つまり は増加する。 だから、 では 、すなわち

を調べる本解では、 の符号にもう一手(第 次導関数か既知の不等式)が要る。比なら分子に が自然に現れ、 を経ずに一発で符号が決まる。到達する結論は本解と同じ答え。

ポイント

  • が不明なら をさらに調べる。
  • (既知)→ 増加 →

よくある間違い

  • の符号がすぐ分からないのに、確かめずに「 は増加」と決めつける。
  • の条件を落とし、この不等式が全実数で成り立つと思い込む( では成り立たない)。
  • という起点の確認を省き、「 だから 」と飛躍する(最小値が の確認が要る)。